第11章5節
銃を右手に持ち替え、刀を左手に逆手で握り直した。
銃を撃つのを見た者を逃がすのはまずい。それに、もし仲間を連れて戻ってこられても厄介だ。それだけが、頭をよぎった。
月明かりの下、二つの影が、黒い砂丘の間を逃げていくが、距離はまだあまり離れていなかった。
砂を蹴って、走り出した。
息を整えながら、足を送る。荷を置いてきた分、体は軽かった。疲労も、乾きも、空腹も、今は感じなかった。
さすがに息が上がる。喉の奥が、冷たい空気で焼けるように痛んだ。膝の関節が、鈍く軋んでいた。だが、無視した。
距離が、少しずつ縮まっていく。
小さな砂丘を越えたところで、一人の背中が、射程距離の中に入った。走りながら、右手の銃を構え直す。
「ピ」
足を緩めずに引き金を引いた。「シュッ」。赤い点が逸れ、男の肩をかすめただけだった。男は体勢を崩しかけたが、なお走り続けた。
もう一度。
「ピ」
「シュッ」。今度は、背中の中心を捉えた。男は前のめりに倒れ、そのまま滑るように止まった。
残るは、一人だった。まだ走っていた。距離を詰めながら、追った。若い背中が、月明かりの下で上下に揺れていた。
男が、走りながら振り返った。恐怖に歪んだ顔。逃げ切れないと悟ったのか、刀を苦し紛れに投げつけてきた。
反射的に、銃を持つ手が動いた。ハンドガードで受ける。硬い音がして、刀が地面に落ちた。腕に、鈍い衝撃が残った。
丸腰になった男は、それでも走ろうとしていた。足を緩めず、狙いを合わせた。
「ピ」
引き金を引いた。「シュッ」。胴に当たったが、男はよろめきながらも、なお足を動かした。
すぐに、二発目。
「ピ」
「シュッ」。今度は胸を捉え、男はそのまま、砂の上に崩れた。
足を止めた。息を整える。荒い呼吸の音が、しばらく自分の耳に残っていた。やがて、それも収まり、風の音だけが、あたりに戻ってきた。
右手を見た。怪我はなかった。ハンドガードの表面には、白い傷が一筋、新しく残っていた。
倒れている賊を、近い順に見て回る。周囲には、まだ灼けた肉と布の匂いが漂っていた。
背中を撃った男は、手足はまったく動かず、目だけが、こちらの動きを追っていた。抗う力は、もう残っていなかった。
銃を握り直しかけて、やめた。もう動けない相手に、これ以上バッテリーを使う理由はなかった。距離を詰め、刀の切っ先を、男の首に当てた。目が合った。何も言わず、一息に、刺した。
最初に斬った男は、すでに動かなくなっていた。首の傷から流れた血が、黒く固まりかけていた。
まだ息があるものが、ほかに二人いた。一人は、指先をわずかに動かし、落ちた得物へ這い寄ろうとしていた。もう一人も、浅い息の下で、体を起こそうともがいていた。この二人には間合いを詰めたくなかったので銃を向けた。
「ピ」「シュッ」。
「ピ」「シュッ」。
二度の音のあと、二人は動かなくなった。
血の跡は少なかった。銃で焼灼された傷口からは、あまり流れない。刀で斬った一人だけが、黒い砂を濃く染めていた。風が、血の匂いを少しずつ薄めていった。
残弾表示の数字を、確かめた。六。頭の中で数えていた残弾とずれはなかった。
刀の血を、男の上着で拭い、鞘に納めた。
銃のハンドガードについた傷に指先で触れた。浅い溝。刀身が当たった跡が、はっきりと残っている。冷たい金属の感触の中に、その一本だけが、わずかに引っかかった。銃を革鞄に戻した。充電開始の「ピピ」という音が鳴った。
星空の下、六つの体が、黒い砂の上に静かに横たわっていた。風の音以外、何も聞こえなかった。息を一つ吐いた。
体のどこにも、痛みらしい痛みはなかった。腕に残った鈍い衝撃も、走った後の息切れも、もう引いていたが、投げつけられた刀を弾いた感触は、まだ手のひらに残っていた。硬い、鈍い衝撃。
「油断した」
低く、独り言のように零れた。
私の刀は、張老の形見だから。投げるなんて、思いもよらなかった。でも、ああいう戦い方もあるんだ。
覚えておくべきことだった。次に同じ場面が来たとき、今度は驚かないだろう。
六人。刀で一人、銃で五人。あとに残ったのは、金属の傷一つだけ。
死体を、一つずつ検めた。懐から、銭の入った小さな袋がいくつか出てきた。交易品らしい布の包み、干し肉と干し果物の包み、満タンに近い水袋が四つ。
水袋の紐を解き、口をつけた。喉を鳴らして飲んだ。息を継がずに、何度も。水が顎を伝って落ちても、拭わなかった。
干し肉を掴み、口に押し込んだ。噛む間も惜しんで、飲み込んだ。二つ目、三つ目。指についた脂を、舌で舐め取った。干し杏も、二粒、三粒とまとめて口に入れた。
しばらくして、ようやく手が止まった。腹の中に、久しぶりの重みがあった。
交易品の重さと価値を測る。軽く、価値の高いものだけを選んだ。刀や斧は重過ぎるから持たなかった。穴の開いた革の上着も、そのままにした。
荷物の重さを、片手で確かめながら、頭の隅で、別のことを考えていた。
ブハラで、サムフルをはっきりと拒んだ言葉。あの傷ついた顔。「ローマ、どんな街だったか教えてくれよ」——最後に聞いた、あの声。詫びる機会は、もうなかった。
それでも、その重さを、賊の死体と一緒に、砂の上に置いていくことにした。ただ、生きて、帰る。歩き続けるために、そうする必要があった。
振り返れば、六つの体が、黒い砂の上に横たわっているはずだった。でも振り返らなかった。
荷を背負い直し、方角を確かめた。西。メルブの方角。賊が現れたのだから、もう人里までそう遠くないはずだ。
地平線が、わずかに白み始めていた。黒い砂の上に、色のない光が、薄く伸びていく。夜風が、まだ肌を撫でていた。
第十一章 了




