第161話-7 狙い通りにならないのが世の常
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
「ごめんって―…。あのままだと人と話すのが苦手なアイラが、こちらの秘密に関して、口走ってしまう可能性があったから、俺が、代わりに言ってやったんだろ。それに、あの商人たち―…、俺たちが天成獣の宿っている武器を扱うことができると見破っていたと思うよ。それに、強かに商売をしてきたから、会話が苦手な奴は簡単に情報をもらしてしまう。気づかないうちになぁ~。」
エンゲルには分かっていた。
ミグリアとグロリーガは、自分達がどういう存在であるのかをすべてではないにしても、彼らのできる範囲で見破ってくるだろうということを―…。
そして、運良く、過剰な介入がなかったからこそ、エンゲルとしては救われたという気分になるのである。
「人に創られし人」の一族ということが周囲に知られるのは危険なことでしかないし、自分達があまりこの大陸ではこころよく思われているかは分からないが、あまり良い噂を聞かない。
サンバリア側の息のかかった者達が、そのような噂を長年に渡って流しているのだろうと、エンゲルは思っているが、これが正しいかは証拠もない以上、分からないというのが現状である。
そして、エンゲルからしたら、アイラの失言を回避し、会話が苦手なアイラに話すという労力を最小限にしたのだから、感謝の一つがあってもおかしくはないが、そんなことは言われないだろうなぁ~、と思っているから、感謝されなくても気にする気持ちはない。
「……………………………………………………………。」
アイラからしたら、悔しい気持ちでしかない。
よりにもよって、エンゲルに会話を阻止され、自分が会話が苦手であることを言われるなんて―…。
人は思っているほど、他者の善意に気づきにくいことはあるし、自分のプライドというものに溺れているものだ。
だけど、その自分のプライドを優先しないような人もいる。
そのような人は、他者のことや周囲のことを考えることができる善人であると言って良いし、そういう人は少ない。
なぜなら、自分が傷つけれることを人は恐れるし、それから守らないといけないと本能的に分かっているからであろうし、そこにあるのは、自分の優位性の喪失を何としてでも回避しようとしていることで、かつ、薄々気づいていたとしても、それが嘘であるということを証明したいという気持ちであろう。
だけど、世の中、決して、自らが優位であり続けるのはかなり難しいことであり、そのためには、かなりの努力かどうかは分からないが、自身を心身ともに鍛えることや、技術を学ぶこと、それらがなるべく間違った方向に向かっていないことが重要となる。
ゆえに、簡単できるとは言えないことなのであり、軽々しく口にすることは慎んだ方が良いものでもある。
「ほぉ~、無視ですかぁ~。無視されたところで、俺は気にしな~い。というか、そんなぐらいで降参するほど、俺は潔い人間じゃありませんから~。アイラ………。そんな態度ばかりするから、リガはお前に苛立ちの感情をぶつけてくるんだ。お前に何かしらの罪悪感があるのなら、リガ本人に言ったらどうだ? 不器用だから話せません。それじゃあ、誰もお前の気持ちを理解してくれるわけもないし、味方になってくれるかもしれん奴を敵に回すだけだぞ。不器用でも伝えた方が良い時だって、あるんじゃない。」
エンゲルは、アイラがどういう問題を抱えているかの真相というか深い部分での深層の真相が分かっているわけではないので、具体的なことは言えないが、会話が不器用であったとしても、誰かに自分の気持ちを伝えない時だってある。
そうしないと、困った時に味方になってくれる可能性をある人だって失うことがある。
エンゲルがそのような経験をしていたわけではないが、アイラは何かしらの負い目を感じていて、それがリガとの間の関係があることぐらいはわかっているので、話した方が双方で和解ができなくても、今の気まずい雰囲気が少しぐらいは和らぐのではないか。
あの雰囲気は、エンゲルにとって、あまり良いものには感じられず、このままでは変な場面で溝が悪化しそうで怖いと感じて、それが大事な場面であれば、悪い結果を導くことになる。
自分達の方針を完遂するためには、そのような悪い雰囲気を完全にではないが、ある程度は取り除いておいた方が良い。
