第163話-1 スナイパーは狙っている
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
イスドラークの領主館の玄関。
スラム街の人間が大量に集まり、一方で、領主の側の軍も集まるのだった。
そして、それを玄関の奥にある屋敷から見ている人物が一人―…。
「本当に馬鹿だなぁ~。スラム街の人間どもは―…。だからこそ、汚らしい。だからこそ、私の綺麗で美しいほど芸術的な罠に引っかかるのだよ。」
バウネッターは言う。
自らを自画自賛して―…。
それは、まるで、自分が完璧な存在であるかのように―…。
【第163話 スナイパーは狙っている】
場所は、イスドラークの中にある、とある建物の屋上。
そこからは、ライフル銃を構える人物が一人いる。
イブラミーを暗殺した実行犯。
静かにスコープで見ながら、対象のある部屋を見るのだった。
(この世界で、こんなに離れた場所から攻撃することができるとは誰も思っていないだろ。サンバリア以外は―…。そして、この銃は、最高の武器だ。サンバリアには感謝しかない。さて―…、見ていくことにしましょうか。)
覗き込みながら、ターゲットの状況を知ろうとする。
(のんびりと、朝食を食べているというわけか。良いねぇ~、こっちも任務を終わらせてさっさと美味しいものを食べたいねぇ~。それに、こんな時間から攻撃してくるような存在なんて知らないだろうしなぁ~。警戒なんてあってないものだねぇ~。)
スナイパーはのんびりと心の中で言いながら、ターゲットの部屋の方へと見ていると、のんびりと朝食をとっていたのだ。
そんな情景を見せられて少しだけ嫉妬をしてしまうのだが、それでも、自分がこの仕事を成功させ、最高の気分で食事ができることは分かっているのだ。
それに、スナイパーが朝から攻撃してくるとは思っていないだろうし、彼らはイブラミーの暗殺現場にはいなかったから、スナイパーの存在を知っていないはずだという思い込みもあった。
そして、遠くから攻撃をするという武器は、サンバリア以外で生産されている物以外は、天成獣の宿っている武器以外にはないのである。
ゆえに、スナイパーによる攻撃を知らないとしても、おかしくはない。
だけど、覗かれている者達は実際に経験はないとしても、知識として、漫画やアニメ、小説という娯楽から得た知識がある以上、スナイパーの存在を知らないわけではない。
そう、スナイパーが覗いているターゲットは、瑠璃たちなのである。
瑠璃たちはゆっくりと朝食を食べており、これからのことを話し合っているのだ。
そういう場面なのだ。
スナイパーの方も誰を狙うのが効率的なのかを判断しながら、ラーグラだけを対象から外し、ゆっくりと観察をする。
まだ、この時、イスドラークの領主の館での衝突が起こる前のことである。
(ターゲットは決めた―…。お前だぁ~。)
嬉々とした表情で、スナイパーは最初の暗殺のターゲットを決めるのだった。
そして、ターゲットに向けて、銃弾を放つのだった。
パン!
