第160話-13 イスドラークへ
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
イスドラークのスラム街。
そこにある大きな広場。
今、人々、特に多くの子どもが集まっていた。
これから、スラム街のボスと呼ばれている人物による何かしらの催しが始まるようだ。
スラム街のボスと呼ばれている人物、ラッドスター=イブラミーはいつものことなので、自分で用意した木でできた椅子に座り、ゆっくりと一息を入れる。
これは、自身の気持ちを落ち着かせるものであり、数日後に始まるであろうことを人々に知らせる役割を果たすものである。
ゆえに、イブラミーが緊張しないわけがない。
大きなことをこれから為すための準備なのだから、緊張しない方がおかしい、と言っても過言ではない。
そして、ここではまず、子ども達のための昔話というものを話すのが最初である。
大きなことを言う前に、子ども達には昔話という娯楽を提供して、満足した上で、自分達の家もしくは拠点へと帰ってもらう必要があるからだ。
子ども達からすれば、スラム街のボスと呼ばれるイブラミーは、昔話を聞かせてくれる老人というイメージでしかない。
「そろそろ時間だし、いつもの昔話を聞かせて!!!」
イブラミーの目の前にいる子どもの一人が言う。
その子どもはスラム街の中でも他の子どもを取りまとめるという感じの役割を担っているのであり、餓鬼大将と言ってもおかしくはない子である。
そんな子どもが代表して、子ども達の意見を言うことにより、穏便にいつもの話へと移行しようとしているのだ。
この世の中、子どもというものが子どもとして扱われるのは時代や場所によって、あったりなかったりする。小さな大人としての扱いも受けることがあるだろう。貴重な労働力として―…。
イスドラークにおいては、子どもという認識はあるだろうが、同時に、スラム街においては、大人の競争相手の一つであるとも認識されており、子どももそれが直感的に、無意識的、いや、一部は意識的に理解しているからこそ、徒党のようなものを組む。
自らが生き残るために、弱い者達は束となる。その戦力を愚かと言うものは決して、弱い者の気持ちなど理解することのできない、その面における視野や気持ちを持ち合わせていない人間ということになり、理解ができないがゆえに、良くない結果を迎えるようなことだってあり得る。
視野を広げるは、自らが生き残るために必要なことであり、そこには有限的なものがあり、必ず見落としというものが発生するのだ。弱い者達が徒党を組むことの理由を馬鹿にする者達のように―…。
人は決して、合理的であるかどうかを本当の意味で判断することはできないし、その基準すら完全に理解するようなことはない。時々の不安定な基準に縋って判断し、未来のある地点でその結果を見ることしかできない。悲しいことだが、それを避けることはできない。
そして、餓鬼大将と目される人物は、自分の傘下にいる者達の気持ちを汲む。そうしなければ、離反するような結果となり、最悪自分の命が失われることだってあるのだから、下だとしても、意見を汲まないということは場合によってはできないのだ。上で踏ん反り返るばかりでは、上手くいかないのは事実であるし、褒められる意見ばかりを聞き続けるようなことはできない。
子どもであったとしても、大人に比べて力の面は平均的に劣る者達が多いであろうが、決して、何も理解できないような愚か者であるとは限らない。彼ら自身はしっかりと、彼らの視点で、社会というものを見ており、赤ちゃんにおいても人を判別することにおいて、見ているのだ。好奇心も強い場合があるので、その面で失敗してしまうこともあるが、それと同時に、反省することもできたりする。大人以上に柔軟性を持ち合わせている面において―…。
子どももそれぞれに個性を持っているので、一概にすべてに当て嵌まるという考えは危険であるが、子どもが決して無能とは限らないことに、大人は気づいておく必要がある。
そして、子どもの側も、自分の行動が常に正しいとは限らないので、大人の話を聞いておいた方が良い場合だってある。
要は、今は話を聞くべきか聞かないべきかを試行錯誤しながら、しっかりと判断基準を身に付けていかないといけないし、自らの寿命を全うするまで、判断基準の見直しをしていかないといけないのだ。避けることができるわけではないので、受け入れるしかない。残念なことに―…。
餓鬼大将の話を聞いたイブラミーは、太陽の位置を確認しながら頷き、言うのだった。