気分的な問題で士気が下がるのは危険なことでしかないのだから―…。
やっぱり気分が良い方が、しっかりとした緊張感がある方が戦いやすいというものだ。
エンゲルはそのように感じているからこそ、アイラが雰囲気を悪くしているのは、止めて欲しいという気持ちがある。
そんな言葉を聞いてくれるとは思っていないが、言わないよりも、言っておいた方が本当の意味で気づける可能性があるのだと思うと、言っておく方が得であろう。
お節介だと思われたとしても―…。
(そんなこと分かってる。)
アイラは、心の中で、エンゲルの言葉に頷ける面があるのだが、言われたのがエンゲルであることに悔しく思いながら、それに加えて、自分で背負うべきことだと決めているので、エンゲルの言葉に頷くことはしない。
そのようにしてしまえば、今の自分というものを否定することになってしまうのだから―…。
アイラは結局、無口を通すのだった。
エンゲルに反応したら、負けか、と思うぐらいに―…。
「あ~、やっぱり反応しませんかぁ~。そうですかぁ~。まあ、悔しくもなんともありませぇ~ん。もしかして、俺に、真面なことが言われて悔しく思ったとかぁ~。」
エンゲルの残念な部分は治っていないようだ。
このエンゲルの言葉は、自身の首を絞める結果となるのだった。
そう―…。
「ブハッ!!!」
アイラからのチョップの攻撃をエンゲルの頭の上に直撃する結果を導きだすのだった。
そして、その攻撃でエンゲルが気絶しようがお構いなくアイラは、自分の拠点としている宿へと戻って行くのだった。
エンゲルは余計な一言を言わなければ良いが、性格からなのか言ってしまうのだろう。
アイラ達が拠点としている宿。
その中では、アーサルエルやリガがおり、二人とも別々に時間を潰していた。
まだ、スラム街がおこなうクーデターが始まっていない以上、彼らの出番はない。
そうである以上、己の武器を磨いたりすることに時間を割いていた。
自分の使う武器を大切にしないのは、戦いをおこなっていく者としての恥であるが、天成獣の宿っている武器である以上、手入れはそんなにしなくても問題はなかったりする。
天成獣の宿っている武器は、手入れをしなくても、周囲から傷つけれたとしても損傷した部分を回復したりすることがあるのだ。
一方で、忘れてはいけないのは、完全に破壊された天成獣の宿っている武器はもう元には戻ることは可能性としてはかなり低く、よっぽどの運がなければないし、その方法はこの時代にはまだ解明されていない。というか、あの魔女以外は知らないだろう。
そして、アイラとエンゲルが戻ってくるのだった。
「どうだった。」
アーサルエルが聞いてくる。
アーサルエルからしたら、リガと二人であったとしても雰囲気を悪くするようなことはないし、自分のことばかりに集中すれば全然問題ないし、リガに対して恋愛感情を抱いてはいないので、特に変な展開になるようなことはなく、自分のパートナーや子どものことの方が大事なのだから―…。
そのために、仕事を頑張っているのだから―…。
そのアーサルエルの言葉に対して―…。
「ああ、アーサルエルさん。いや、例の少女が護衛していた隊商に聞いたが、彼らがどこで宿をとっているかは分からないそうだ。だけど、その少女、サンバリアの方へと向かおうとしているみたいだ。隊商の関係者が言っていた。」
エンゲルがアイラの代わりに答える。
エンゲルからしたら、アイラは自分が言うべきことだけを言って、それで終わりということもあるし、リガの質問に答えないということもあるので、それなら、エンゲル自身が答えるようにした方が被害も雰囲気の面でデメリットというものは少ないだろうと判断した。
エンゲルのその考えは間違っていないし、アーサルエルも心の奥底で少しだけ安心した態度になるのだった。
やっぱりアイラの態度は、あまり良いようには思われていないようだ。
それでも、完全にアイラのことを嫌っているわけではないので、複雑な気持ちと言った方が良いのだろう。
エンゲルの報告を聞いて―…。
(サンバリアか―…。どういう理由かは分からないが、その少女の目的地がサンバリアということになると、接触すべきかは迷うが、その少女がサンバリアへと反抗するようなことがあり、俺らと関係があるのではないかと向こうに思われるのは危険だな。そうなると、選択肢はない、ということか。はあ~。アイラの直感が当たっている感じで、怖いなぁ~。)
