第5章5節
賊の襲撃から更に数日、隊商はゆっくりと西へ進んだ。
夜の見張り当番で、陳からの交代時によく他愛もない話をした。故郷の村の話、家族の話、于闐で商売を広げたいという夢。私は相槌を打ちながら、ただ聞いていた。この人は帰る場所がある。帰ることを疑っていない。そのことが、ひどく遠い場所の話のように感じられた。
于闐が近づくにつれ、隊商の人間たちの声も、少しずつ軽くなっていく。「もうすぐだ」「今年は山に雪が少ないな」そんな言葉が飛び交う。私は黙って歩きながら、胸の奥で何かが緩むのを感じた。でも、完全に解けることはなかった。ずっと、そうだったし、そうあるべきだ。
于闐の城門をくぐった瞬間、空気が変わった。
楼蘭や米蘭、精絶とはまるで違う。城壁の向こうに、白く雪を頂いた崑崙の峰々がくっきりと浮かび上がり、その麓に広がるオアシスの緑が目に染みるほど鮮やかだった。空気は湿り気を帯び、砂漠の乾いた冷たさではなく、土と草と水の匂いが濃く混じっている。
市場の通りに入ると、香辛料の強い匂い、玉を削る粉の微かな石の匂い、干し果物と新鮮な羊肉の脂の匂いが一気に鼻を突いた。楼蘭の市場はまだ砂漠の匂いが勝っていた。ここは違う。西の交易路がもたらす、もっと遠い土地の香りが重なっている。
人の姿も違っていた。漢人の商人、顔立ちの深い胡人、目鼻の彫りがはっきりした西方の者たちが混じり合い、言葉も多かった。聞き慣れた中原の響きに、速い胡語、時折響く異国の訛りが絡み合う。服装も様々で、厚手の胡服に毛皮を重ねた者、絹の縁取りが派手な袍を着た者、頭に布を巻いた者たちが肩をぶつけ合うように歩いている。精絶の小さな集落や米蘭の質素な通りとは比べものにならない賑わいだった。
孟頭領が荷の最終確認を終えると、商人たちがそれぞれの予定を話し始めた。
私は荷役の最後の仕事を終え、孟頭領の前に立った。
孟頭領は無言で右手を差し出してきた。私は少し驚いて、その手を握り返した。固く、荒れた掌だった。
陳がにこりと笑って近づいてきた。
「姉さん、また会ったらよろしくな。于闐で何か困ったことがあったら、俺の知り合いの店を教えてやるよ」
私は少し考えて、すぐに聞いた。
「どんな店? 玉を仕入れるのに良さそうなところとか、水袋を新しくするのにいい店とか……いくつか教えてくれる?」
陳は笑いながら指を折り、数軒の名前と場所を教えてくれた。私はそれを頭に刻み、素直に礼を言った。
隊商の人々がそれぞれの道へ散っていくのを見送った後、私は一人、城門の近くで立ち止まった。
腰の環首刀の柄にそっと手を当て、腰の革鞄の重みを確かめた。
頭の中に、ぼんやりとユーラシアの地図が浮かんだ。
まずは喀什。その後の道のりはまた調べないと。いずれにしろローマまでは、まだ途方もなく遠い道のりだ。それを思うと、胸の奥が少しだけ重くなった。
小さく息を吐いて、私は人の流れの中へゆっくりと歩き出した。
第5章 了




