第160話-11 イスドラークへ
新年明けましておめでとうございます。
『水晶』、2026年の最初の投稿です。
去年の最後の投稿で、文字数が何と、400万字を越えましたぁ~。
皆様のおかげです。
ありがとうございます。
今年度も、『水晶』を読んでいただけると幸いです。
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
領主バウネッターは言葉を続ける。
「まあ、サンバリアのことは警戒もしながら、情報を集める程度だな。」
バウネッターは、サンバリアに関わっているほど暇ではない。
やるべきことがあるのだ。
「はい、畏まりました。」
そうして、秘書は領主の執務室の外へと出て行くのであった。
それと同時に、別の誰かが部屋の中へと入ってくる。
「バウネッター様。」
秘書は気づいているだろうが、敢えて、その人物に話しかけるようなことはしないだろうし、聞く気にもなれない。
何となくだけど、予想できるからだ。
裏の者。
その者とイスドラークの領主であるバウネッターが話すのだ。
聞いてしまえば、逃げられなくなる。
この沈んでもおかしくないかもしれない船から―…。
ゆえに、さっさと自分の仕事場へと戻ろうとするのであった。
そして、入ってきた者は、秘書に構っている暇などなく、バウネッターとの話し合いになるのだった。
「何だ?」
バウネッターからしたら、慌てるような素振りをするのは、あまり良くないことが起きているのではないかと思え、気持ち的には嫌な気分になる。
そんなことを思っていたとしても、この今、部屋に入ってきた裏の者からしたら、領主の命を第一に、いや、自分達の組織を第一にして行動しているのだ。
そうである以上、現状、領主が倒されてしまっては困るのだ。
自分達の得ている果実を手に入れることができなくなってしまうからだ。
「ハッ!!! 我が「王の隠者」の密偵がスラム街において、カルフィーア村の傭兵どもがスラム街のボス、ラッドスター=イブラミーに接触しました。」
そう、アイラとアーサルエルが、スラム街のボスと接触したことはすでに、情報として漏れているのだ。
どんなに、優秀なアーサルエルであったとしても、密偵を見逃すことはあるし、密偵としての技量をしっかりと持ち合わせた者にスラム街を張らせていたのだ。アーサルエルが気づかなくてもおかしくはない。
そうであったとしても、アーサルエルの失態ではあろう。
「何だと!!!」
バウネッターは知っている。
アーサルエルというのは、この地域では知らぬほどの天成獣の宿った武器を扱うことに長けた人物であり、そいつに出会ったら命はないと言われている。
だからこそ、バウネッターは恐れた。
(もしもアーサルエルが接触をしたのであれば、イブラミーは確実に俺を暗殺しようとしている。ここで手をこまねくようなことはあってはいけない。……いや、アーサルエルではないかもしれないな。)
バウネッターは、アーサルエルの実力を知っているからこそ、恐れるのだ。
ゆえに、アーサルエルは関与していないという一縷の望みというものを抱く。
抱かずにはいられないのだ。
藁にでも縋るような感じで―…。
「アーサルエルはいたか? あのカルフィーア村の人間の中で一番だと言われている傭兵だ。」
バウネッターは言う。
自分の命が一番だからこそ、言わないといけないし、聞かないといけない。
そんな切羽詰まったバウネッターの表情を見た報告に来た裏の者は―…。
「二丁拳銃を持っていた者が二人で、一人は鼠色のマフラーをした少女と、もう一人はおじさんで如何にも、動きが銃の扱いに長け、戦闘に長けたものでした。そして、おじさんの方が実力が明らかに上だと報告を受けています。」
裏の者からしたら、なるべく領主であるバウネッターに深堀して聞かれるだろうと予測し、予め報告を上げてきた自身の部下から聞いておいたのだ。
そういう意味で、用意が良いとも言える。
この今の言葉を聞いて、バウネッターは体を僅かに震わせる。
(おじさんの方は、アーサルエルで間違いない。あいつは二丁拳銃を扱い、今のカルフィーア村の長とされている人物が外に出ないから、実質一番だとされている。噂によれば、アーサルエルに戦いを教えたのは、サンバリア最後の王政の王だったとも言われている。あれは眉唾だろうな―…。怯えすぎて、考えてしまった。ここは、さっさと動くしかない。)
バウネッターからしたら、アーサルエルが危険人物であるのは間違ない。
だからこそ、依頼の内容が何であるかが、分かり切る前に行動しないといけない。
