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新訳 三河物語 〜 徳川家康と家臣団の戦国サバイバル 〜 with 逆行転生犬シロ  作者: 条文小説


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3-28 因果は必ず報い、譜代の忠義は不変である。

挿絵(By みてみん)


三河物語みかわものがたり』は、江戸時代初期の、旗本の大久保忠教による著作。戦国時代から江戸時代初期を知るための史料とされることもあるが、徳川史観による偏った記述により資料としての正確性は欠如している。出典:Wikipedia

 よう、三河の「真実ログ」の番人、大久保彦左衛門だ。


 ついに、俺が魂を削って書き綴ってきた『三河物語』も、これが正真正銘、最後の投稿リプレイだ。


 最後は、徳川サーバーの闇に蠢く「陰謀」と、恩を仇で返した男に下った「因果の鉄槌」、そして俺がこの膨大なログを書き残した真の理由について語ろう。


 世間では、子供から犬を打つわらべに至るまで、こう噂している。


 「大久保相模守(忠隣)をハメて失脚させたのは、本多佐渡守(正信)だ」とな。正直、俺はこの噂を信じたくなかった。なぜなら、佐渡は俺の兄(七郎右衛門)に、言葉では言い尽くせないほどの「重恩バフ」を受けていたからだ。


 あいつが若き日に主君を裏切って他国へ逃亡ログアウトした時、残された家族に食料や薪を送り続け、生活を支えたのは俺の兄貴だ。さらに家康公へ何度も「詫び事」を願い出て、鷹匠として徳川家へ復帰させ、ついには大名にまで引き上げた。


 大晦日の飯も正月三日の飯も、佐渡は必ず大久保の家で食うのが恒例だった。それほどの絆があったはずなのに、その恩を忘れて相模守を追い落としたというのか?もしそれが真実なら、奴の魂はもはや人間じゃねえ。


 昔は「因果は皿のふちを巡る」と言ったものだが、今の世の因果は巡るどころか、「正面から顔面に飛んでくる」。その証拠に、佐渡の最期はどうだ。相模守をハメた(と言われる)三年後、あいつは顔に凄まじい「デバフ」を出し、片方の顔が崩れ、奥歯が露出するほど無惨な姿で病死ロストした。


 さらに、その息子の本多上野介(正純)も、家康公の死後、まったく同じような手順で改易され、出羽の国へ流された。四方を柵で囲われ、堀まで掘られた檻(牢獄)に入れられてな。


 これこそが、「恩を仇で返した報い」への、天による強制デバッグだ。蛇やさぎ、燕といった獣でさえ、天の理に従って巣を作る。なのに、人間の皮を被りながら、魂は畜生以下という奴がいる。実に嘆かわしいことだ。


 さて、この記録を書き終えたのは、元和八年(1622年)六月。俺はもうすぐ七十歳だ。明日にはこの世から消えてもおかしくねえ。だから、このログを子供たちに託す。


 もし、他の譜代の連中がこれを見て、「大久保家だけを依怙贔屓して書いてるな」と思うなら、それは間違いだ。


 これは人に見せるためのエッセイじゃない。「俺たちが九代にわたって一度も主君を裏切らず、どれほどの熱量で戦ってきたか」を、我が子に、そして未来の子孫に伝えるための、プライベートな「コア・ファイル」なんだ。


 他家のことは知らん。それぞれの家で、自分たちの誇りを書き残せばいい。俺は俺の、大久保一族の「真実の歴史ログ」をここに封印する。


 俺の語ってきた『三河物語』、全記録ログがこれで終了した。俺は強情だと笑われ、報酬(地行)も貰えず、鰯を売るような境遇の仲間たちを嘆きながらも、最後までこの筆を置かなかった。


 それはな、「土地や金がなくても、この物語ログさえあれば、大久保の魂は死なない」と信じていたからだ。

 

 物語とは、ただの出来事の羅列じゃない。そこに生きた人間たちの、怒り、悲しみ、そして「絶対に譲れない誇り」の集積だ。


 俺の物語はここで終わるが、お前たちの物語はこれからだ。泰平の世でも、戦場のような熱い魂を持って、最高の「物語」を紡いでくれ。人は一代、名は末代。


 お前たちに東照権現のご加護があらんことを!