という小さな音をさせながら―…。
少し時を戻す。
瑠璃たちはラーグラの見張りをしながらも、ラーグラに逃げられないようにするために、しっかりと「白の水晶」の中に閉じ込めながら、その範囲を一室にかけていたのだった。
それを解除して―…。
「ということで、朝食だわ。ここの店の朝食はあまり美味しくないわねぇ~。」
ミランが宿の朝食に対する不満を言う。
この宿では、スラム街の人間も働いていたのだが、領主の関係を優先したため、スラム街の人間を解雇してしまった。
その人物は、料理を趣味としているだけでなく、料理の方に才能があったのだが、宿のオーナーが数か月前に年齢を理由に変わってしまい、新オーナーが領主側に近しい人間であったため、スラム街の人間を解雇してしまったのだ。
そのせいで、料理の味が落ちたのは有名な話であるが、イスドラーク初心者のミランたちには分からないものである。
情報を得るという行為にも時間を消費するし、人が持っている情報というのは他者との間における共通性と相違性を持ち合わせており、かつ、有限の量しか持ち合わせていない以上、有益な情報を手に入れられるかは実際に相手との関係で、得られるものであるので、結局、情報の中身にはランダム性というものがどうしても発生する。
未知の部分が存在するということなのである。
そのために、有力な情報を集められるようなことができなくても、簡単に無能というレッテルを貼ることはできず、完全ランダム性ではないので、ある程度の時点で、無能か有能かはある程度の面で判断することができるだろう。
そうでない限り、人は未知ととも生きており、何も理解できない存在であるということを証明し、人類のやってきたことのすべてが否定される結果にしかならないし、そうではないことは歴史が証明している。
何もかも分かるわけではないし、ある物事を完璧に理解しているわけではなく、そこには未知がしっかりと残っているのだ。視点を変えることで、未知が未知ではなくなってくることだってある。
さて、話が逸れているのであるが、要は、ミランたちが有力な情報を集められないからと言って、それだけで無能だと、馬鹿にすることはできない、ということである。
そして、彼女達は、ラーグラを見張らないといけないという条件もある以上、これ以上、彼女達の状況を馬鹿にしたり、自分の方ができると解釈するのは間違いの可能性が高い。
話を戻すと、宿の料理の味に対する不満は、ここ数日で一気に溜まっていたのであった。
そうであったとしても、宿を変えるという選択肢はなかった。
というか、イスドラークの他の宿について、知らないのだから―…。
「お姉ちゃん、そういうのは毎日聞いているから、もう言わないで欲しいなぁ~。だけど、他の宿知ってるの?」
瑠璃からしたら、今の宿以外にもイスドラークにはあるだろうけど、そこに宿泊先を変更したとしても、料理の味が良いかは分からない。
そして、瑠璃もここの料理が美味しくないのは分かっている。
というか、こんな料理を出す宿なら、料理人がクビにされてもおかしくはないのだが―…。
宿なら料理というものは必要なものであり、料理が良ければ宿泊した者のリピートを発生させてもおかしくはないし、さらに空室もかなりあるので、宿が潰れたとしてもおかしくはないのに、潰れていないところに何かあるのではないだろうか、と瑠璃が少しだけ頭を動かしてもおかしくはない。
そっちの方に思考を動かしているのは、礼奈の方であろう。
「知らないわ。それに、私たちはある一族の関係者を見つけないといけないのに―…。さらに、最近、情勢が不穏で、探している間にもスラム街の方が領主に対して、反乱するのではないか、とか言っている話がちらほら聞こえてくるのよ。さっさと見つかれば良いのだけど―…。」
ミランからしたら、こんな不穏な情勢のイスドラークに長く留まりたいと思っているわけではないのだが、「人に創られし人」の一族の関係者を見つけられない以上、どうしてもイスドラークで足止めをくらってしまうのだ。
仕方ないことであるし、砂漠越えはそれだけかなりの危険性を有しており、ラナトールで自分達だけで砂漠越えをしようとまで、行きかけたところで李章のファインプレーによって護衛の仕事を手に入れることができたので、上手くいったのだけど、自分達では流石に越えられないだろうという実感をミランは抱いているのだ。
砂漠はそれだけ怖いところであるし、方向感覚もしっかりと持っていて、かつ、体力がなければ確実に無理だし、以上の能力を有していたとしても、そう簡単にできるものではないことは明らかなことだ。
そうであるからこそ、護衛の依頼を受けるのが良いのだろうか、とも考えるが、安全性を考えるなら、「人に創られし人」の一族の関係者にここで出会っておくのがベストであるのは確かだ。
彼らなら、砂漠越えのノウハウを持っているのは確かだし、カルフィーア村へと容易に入りやすくもなるだろう。
