第161話-5 狙い通りにならないのが世の常
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
翌日。
イスドラークの領主の館の前。
そこには、多くの人々がいた。
これは、日常茶飯事の光景であり、すでに、イスドラークの名物と化していたのである。
だが、良い意味ではなく、その反対の方向であり、人々には気味悪く見えた。
「スラム街の壊滅の発言の撤回を!!!」
一人の先頭にいる人が言うと―…。
『スラム街の壊滅の発言の撤回を!!!』
そこにいる人々が言う。
これはデモだ。
イスドラークのスラム街の人々が、領主であるバウネッターの「スラム街を潰す」発言に対する撤回を求めているのである。
彼らは、自らの生活をするために精一杯なのであるが、そうであったとしても、都市の外は砂漠であり、砂漠を移動することができるだけの食糧も水も手に入れられない以上、こうやって、どうにかして領主のバウネッターから、バウネッター自身の「スラム街を潰す」という発言の撤回を要求するしかなく、その実現を為さないといけない。
自分達が生き残るために―…。
生きるか命を落とすかの瀬戸際である以上、夜に仕事をしてでも、寝る時間を削って、デモという形であったとしても請願をしないといけないのだ。
スラム街は今、それぐらいまでに追いつめられているし、バウネッターにはその現状を理解して欲しいと思っているのだ。
そんなデモの中においても―…。
「フン、お前らいつもそんなことを言っているようだなぁ~。」
衛兵の中でも、衛兵長と思われる人物が衛兵の駐屯所からやってきて、スラム街の者達を侮蔑な表情で見つめながら言うのだった。
この人物からしたら、毎日、毎日、よくも飽きることなく、このような訴えを言い続けているのだ。
正しくは、交代制にして、訴えているだけに過ぎず、彼らがデモをするのは以上で述べたように、バウネッターがスラム街を潰そうとしているから、自分達の居場所を守るために必死になってやっていることだ。
そんなことは衛兵長の方は理解していたとしても、彼らのおこないに賛同するとは限らず、むしろ―…。
「お前らのような下賤の輩は、怠惰からこそ、努力を怠っているからこそ、このように貧しい思いをしているだけだ。なら、簡単だろ。お前らは毎日、毎日、血眼になって朝から夜遅くまで働き、それで俺らの働きのほんのちょっとしか成果を挙げることしかできないのだから、もっと働け。こんなところで領主に文句を言っている方が馬鹿らしいとしか思えん。それに、お前らが足を引っ張るせいで、こちらは余計な仕事をさせられてんだよ。理解しろよ。そして、スラム街を追い出されるのはお前らが頑張って領主のために働かないことが原因だ。なら、領主のために、身を粉にして働け!!!」
そして、衛兵長と思われる人物は、声を一番目に出していた人物に腹部に大きなパンチを右手でおこなうのだった。
「ガハァ!!!」
この人物は、すでにガリガリの瘦せ細った状態になっており、昼も夜も働き、休む日すらなく働いてやっと、その日暮らしができるだけの人でしかないし、家族を養うためにも必死で働いた。
だけど、そんな努力なんて、社会の理不尽さの中では最悪の結果を遅らせるだけでしかなかった。家族は失われ、働き口であった仕事も領主の怠惰と、上司の横領のせいで、真面に給料すら支払われることもなく、必死に給料を増やしてくれと縋ったのだが、聞き入れられることはなかった。
その時、この人物は「努力が足りない」、「お前は仕事ができない」と散々罵倒され、この人物自身もそのように思って必死に働いたが、結局、体を瘦せ衰えさせるだけの結果にしかならず、食事すら少しずつ柔らかいものを喉から通すことしかできないほどになってしまっている。
何かができないから努力が足りないというのは、結局、そう言っている者達が言われている人物が本来得るはずだった利益を搾取するための方便に過ぎず、何も報われることがない、むしろ頑張っている者や成果を必死に出そうとしている者、必死に出している者の成果を無駄にする所業でしかない。
努力が足りないとか、頑張っていないとか、を第三者から見れば努力をしていて、頑張っている者に対して言っている時は、確実に、ろくな人物ではなく、結局、他者から搾取することしか興味のない存在で、そのような社会では結局、何かしらの行動が報われることはなく、結果として、社会の活力を阻害することになる。