大事なのは、アーサルエルを暗殺するようなことではない。
カルフィーア村の人間は、依頼を受けない限り、いや、依頼を越えての行動は一切してこない。
そうなると、バウネッターの方でも考える。
自分が生き残るために何をしないといけないのか。
このイスドラークを領主にとっての美しい都市とするために―…。
「イブラミーを始末しろ。」
「はっ。」
「王の隠者」からしたら、バウネッターの言葉に反論する必要などない。
自分達の組織を破滅させると感じさせるものは、徹底的にして潰さないといけない。
そして、自分達の組織にとってプラスになることは、積極的にしないといけない。
領主のバウネッターよりも自身の方が実力があるのだということは分かり切っているし、領主を利用して自分達をより強く栄えさせる。
その目的のために―…。
「王の隠者」は、領主の執務する部屋から出て行き、領主の指令を伝えに行く。
(………イブラミー。お前がカルフィーア村の者を雇ったとしても、この都市、イスドラークは俺の物だ!!! 綺麗に、美しくしないといけない。お前らのように都市を汚す者達は、排除しないといけない。怠惰を人のせいにするお前ら、スラム街の住民には―…。)
バウネッターの考えに共感できる者がいるのであれば、その人間は自身の性根が腐っていることを自覚した方が良い。
なぜなら、人に自分の意見ばかりを強制している人間は何も成長しようとはしないし、思考停止と視野狭窄に同時に陥っている可能性があり、その強制によって失敗した場合、自らが責任を取ることなく、他者に責任を押し付けるようなことをするからだ。
それに、バウネッターの思っていることに賛同しないのがほとんどであろうが、全員ではない以上、少ない者は賛同するだろうし、長い者に巻かれろの精神で何も考えることなく賛同する者だっていよう。
ここで忘れてはいけないのは、人は完全にも完璧にもなれず、近づくことしかできない以上、この世で完璧で何の間違いもないということはないのだから、為政者や支配者が完璧に失敗しないというのはあり得ないことなのだ。
何々さんは正しく、何々さんだから確実に間違っているようなことを言っている人は、そのことを理解することができていないだろうし、自身が間違いから逃れ、かつ、自分に恩恵がもたらされ続けると思っているだろうが、そんな未来は存在しない。時に、何々さんだからということで、物事が正しい場合も存在するが決して、全ての面で同じような結果になるとは限らない。
人という存在である以上、ミスや間違いから逃れることはできず、そうしないためにいろんな方向から考えるし、時間という区切りがある以上、完璧にいろんな方向から、いや、全ての視野から見るようなことはできず、見落としというものが発生する可能性から免れるようなことではない。
ゆえに、大事なのは、その人の行動とやろうとしていることの性質が何であるのかを考え、その考えのための材料を手に入れるために、普段から情報収集やそれを批判的に考えることを少しずつおこなっていくことであり、それは歴史を学ぶ上で学習することにも似ている。
その批判的な精神こそが、物事を、これからの情報社会を生き抜いていくためには、必要なことであり、過去から学ぶの重要な意義であり、人文科学系であろうが、社会科学系であろうが、自然科学系であったとしても、必要とされるのであり、そうすることによって、物事の見方の多角性や正確性を完璧にはできないが、そこに少しずつ近づけるようになり、良い未来を実現させていくのであろう。
そして、驕らずに謙虚に、いろんな可能性を考慮し、経験する。
以上のことから、批判的にみることもまた、重要なことなのである。
話を戻すと、バウネッターは、自身にとってイスドラークを美しくしようとするがゆえに、その信念のゆえに、自身に対する批判的な態度というものが形成されておらず、疑わないこと、自分の言っていることが正しいということを他者にとっても正しいと思ってしまっているのだ。
それが、イスドラークの腐敗を助長させ、その助長に気づきもさせず、その腐敗の犠牲になっている人々の声が本当の意味で、届かなくさせ、自身の考えによって、犠牲者との間に深い溝を作り、修復できないほどに広げているのである。
気づくこと、自分が本当に正しいのか悩みながら考えること。
これは、自分の考え見つめなおし、世の中に合っているのかを正面から見つめていることであり、誇らしいことでもある。悩まないことが重要なこともあるが、悩むことが重要な場合もあるのだ。
