改造どころかニコイチらしい。
ノイ、またはソムチャイだ。ずっとオレのターンなのか?
翌日、彼女と専門家チームの会合に出席した。
英語だが、チョッピングイングリッシュなので、まあまあ聞きとりやすい。これが彼女が言っていた「サンディ封じ」というやつなんだろう。
話の内容は極めて専門的で、オレでも分からないところが多々あった。
要点をまとめるとこんな感じだろう。
・ウチの L-100 はストレッチ機なので、構造材、リブが弱い。
・新規に買うと死ぬほど高いが、半分腐りかけたC-130 またはL-100 から外板を剥し、リブを分解して持ち込んできている。
・ウチの L-100 はストレッチされている分、主翼根の構造は強化されているはず。
・今までの任務でも、今後の任務でも、ストレッチの意味はほぼ無い。PMC らしく、重くてコンパクトなものを運ぶ任務だ。
・今回の整備の紐付き任務・・・整備費用の一部または全部を回収できる任務のことな・・・も、重くてコンパクトなものを運ぶ話だ。
・ラオ国で運用する限り、湿気との戦いは終わらない。まあ、それはそうだよな。
・なので、外板は今回全部張り替える。
・内装もアルミや鉄など異種金属を適当にパッチしまくりなんで、これも張り替える。
・エンジンも一旦降ろして、付け直す。そうでないと性能が出ない。
・外板は、2024-T3(超ジュラルミン)。これにAlclad加工をしたものを使い、耐食性を高める。
・内装は、5052-H32。硬さよりも耐食性を重視。そして、これはがんばれば溶接ができるので、重い積載物を乗せて痛んだ時にも有利。
・特に強度の必要な部分は、7075-T6(超々ジュラルミン)。エンジンマウント周辺や、後部ハッチの周辺に、これを使うことがあるかもしれない。
うん、外板は、随分傷んでいるのを塗装で誤魔化しているからな・・・全部貼り直せるならそれが一番だ。高そうだが。内装も、異種金属でアルミが溶ける、なんてことは知らなかったから、結構適当な修理をしていたはずだ。
ネジ止めしているネジが落ちてくるのも、ステンレスとアルミの電食ってやつが問題だったんだな・・・
・ストラクチャー、リブなんかは徹底的に洗い、下処理をした上で、腐食防止の液体?に一日漬け込め?みたいなことを言っていたみたいだ。
・エルロンやラダー、フラップなんかはどちらかの機体のいいものを直して使う。
・貨物室のランプドアはウチの L-100 がしっかりメンテされているから、それを綺麗にして使えばいい。
・AE2100はT56とはエアインテークもオイルクーラーの位置も違う。図面はあるから、アルミ板を叩いて整形する。うまくやれば空気抵抗も減る。
・馬力は3~4割ほどアップするから翼根部の補強が必要。持ってきたベース機のリブをウチの L-100 のリブで挟み込むようにして主翼、主翼と胴体の接合部周辺をを強化する。
・微細なクラックが入っているかもしれないから、徹底的に調査しろ。
・電磁波?を使ってクラックを接合できる新兵器も持ってきている。事前に弱いところを潰せ。リブ同士の接合にも使える。
・但し、電力を相当食うので、そこは気をつけろ。
・配線、配管、油圧系統は全部やりなおし。
・油圧系統は系統毎に引くが、点検は一カ所からできるように移設する。
確かに、あれ、面倒だったんだよなぁ・・・そうか、エンジンは入れただけじゃだめだったんだ・・・
・油圧配管はアクチュエータ付近にセンサーを入れて、油圧のままだが、流れをデジタル化して、Garmin にぶちこむ。
・点検口の隣に手動油圧ポンプを設置し、万が一に備える。
・油圧そのものもエンジンから動力を取るのではなく、一部または全部を電動化する。
・操縦索はケーブルのままだが、全てステンレスで新造する。プーリーの類はテフロン化する。
・水平、垂直尾翼の直交度は厳密に確認せよ。
・フラップは左右で別に展開できるように改造する。
・なので、フラップトラック、レールも強化する。
・翼根部にさらに負荷が掛かるので、前述のニコイチ機材でガゼットプレートを作って強化する。
ご説、ごもっとも、という奴だな・・・
・ランディングギアは二機分持って来れなかったので、既存機のものを強化する。
・タイヤは可能な限り新品・・・再生品でもいいが・・・にする。
・アンチスキッドは格段に進化しているので、ここだけ新品にする。ローターも変える。
・空中投下のシステムは既存品を流用する。油圧の抜けに注意。シリンダーは予算を見て考えるが交換も視野に入れる。
・ランプのシール密着は新品に交換する。今の状態は、気密になってない。
・内装と構造材の接点には専用のビニールテープを貼る。そんなんでいいの?