その阻害が続くと結果として、社会の停滞、腐敗の加速を及ぼすことになり、国家や社会の衰退と破滅、内乱、クーデター、反乱などを招く結果となる。
要は、頑張っているとか、努力をしっかりとしているとかの判断はどんなに客観性を入れたと思ったとしても主観的なものが入ってくることを避けることはできないので、結果として、どこかしらに不公平というものを発生させてしまうし、完璧な評価基準など存在しないということを理解した上で、なるべく、本当に公平なのかを常に考え、評価をする者は個々人をしっかりと第三者ならどのように評価するだろうか、という視点をもって常に考えないといけない。
それができなければ、結局、公平性の高い評価になることはないだろうし、周囲からの不満もより大きなものへとなっていくだろう。
さて、このように殴られた人物は、搾取することしか頭の中にない社会の支配層の犠牲になっている一存在であり、それと同時に、その犠牲になっていることに気づけたからこそ、この場で少しでも良い社会にして、自分も、自分と同様の被害を受けている者達の状態を良くしようとしているのだ。
ゆえに、本当の意味での同志というものができるのだろう。
この人物の後ろにいるのは、同様の被害に遭っている者達なのだ。
賢く生きているようには思えないが、彼らの声がなければ、何かが変わる可能性はないのだから―…。
そして、殴られた人物は、いつ倒れたとしてもおかしくはないが、必死に耐える。
(……仲間がいる。こいつらにはいつか理解させないといけない。もう、俺のような被害が出してはいけないんだ。)
人物にとって、必死になるのは、自分だけでなく、他の人が、これからの未来で活躍する人達が、イスドラークに住んでいる人々が支配層から酷い目に遭わないようにするためだ。
その気持ちと精神力、自分にされた酷い仕打ちを経験しているからこそ、何とか耐えることができているのだ。
その必死さに、衛兵長と思われる人物が気づくことはない。
気づくはずもない。
(しぶとい野郎だ。クソッ!!!)
ただただ、衛兵長やイスドラークの支配層側の視点からしてみれば、このような自分達に反抗してくる人物を容認するようなことはできない。
自分達は、搾取し続ける権利を持ち合わせており、これは支配者側になることができたからこその恩典であり、スラム街の者達はそのような側になることができなかった努力不足や、実力不足の者達であり、怠惰な者達なので、彼らはその怠惰な性格を治すため、自分達に奉仕という名の搾取をされてこそ、スラム街の者達のためになると思っているのだ。
正確に言えば、そのように相手に思わせるようにすることによって、自分達の利権を確保して、永遠に自分達は彼らに寄生して、その益を吸い続けようとしているだけなのだ。
そう、スラム街の人間の代わりなど、いくらでもいると思いながら―…。
それと同時に、自分達に対する反抗もあるだろうと思っている気持ちがあるので、彼ら自身の罪悪感というものがないわけではないが、その気持ち以上に、搾取している生活から離れることのできない依存というものに必死に縋っているのだ。
結局、搾取する者は、搾取される側に対して罵倒するのは、その搾取生活から抜け出すことのできない者達なのであろう。
ゆえに、最悪の結果を導きよせていたとしても、新たな自分の可能性を手に入れようとはしないし、一度覚えた楽な方法にしがみつくのだった。
ゆえに、努力とか、実力とか、頑張っているとかという言葉を自分達がさもしているように使い、搾取される側がそれらを必死にしていないと言い続けるのだ。
彼らは矛盾でしか支配することができず、結局は、崩壊するであろう。それがいつなのかは、その時の状況次第ということになろう。
そして、殴った人物は、さらに殴りかかる。
「グァッ!!!」
殴られた人物は、かなりのダメージを受けてしまったので、後ろに下がらずにいられなかった。本能がそうしたと言っても過言ではない。
その声を聞いた、デモに参加していた者達は、悲痛そうな感情になりながらも、殴った衛兵長と思われる人物を睨むことしかできず、殴られた者に「大丈夫か」と声をかけることしかできなかった。