「そうじゃの。ということで、儂がイスドラークについての話をしていくことにするかの~う。イスドラークは、はるか昔にイスドという青年が砂漠の中を旅しておった。ラークという女従者を連れて―…。イスドとラークは、砂漠の中で迷ってしまい、水をなくしてしまい、飢えてしまうほどの危機に陥っていたのじゃ。そんな二人は、彷徨っていると、そこに川があり、川の近くにはオアシスがあったそうだ。そこにある果実ウルップンルを食べることによって、飢えを凌いだ。それは神のお導きであり、二人はそのことに感謝し、このオアシスとその川、オプシーブ川を範囲とする場所に村を作ったのじゃ。その村に彷徨って辿り着く者達がおり、彼らは持っていた食料をその地に植えると、すぐに成長したので、ここは良い場所だとと思った。そしてイスドとラークは、その光景は神によってここが楽園であるからではないか、と言って、その者達に言って、次第に、その噂が広がり、人々がやってくるようになって都市へとなっていったのじゃ。そして、最初に辿り着いたイスドとラークの二人の名前をとって都市の名前はイスドラークになった。イスドラークは次第に繁栄を極め、食物を外から手に入れることで、膨れ上がった人口を養えるようになった。イスドとラークは同じ日に生を終え、それ以後は、植物がすぐ成長するようなことはなくなったのじゃが、占い師がその場にいて、イスドとラークに言ったのじゃ。「いつかお主らの生まれ変わりが生まれ、その時、イスドラークは神の恩恵を再度手に入れることになる。そのために、都市は美しくないといけない。人々の心を」と。その占い師の言葉を信じ、イスドラークは綺麗な都市であるために、人々に多くの法律を課し、かつ、領主はその模範とならねばならないということになったのじゃ。だけど、イスドラークの領主は次第に、その美しさを都市の見た目ばかりにとらわれるようになっての~う、二百年前、南のかなたにある帝国によって、滅ぼされてしまったのじゃ。だけど、その帝国もある日、突然に消滅し、イスドラークは近くにいた勇敢な者を領主とすることによって、繁栄を取り戻したじゃ。」
この話が全て真実ではなく、虚飾されている部分は多分にあり、最初の話などは歴史的事実にはなりえる可能性はかなり低いものであり、されたとしても脚色されたところと、そうではないところの判断で、論争になることは避けられない。
だけど、全てが嘘というわけではなく、二百年前の今の領主になったという点に関しては、かなりの面で史実であり、今の領主の支配を正当化するための脚色はあるが、おおむね受け入れることができるものであろう。
そして、占い師の言っている言葉に関する伝承は、イスドラークでは有名な話であるが、伝説と言われる領域を抜けきれないものであり、本当のことかどうかはこの時代においては分かっていないのが現状であり、お話の中でイスドラークの人々に信じられているという感じのものである。
そんなイスドラークの成り立ちとこれまでの簡単な概略の話であり、それを言ったのは重要な意味がある。そして、これから一つの過去の話を追加しようとイブラミーは考える。
(……一つ新たな話をして、特に、二百年前の勇敢な者の伝説の一つを話して、子ども達を返した後で、大人たちに―…。)
イブラミーも暇があるわけではないが、子ども達の約束を守るために、一つ、昔から知られている伝説の一つを話そうとするのだ。
それを言いかけたところで―…。
イブラミーは、自身が何が起きているのか分からずに、視界が次第にぼやけ、色が白くなっていくのだった。そのような感覚に襲われながら、自分に何が起こったのか理解することはできなかったが、無意識のうちで分かっているのだろうか。
(………ここで儂が死ぬわけには―……。)
「いかないのに」と言いかけるようなことになりかけたが、意識はなくなる。
そして、目の前で何が起こったのか理解することができなかった子ども達は、凄惨な場面を見てしまうのだった。
イブラミーが倒れてしまい、顔の右と左から血が流れ始めるのだった。頭部を貫通されたと言った表現が良いのだろうが、子ども達から見れば、どういうことだ、という認識であり、少しの間、動けなくなるのだった。
これを第三者の視点から説明すれば、途轍もなく簡単なことだ。
イブラミーは、スナイパーによって狙撃され、右頭部からイブラミーの身体の中へと入り、左頭部へと銃弾が貫通したことにより、暗殺されたということになる。
それが、今日、この場で起こった出来事の簡潔な説明である。
【第160話 Fin】
次回、事態は動く、スラム街のボスに依頼された者の判断は、に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
第160話はこういう感じなりました。
イブラミーさんの暗殺事件をきっかけにいろいろと動いていきます。
ここから瑠璃たちに何の関係があるかは、後々、判明してくるので、ここでは言いませんが、重要な展開になってきます。サンバリアの兵器の登場によって―…。
では―…。