「う~ん、ミランさんと瑠璃でないと分からないとかなり難しいと思いますよ。それに、ラーグラをサンバリアへの案内に使うにしても、サンバリアに着いた途端に、こちらを裏切って、サンバリアの兵力で私たちの命を狙って来ることもあるから、数はそれなりにいた方が良いかもしれない。」
礼奈は口を出すのだが、途中で考え込んでしまう。
礼奈からすれば、いろんな可能性があるように見えるのだが、そのどれが自分達にとって良い結果になるのか、はっきりと決められずにいる。
そして、ミランの言っているある一族の関係者に会える可能性はかなり低いだろうし、ないと言ってもおかしくはない。
そんななか―…。
「う~ん、リースの方が美味しかったなぁ~。」
クローナは食べながら、今、自分達が泊っている宿とリースの王城での食事を比べてしまうのだった。ラナトールで泊まった宿でもここまで酷い味がでるようなことはなかった。
リースの王城と比べるのはかなり失礼なことであり、リースの王族が食事をする場である以上、腕前がしっかりとした料理人を雇っているだろうし、マズイ食事を出すことなどできやしない。そんなことをしてしまえば、雇った者および料理人のクビがとぶ可能性があるし、最悪の場合には物理的なことだってあり得る。
それに、食べ物の恨みは怖いというものであり、そこまでいかなくても、良くないというのは分かることであろう。
そして、リースの王城は、使用人含めての分を、この地域において最高級の料理人とされる人物とその弟子たちによって作られているのだから、マズイということはよっぽどのことがなければないし、美味しい料理であることに間違いはほぼないであろう。
また、ラナトールで瑠璃たちが泊まった宿でも出された料理は、リースの王城に比べたら劣るかもしれないが、庶民的な味で、決して飽きるようなことがないように工夫されていた。
そういう意味では、宿としてはきちんとした経営をおこなっているのかもしれないし、料理に自信がある者が作っていることが分かる。
だけど、イスドラークは家庭でもでてこないぐらいの料理なのだ。
現実世界では、まず加工食品を買ったとしてもこの味に当たることはないだろうというものだ。
(………やっぱり塩気というものが全然ありません。)
李章は、この味をそのように判断する。
塩は生活必需品であり、イスドラークでも岩塩などの産地があり、そこから得ているのだが、このオーナー。塩の購入をケチって、自分の利益を大量に確保しようとしているのだ。
宿である以上、しっかりとした料理を出し、かつ、快適な部屋を提供し、リピーターを作ることによって、経営を成り立たせないといけないのに、その観念が今のオーナーにはなく、あるのは如何にして自分がタダに近い経費で自分の儲けを最大限にするのか、そういうことに頭を割くことができていないのだ。
悲しいことだが、自分の経営している会社の売り上げはどのようにして手に入れられるのか、という要素をしっかりと考えることが全くできておらず、結局、目先の利益ばかりに拘り、必要な経費というものをしっかりと消費しようとしなかったからだ。
これを今のオーナーに指摘したとしても理解されることはないであろう。
なぜなら、自分の利益が増えていることと、自分の儲けしか見えておらず、そして、自分のおこなっていることは正しく、一片の間違いもないと完全に思い込んでしまっているのだ。
どんな素晴らしいことを言ったり、やってくれる人がいたとしても、ちゃんと聞いてくれたり、評価してくれたりしてくれる人がいなければ、全くの無意味な結果になるだろうし、やりがいというものが奪われただけの結果になるだろう。
これは、頑張った行動に対する結果に対する性質において関わってくる以上、仕方のない一面もあるのだが、やっぱり、頑張った人が報われる世の中になって欲しいし、自分のことだけしか考えず、他者の良いところを評価しない人間ばかりの世の中では、社会の良き方向へと向かうこともないだろう。その逆になるだけでしかない。
要は、ちゃんとしっかりと頑張っている人が報われる世の中を望むし、その方が良い結果になるというだけなのだ。
一方で、ラーグラもこの料理がマズイのは分かるが、あの時代を思えば、少しだけ自分は恵まれているという風に思えるぐらいには、この宿の料理には我慢できるというものである。
(スラム街に比べれば―…。)
そう思っていると―…。
「皆さん、伏せてください!!!」
李章が大きな声を出す。
あまり李章は大声を出すような感じではないが、それでも、何かよっぽどのことがあり、必要性があれば、大きな声を出すことに躊躇いはない。
そして、全員が伏せると同時に、瑠璃たちの泊っている部屋から外の景色が見える窓が―…。
パリン、ガッシャーン。
このような音がするのだった。
その音がした場所を伏せている状態であったとしても、すると―…。
窓が割れているのだった。
第163話-2 スナイパーは狙っている に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていきたいと思います。
では―…。




