第4章4節
翌朝、市場に出る前にもう一度考えた。
銃を素早く取り出せるようにする——頭ではわかっている。でも今の状態では、胡服の懐に押し込んであるだけだ。取り出すには一度両手を使う必要があって、いざというとき、そんな余裕はない。あの廃墟の夜が証明している。
腰の後ろ、外套で隠れる位置に、専用の鞄。左手一本で引き出せる角度に収まるもの。短刀も一緒に携行できれば、なお良い。充電器も銃と常に一緒でなければ意味がない——でもサイズと位置を合わせれば、同じ鞄に収められるはずだ。
形は頭の中にある。あとは、誰かに作ってもらうだけだ。
市場の外れを一回りして、革職人の工房を見つけたのは昼前だった。小さな土壁の建物で、布の暖簾を捲ると革と蝋の匂いが濃く漂っていた。五十代くらいの寡黙な男が作業台に向かって座っていて、手を止めずに目だけを上げた。
「見ない顔だな。旅人かい。何の用だ」
「注文をお願いしたいんですが」
私は深く息を吸い、説明を始めた。実物は見せられない。形と寸法を、言葉とジェスチャーで伝える。
「腰の後ろに固定できる、薄い革の鞄が欲しいんです。外套の下に隠れるくらい薄く——ここから左手を差し込んで」と自分の背中を指で示す。「手のひらより少し大きい道具を、片手で引き出せるように。道具の大きさはこのくらい、厚みはこれだけで、重さは軽い。鞄の底にもう一つ、平たい小箱が入る仕切りも欲しい。短刀を横に固定できるベルトも」
職人は眉を寄せた。
「実物を見せてもらえないか」
「それができなくて……形だけ、なんとか」
職人はしばらく黙って私を見た。困惑というより、どこか面倒そうな顔だった。
私は地面に膝をついて、土の上に指で図を描き始めた。鞄の外形、開口部の角度、脱落防止の革ベルトの位置。「ここを斜めにしてもらえると手が滑り込みやすい」「開口部はここを少し浅く」「抜くときに引っかからないように内側を滑らかに」——何度も書き直し、言い直し、ジェスチャーを交えながら繰り返した。職人が意図を掴みかけると別の部分で食い違いが出て、また最初から説明する。汗が背中を伝う頃、ようやく職人が小さく頷いた。
「わかった。変な注文だが、わかった」
「いくらかかりますか」
値段を聞いて少し迷ったが、頷いた。資金の想定より多い部分が消える。でも必要な出費だ。
「四日待て」
工房を出て、私はそのまま市場へ向かった。待ちの四日間、無駄にする気はない。水不足で出発できずに滞留している隊商の頭領や商人に酒を差し入れながら于闐までの道情報を集め、夜は空き地で素振りを続けた。
四日は思ったより早く過ぎた。
完成した革鞄を受け取ったのは昼過ぎだった。職人が無言で差し出したそれを、私は両手で受け取り、重さを確かめた。軽い。腰に革ベルトを回して固定し、外套を羽織ってみる。外からはわからない。左手を後ろへ回して開口部に指を差し込む——スッと入る。
「ありがとうございます」
職人はすでに次の作業に向かっていた。
旅籠に戻り、部屋の戸を閉めた。
外套を羽織り直し、革鞄を固定する。深呼吸を一つ。右手で刀を抜く。同時に左手が後ろへ回り、鞄へ——銃が指先に触れ、親指でベルトを外し、そのまま引き出す。構えを取る。
一回。
二回。
三回目で少し引っかかった。革がまだ硬く、開口部の端が当たる。でも、これは使い込めば解消するはずだ。素人が削ったり直したりするより、体で慣らす方が確実だし、余計な人目も引かない。
四回。五回。
引っかかりが少しずつ薄れていく。
十回目には、ほぼ一動作になった。
次に刀の素振り。腰を落とし、刃を水平に、斜めに、縦に。砂漠の消耗から回復してきた体が、刀の重さに少しずつ応え始めている。最後に短刀。左手で銃のイメージを保ちながら、右手で腰後ろの短刀を引き抜く。
汗が額に浮かんだ頃、動きを止めた。
その夜から、これが就寝前後のルーティンになった。外套を羽織って革鞄を固定する。右手で刀、左手で銃を引き出す。素振り。短刀。また引き出しの練習。繰り返すたびに革が少しずつ柔らかくなり、動きが滑らかになっていく。体が覚えるより先に、道具が体に馴染もうとしている気がした。
完璧じゃない。実戦でどうなるかは、やってみなければわからない。
でも、あの廃墟の夜の自分よりは、少しだけましになっている。それだけは、確かだと思う。