その理解は、誰もがしておいた方が良い。
一つの方向が確実に正しいとは限らないのだから―…。
バウネッターは、本当の意味で、自身が置かれている状況に気づくこともなく、動く。
これがどういう運命になるのか。
悲惨なことになることだけは確実なことであろう。
瑠璃たちがイスドラークに到着してから一週間後。
瑠璃たちは宿を確保し、そこを拠点にしていた。
「お姉ちゃん、探し人がいるというけど、見つからないの?」
瑠璃は、ミランに向かって言う。
ミランは、ある人たちを探そうとしていた。
探さざるにはおえなかった。
なぜなら、ローの狙いがそこにあり、サンバリアへと砂漠越えをさせるのは、何かしらの狙いがあり、「人に創られし人」の一族に会わせようとしているのだ。
彼らに会わないとサンバリアと戦いになる場合、自分達だけでは確実に、サンバリアには勝てないのだから―…。
サンバリアが軍事大国であることは有名な話であり、リースであったとしても、そのような情報が交易商人から簡単に得られるのだ。
その軍事力は場合によっては、ある部分では現実世界の今の時代よりも優れている場合だってある。
軍事力という一つの基準にしても、細かく分類するようなことができれば、際限もないぐらいの多くの基準が生み出され、その間においても、上下関係のようなものが発生する場合もあろう。
そういう意味で、一つの基準で簡単に比較するようなことはできないが、主観的な推測なら、簡単にできてしまうのだ。正確性をある程度排除もしくは完全に排除するということで―…。
「ええ、簡単じゃないわ。私たちがイスドラークに入った時に僅かばかりに見えたということだから、見た目では判断のしようがないのよ。それに、そいつらは傭兵や商売などに精を出しているから、別の場所に行った可能性もあるけど、その関係者を見つけ出すことができれば、話し合いに持ち込めるかもしれない。ここからカルフィーア村には一回だけ言ったことあるけど、幼い時だから詳しい行き方は憶えていないし、私たちだけでの砂漠越えは危険だわ。それと―…、お姉ちゃんって言うな!!!」
瑠璃の言っている言葉にミランは、返事をする。
「人に創られし人」の一族が暮らすカルフィーア村への行き方は全然わかっていないし、砂漠越えが危険であることはラナトールの前から知っているが、ラナトールからイスドラークの間で略奪団の襲撃というものがあった以上、自分達で移動するよりも「人に創られし人」の一族の関係者に接触して、連れて行ってもらった方が安全であることを身をもって理解しているのである。
それゆえに、この場にいる瑠璃にしても、自分達で単独で砂漠越えをするようなことを堂々と言うことはできない。それだけ、砂漠は危険なところなのである。
そして、カルフィーア村を知っているのは、このメンバーの中ではミランのみであり、瑠璃たちは一切知らない。
ゆえに、ミランに頼るしかない。探す人においても、そうだ。
そして、ミランは、瑠璃が自身のことを「お姉ちゃん」という瑠璃には言われたくないことを言われているのに、気づかないわけがない。
耳の良さとか関係なく、喋っているうちに忘れるということもなく―…。
瑠璃は忘れているのだろう、もう大丈夫であろうと思っていたのだが、そうではなかったことに対して、驚くのだったが、大きな驚きの表情はしなかった。
そして、瑠璃からしたら、ミランは血の繋がった実の姉であるので、「お姉ちゃん」と言っても何も問題はないのだが、ミランからしたら、言われたくはない。瑠璃を自身が恨んだのだから―…。そういうのが抜けない、ということでもあろう。
人は、簡単に感情を変えられるようなことばかりではない。
個性とは違いである以上、同じではない、別の、反対のことがあってもおかしくはないのだから―…。
そして、瑠璃は―…。
「気づかれたか。」
驚きながらも、悪戯した子どものような反応をするのだった。
ミランもこうしては埒が明かないと判断したのか、話を進めるのだった。
第160話-12 イスドラークへ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していきたいと思います。
前回からの第160話からの続きとなっております。
もう少ししたら、第160話の投稿が終わり、第161話へとなっていきます。
衝撃は、ここの話を見ている人ならそこまではないと思いますが―……。
別の方向での衝撃がどこかで発生すると思いますので―…。
では―…。