〜 完筆 〜




【三河物語 作:大久保忠教 国民文庫刊行会 1912年】




又々爰に不審成ことの有けるは、各々犬打 わらんべ迄申けるは、本多佐渡守が大久保相模守をさゝえ申たる由ならわしたり。左様の儀を人がしらでなもなき事申、佐渡は相模親の七郎右衛門に重恩を受たる者なれば、恩を忘れて何とて左様には可有哉。其は人の云なしなり。相模は子の主殿を初め我等どもこそしらね、定て其身の御科とがも深くこそ有つらん、とても佐渡はさゝゑ申事ゆめ〳〵有間敷とは、今に於て思ひ居れ共、町人民百姓迄も申故は、いかなれとは思へども、げにも左様にもこそありけるかと、ふしんにはあれども、然共しれず。佐渡は若き時分にはむごき物とは沙汰はしたれ共、年も寄ければ定て其心はなほり可申。佐渡守をば七郎右衛門が朝夕のはごくみて、女子のつゞけ塩噌薪(たきゞ)にいたる迄、つゞけてはごくみ、御敵を申て他国へかけおちしたる時も、女子をはごくみ、其故御詫事を申上て国へ帰して、先隼鷹匠にして、其後色々御とりなしを申上、四十石の御知行を申うけて出し、其後もはごくみて、年取にはかならず嘉例にして大晦日の飯と元三めしをば、七郎右衛門処にて佐渡は喰ひけり。関東へ御移うつり被成ても、其故には江戸にても其かれいをばしたる佐渡なれば、いかでか其おんをわすれんや。其故七郎右衛門果つる時も、佐渡守をよびて遺言にも、相模に不沙汰なき様にと頼入てはて候へば、其時も七郎右衛門にむかひて、何とてかぶさた可申、御心安あれとかた〴〵と申つるに、若其心を引ちがへてさゝへても有か。昔は因果は皿のはたをめぐると云けるが、今はめぐりづくなしにすぐに向へ飛ぶと云こと有。今においていかなればとは思へども、人にさへづらせよと申事のあれば、左様にも候哉、よき因果いんぐわはむくへどもおぼえなし。あしき因果のあしく報うは見えやすし。さも有か佐渡は三年もすごさずしてかほにたうがさを出かして、方 かほくづれて奥歯の見えければ其儘死、子にて有上野守は御改易かいえき被成て出羽之国ゆりへながされて、其後あきたへ流されて佐竹殿にあづけられて、四方に柵を付堀をほりて番を被付てゐたり。皆々申ならはすもげにはさも有か、相模守御かいえきも、大うす御大事の御仕置とあつて、京都へ召つかはされ其跡にて御改易かいえき被成、又上野守を御かいえきも、大うす御大事の御仕置とあつて、て召つかはされて、其跡にて御かいえき被成候へば、同如くに候故、さてはさゝゑ申たるか、困果いんぐわのむくいかと又世間せけんにて犬打わらんべ迄申なり。史記しきのことばにじやわだかまれどもしゆうけのかたにむかひ、鷺は太歳のかたをそむき巣をひらき、つばめはつちのえつちのとにすをくいはじめ、わうよきはみなとにむかひてかたたがへす。鹿は玉女にむかいてふし候なり。か様のけだ物だにぶんにしたがう心は有ぞとよ、おもて斗は人々にて、霊魂たましひはちくしやうに有物哉。

  元和八年六月 日 大久保彦左衛門 花押

子共にゆづる

若此書物を御普代久敷衆の御覧じて、我家之事斗を依怙に書たるとばし思召な。左様にはあらず。此の書置儀者人に見せんためにあらず。我は早七十に及に罷成候へば、今明日之儀も不存候へし故に、今にもむなしく罷成候はゞ、御主様を何程久敷御主様とも存知申間敷ければ、御主様にあふぎ奉御事、当将軍様迄御九代の御主様にて御座被成候儀を、我がせがれにしらせんため、又は我が先祖の御代代の内一度も御敵を不申候へて、度々の御ちうせつを申事をしらせんため、又は我等共のしんらうをしらせん為に書置て、門外不出と申おき候へば、誰人も御覧ぜは有間敷けれども、若落ちりて御覧ぜ候共、えこに我家の事斗書たると仰有間敷候。御普代久敷衆は、何れも我家々の御ちうせつのすぢめ、御普代久敷筋めを如此書立て、子供達へ御ゆづり可被成候。我等は如此、我が家の事を斗書立て子共にゆづり申なり。然る間他所之儀は書不申。以上。

〜参考文献〜

三河物語(国民文庫刊行会 大正元年)- Wikisource

https://share.google/jJTiQMFkLIRfryR6a


〜感謝御礼〜

 『三河物語』もこれにて現代語訳(新約)完結です。最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

条文小説 拝

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