アーサルエルは、心の中だけで溜息を吐くのだった。
アーサルエルからしたら、サンバリアと敵対したいという気持ちはないし、避けられるなら避けたい。実力の面に関しては、カルフィーア村でサンバリアに対抗することは可能であろうが、向こうは軍事大国である以上、どんな新兵器を持っているのか、こちら側で完全に把握できている感じではないのだ。
軍事機密を簡単に公だったり、それ以外にも知るべき人でない人に漏れるようなことをすることはほとんどない。人である以上、機密情報が漏れないということは一切ないし、ヒューマンエラーを避けるようなことはどんなに完璧だと思っている方法をおこなったとしても回避することはできない。
なぜなら、人はどんな完璧に近づけようとしても、完璧になることが物事において時間を消費している以上、できないことに基づく。
ゆえに、人は間違うということから逃れることができない。
そうであったとしても、サンバリアの軍事機密に関する情報の管理はかなり徹底されているものであり、最新兵器であったとしてもブラックボックスの類が存在し、カルフィーア村の人間がサンバリアに商売へ行ったとしても、知られるようなことはない。
なぜなら、そういう場所には、軍の重鎮や議会の重鎮はやってこないからだ。やってくるのは、サンバリアの諜報関係が、カルフィーア村に関する情報を商売での会話の中で収集しようとしてくるのみなのだ。
まあ、カルフィーア村の人間もサンバリアの諜報組織に一部では気づいているが、全容が分かっているわけではないので、カルフィーア村側の情報が漏れていてもおかしくはないが―…。
そんな感じで、サンバリアのはっきりとした情報が分かっていないのに、サンバリアを攻めるのは危険すぎる。
もし、仮に攻めるだけの材料が揃うのなら、サンバリアの重鎮がこちら側に寝返るだけの事件が起こるか、それよりも大事なのは、カルフィーア村の人間もしくは関係者がサンバリアによって襲撃されるというサンバリア側に非がある事件が起きるか、だ。
攻めたいという理由だけで、その土地を攻めるような理由が周辺に通じることはなく、返って、カルフィーア村を攻めさせる口実を周辺の勢力に与えかねない。
何でもかんでも自分の思い通りになるとは限らず、周囲の状況をしっかりと把握した上で、行動しないといけないのだ。そのことを怠ると、自分という存在が周囲から悪く見られるという結果になり、最悪の場合は破滅することだってある。
そのようなことにならないためには、以上で述べたように周囲の状況を把握し、その上で、周囲への配慮を示さないといけない。そのことを忘れてはいけない。
「そうか、宿までは分からなかったが目的地まで知れたのは前進だな。このことに関しては、引き続き、地道にやっていくしかないな。」
アーサルエルはこのようにしか答えられない。
その少女に関する情報は、少しだけ知ることができたのだから、ある程度の満足をしないといけない。過剰に求めるにしても、焦っては意味がない。
時間がいつまでも待ってくれるようなことはないにしても、焦って変な行動をしてしまえば、返って、求めている結果からかけ離れるということだってある。
だからこそ、のんびりすることはできないが、焦るようなこともできない。
こういうのは地道にやっていくのが精一杯なのだ。
もし、その均衡を破るのであれば、何かしらの他からの偶発的な要素が必要になるし、それを自分達で起こせるかは賭けでしかない。
そのことを理解しているからこそ、アーサルエルは、自分達は地道にやっていくしかないと言うことだった。
そして、暫くの間、エンゲルとアーサルエルとの会話が続くのだった。
一方、サンバリア。
その高い建物の上に、今、議長代理となっている人物がいた。
「俺が仮の支配者をやるには十分な広さだ。」
そのような言葉を言い、風を浴びつつ、自らの今に酔いしれるのだった。
そして、サンバリアは新たな大きな事件が近づいてきていることを国民の多くは知る由もなかった。
【第161話 Fin】
次回、集まるのかなぁ~、に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていきたいと思います。
では―…。