「俺らに敵うわけなかろう。なぜなら、俺らは常にイスドラークを守るために必死に仕事をしているのだ。お前らのように、自分の努力が足りないで、領主に文句を言うしかできない馬鹿とは頭の構造が違う。お前らがこうなっているのは自己責任。身を粉にして働き、領主様に貢いで、言うことを聞かせるのだな。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
衛兵長と思われる人物は、デモを起こしている者達に向かって、蔑んだ目をして、馬鹿にするのだった。
彼らの言葉に反抗することはできよう。
だけど、今は、悔しくて睨みつけることしかできない。
デモを起こしている者達は、いつか、いつか、こいつらに一泡を吹かせてやりたい、と強く、強く、恨みや復讐心に近い感情を抱きながら思うのだった。
一方で、衛兵の方は長と一緒に笑う始末だった。
彼らもまた、支配層に飲み込まれてしまい、腐敗の面をもろに受けるのだった。
これは、イスドラークのほんの一部のデモの光景でしかなく、イスドラークの腐敗はしっかりとあり、深刻かどうかは比較の対象があって初めて成り立つものであるので、そのことに対する判断はしない方が良いであろうが、人々の生活に悪影響を与えていることだけは確かであろう。
一方、それを遠くから見る者達がいた。
場所は、領主の館の塔の一つの最上階。
そこからは、領主の館の入口がはっきりと見える場所がある。
「あ~、可哀想にね。」
一人は、デモを起こしている人達の気持ちを理解できないわけではないが、自分達はイスドラークの領主に雇われている以上、デモを起こしている側を助ける義理はないし、そのような敵対行為ともとられかねない行為はできなかった。
そういうことが分かっているので、可哀想と思うだけにするのだった。
「俺らは領主に雇われた以上、領主のために働けば良い。デモに同情したところで、一銭の金にもならない。領主の方が金払いは良い。金払いが悪くなれば、分からせれば良い。」
この人物からしたら、スラム街の人間は金を持ち合わせていないので、金払いの良い方につくのは、当たり前のことであり、金払いが悪くなるようなことがあれば、しっかりと分からせるという名の脅しをおこない、しっかりと払わせるということを言っている。
この人物は、金というものがどれだけ大切なものであり、生活のために必要かを知っている以上、金のない者のことを見下す。
自身も過去に貧しい思いをしたから、もう二度としたくないと思っているからであろう。
「それにしても、毎日、毎日、飽きないのねぇ~。だけど、この腐敗したイスドラークでそんなことを言ったとしても無駄だし、クーデターなんて起こしても無駄だよねぇ~。領主さんは、サンバリアから人型の兵器を買っていたし、こんな奴と戦える人間なんて存在しないわ。この地域で噂になっている人を喰って人になる兵器―…、人は人喰い兵器なのかもしれないねぇ~。あ~、怖い、怖い。」
この女からしたら、サンバリアの兵器と戦うことは危険なことであり、自分は領主に雇われたことを幸運に思うのだった。
そして、スラム街は、愚かにもそのようなことに気づかない情けない存在だとしか、この女は満たしていない。残念ながら―…。
だけど―…。
「残念だが、スラム街の方もあいつらを雇ったという噂がある。」
「えっ、何、それ!!? 初めて聞くのだけど!!!」
女の方は、今まで自分達の会話に口を挟むことがなかった特徴のない男が急に話したので、ビックリするのだが、内容を聞き取れていなかったわけではなく、内容を聞き取った上で、話を聞いていなかったことを尋ねるのだった。
ゆえに、特徴のない男も、このメンバーには一切、言っていなかったことに気づき、説明をするのだった。
「ああ、噂だが、あいつらだ、「人に創られし人」の一族だ。」
その言葉に、ここにいる者達が反応するのだった。
それは驚きと同時に、厄介なのが敵になっているのだと―…。
これ以上、ここから暫くの間、言葉を発さられることはなかった。
第161話-6 狙い通りにならないのが世の常 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていきたいと思います。
例の兵器ですね。
あの兵器の誕生秘話というか、そのことに関連した話は後々、イスドラークの後にすると思いますので、そこまでお待ちを~。
では―…。




