第6章5節
彼を師傅と呼ぶことにした。
陸師傅——阿青がそう呼んでいるから、私もそれに倣った。工房の奥の部屋で寝起きしている老工匠は、最初の一週間をほとんど眠って過ごした。目が覚めているときも、天井を見ているか、右手の指を一本一本ゆっくり動かして確かめているかだった。左手は、まだ思い通りにならない。
私の仕事は、工房の雑事全般だった。
朝は工房の床を掃き、石の粉を外に出す。阿青が仕事を始める前に道具を並べ、水を汲んでくる。全員の分の簡単な昼飯の支度をして、師傅の食事の世話。午後は材料の仕入れや問屋への使い走り、荷の受け取り。夕方は工房を片付けて翌日の準備をする。決まった仕事をこなせば、残りの時間は自由だった。
阿青は、工房に入ると口数が半分以下になった。玉を彫っているときは全く喋らない。細い道具を石に当て、ほとんど呼吸を止めているように見えながら、ゆっくりと削っていく。集中しているときの顔は、師傅と少し似ていた。
師傅はある日の昼過ぎ、工房の入り口に椅子を出して阿青の仕事を眺めていた。
何も言わなかった。ただ、見ていた。阿青の手元を見て、道具の角度を見て、石の削れ方を見ている。私は師傅に茶を持っていき、傍に置いた。師傅は気づいていたようだが、目は阿青の手元から離れなかった。
「……阿青の腕は」と私は小さな声で聞いた。
師傅は少し間を置いてから、「まあまあだ」と、少し滑舌が悪くなった声で言った。それだけで、また黙った。
褒めているのか、まだ足りないと言っているのか、どちらとも取れた。聞こえていたのか聞こえていないのか、阿青は削る手を止めなかった。
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冬が深くなるにつれ、気温が下がった。
ユルンカシュ川は、厳冬の間は水が少なくなる。採玉の最盛期は雪解けの増水が落ち着いた後だと聞いていた。今の季節に河原に出ても、良い石は拾いにくい——阿青はそう言った。それでも、一度見ておきたかった。
二月に入って、川の水位が下がったという話が出始めた頃、半日時間を作って河原へ向かった。
工房から歩いて一時間ほど。崑崙の稜線が、川の向こうに白く浮かんでいる。水辺に近づくと、土と水の匂いが鼻を突いた。砂漠の乾いた匂いとは全く違う、湿った、生きているような匂いだ。
川岸の石が、白く光っていた。
しゃがんで一つ手に取った。ずっしりとした重み。表面が川に磨かれて滑らかになっている。光を透かすと、内側に乳白色の濃淡がある。詐欺で掴まされたあの石とは、手触りが違った。
良い石を見分ける目利きは持っていない。山岳部で沢登りをしたことを、なぜか少し思い出した。重さ、表面の感触、光の通り方を確かめながら河原を歩く。石が崩れそうな場所、足場のいい場所——市場とは違う、素直な論理だ。
三時間かけて、七つの石を拾った。
翌日、阿青に見せると、七つのうち三つが使えるかもしれないと言われた。残りの四つは色か質か、どこかが足りない。三つのうち一つは工房で使い、二つを問屋に持ち込んで値をつけてもらった。二つ合わせて三十銭だった。
少ない。それはわかっていた。
前年の増水で運ばれ、秋にあらかた拾われた石の残りを、水が引いた河原で拾う——採れ高が控えめなのは当然だった。でも、待っているより、動いた方がましだ。
その後も、時間が取れる日は河原へ出た。繰り返すうちに、阿青が「この石はどこで拾った」と聞くようになった。
「川の曲がりの手前、岩が重なっているあたり」と答えると、阿青は「そこは知らなかった」と言った。
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ある昼過ぎ、工房に男が来た。
阿青が材料の整理をしていた。私は奥の部屋で翌日の仕入れを帳面に書いていた。男の声が聞こえてきた。低く、張りのある声だった。
「師傅に貸しがある。清算してもらいたい」
阿青が答えた。「師傅は今、体の具合が悪くて——」
「そっちの事情は知らん。ここに石があるだろう。現物で構わない」
私は帳面を置いて立ち上がった。
工房の入り口に出ると、四十代くらいの男が阿青の正面に立っていた。体格が良く、腰に短刀を差している。阿青は半歩下がっていた。
私は阿青の背後に立った。
何も言わなかった。刀も持っていない。ただ、男の顔を見た。
男が私に気づいた。視線が合った。年の頃、体格、立ち位置——それを素早く測るような目だった。そして、何かに気づいたように、ほんの少し動きが止まった。
私は何もしなかった。ただ、立っていた。
男が阿青に視線を戻した。「……まあ、いい。また来る」と言って、踵を返した。足音が通りに消えた。
阿青が振り返った。「今のは何ですか」
「何が」
「あの人が出ていった。何かしましたか」
「何もしてない」
阿青はしばらく私の顔を見ていた。何かを言いかけて、やめた。それから工房の奥へ戻っていった。
私も奥の部屋へ戻り、帳面の続きを書いた。
男はその後、来なかった。おそらく、手を出すほどの価値があるかどうかを測り直しているのだろう。それでいい。
楼蘭の市場で、商人が私の目を見て視線を逸らしたことを思い出した。あのとき自分の目つきが変わったことに初めて気づいた。砂漠で、廃墟で、夜の荒野で見てきたものが、目の中に残っている。言葉より先に、佇まいが語る——それがどういうことか、少しずつわかってきた気がした。
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二月の終わりから三月にかけて、工房の空気が少し変わった。
師傅が椅子から離れて、作業台の前に立つようになった。左手の動きはまだ戻りきっていない。でも、右手に道具を持って、削りかけの石に当ててみることはできる。石の角を少しだけ落として、また置く。それだけのことを、長い時間かけてやっていた。
阿青は黙って自分の仕事を続けていた。
私も黙って仕事をした。
三人が同じ工房の中で、それぞれの仕事をしている時間が、少しずつ長くなっていった。言葉は少ない。でも、静けさの質が、隊商宿で荷役をしていた頃の乾いた繋がりとは違ってきていた。何かが違う——それが何なのか、うまく言葉にならなかった。
巾着の中身を夜に数えると、詐欺で削れた穴はまだ塞がりきっていなかった。
喀什まで持つかどうか、まだ微妙なところだ。三月下旬には出る。そのためには雪が緩んで道が開く前に、準備を始める必要がある。
出発の日は決まっている。
それだけは、変えない。