・水抜き穴を追加して、自然に付着する湿気の水を落とせるようにしておく。防錆材も点検整備の際に大量に噴くことを前提に整備計画を建てろ。
・内装をビスで止めるときは、ナイロンワッシャー付きのネジを使え。
流石は、クナイ・マイだな・・・細かいところまで考えが及んでいるってやつか・・・
・Garmin の本体は既にあるが、ワイヤーハーネスは新造する。
・プロペラのオーバーホールはタイで渡りを付けてあるので、すぐに特急で依頼可能。
・エンジンカウルや点検口の開閉はネジから、クイックリリースに変更。
・できるだけテフロンやセラミックコーティングを施して、グリスアップする場所を減らせ。
・Garmin の機能を拡張して予防保全システムを構築せよ。
・油圧ポンプ、電装リレーなどは可能な限りユニット交換式にする。保守用に年間積み上げておく数も事前に算定すること。
保守のことまで考えてくれているのは嬉しいぜ。
「と、このような方針で行きたいと思う。具体的な実装はこれから詰めるとして、何か質問はあるか・・・そうだな・・・ノイはどうだ?」
オレですか?・・・特には・・・あ、色については何も言ってなかった気がしますが・・・素のアルミのままじゃないですよね?
「それはそうだろう・・・特に考えてなかったが、普通にプライマーを塗ってから、軍用機の色に仕上げればいいだろう?」
そうなんでしょう、けど・・・このヘンの土が付きにくい塗装ってのが、タイかベトナムにあるって聞いたことがあります。
「真偽は不明か?」
|はい。《Yes Ma'am》
「一応、調査する。有名ならすぐ分かるだろう」
あと、左右のフラップを別々に動かしていいんですか?整備項目に、左右フラップの同期って項目もあったと思うんですが・・・
「そうだな。まあ、PMC ならではだ。電動油圧ポンプもつくから、同期もできる。普通はそうするんだが、私的には非同期で運用したい理由があるんだ」
そう言えばこの人は天才的なパイロットでもあったんだった・・・
ポーターみたいな急上昇、急降下でもするんですか?
「あんなことが、この鈍重な L-100 で出来るわけなかろう・・・別のことに使う。他にあるか?」
無いです。
「で、あるか。では他の者からの質問を受け付ける」
・・・
他の開発メンバーの質問の内容は高度で、そもそも単語の時点で分からないものも多かった。
ただ、ウチの L-100 がとんでもない輸送機に化けるということは、ほぼ確定だ。
オレとしても、今日、メモできたものだけでも、色々と勉強しなければならないことが多い、と、いうことだけは確定だ。まあ、がんばるか。
司令に相談しなければならないことも増えたので、訪問許可を取った。
・・・
司令、よろしいでしょうか。
「許可を与えたので普通に話してくれればいいよ」
はい、彼女・・・クナイ・マイ、に、整備がお前だけでは頼りないから、二、三人巻き込め、と依頼されました。
「クナイ・マイね・・・言い得て妙だな。オレも彼女のことを、そう思うところもあるし、彼女からもそれ、整備兵の増強の件は聞いている。一応、候補は考えている。お前一人じゃポーターだけだろ?あとは精々セスナか?」
そうですね。三人でも L-100 は厳しいですけど、それでも一人よりは・・・かなりいいです。
「そうだろうな・・・一応、自動車整備工場で働いたことのある奴を見繕っている。一人はお前とも仲のいいあいつだ」
自動車整備ですか?・・・まあ・・・それでも、全くの無知識よりはマシか・・・なるほど、分かりました。ボンですか。あとは・・・ダオでしたっけ?比較的・・・結構若いですよ?
「よく知ってるな・・・まあ、考えることは一緒ってやつだろうな。その二人だ。オレから打診だけはしてある」
了解です。嫌そうな顔をしてたんなら教えてください!
「二人とも、『え? はあ、そうですか・・・』、みたいな顔だったな。飛行機整備には自信が無いのかもしれない」
そりゃそうでしょう。じゃあ、さっそく今晩、誘ってみます!!
「頼んだぞ」




