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最終章 実家と調子に乗った兄嫁が、旦那様の魔力でマジで爆発四散しました

超高級魔獣馬車で、私は王都のローエン邸へと滑り込んだ。

全身の骨がバキバキで、胃液が逆流しそう。

——てか御者も死にそうじゃない?


「ア、アウグスト!」

降りる時にドレスを引き裂きながら(ドアに引っ掛けた。結構高かったのに……)私は大広間の扉を勢いよく蹴り開けた。

トカゲちゃん、殺されてたらどうしよう!


しかし、そこに広がっていたのは、私の予想もしてなかった光景だった。

「おや、アイリーン。おかえり。ずいぶん早かったね」

ソファに腰掛け、優雅にハーブティーを啜っているのは、紛れもなく我が夫。

人間の姿でいる彼の血色はすこぶる良い——あれ?

「無事だったのね……って、これ、兄の暗殺者?」

「うん。なんか『ヴェルゼ家の影の者、参る!』とか言って天井から降ってきたんだ。お茶の邪魔をされたから、ちょっとだけ『めッ!』てしたらこうなっちゃった」

アウグストの足元には、黒い暗殺装束に身をつつんだ男たちが、蜘蛛の糸みたいなもので貼り付けられている。

そしてピクピクしている。

あれ?色々汚れ仕事を片付けてた剛の者たちなのに?


「お兄様と兄嫁は本気でローエン家を潰して、我が物にするつもりです。執事さんは私を逃すために……」

「……へえ」

アウグストの目が、すっと細くなった。

「僕を殺そうとするのはまぁいい……だけど、僕の大切な奥さんの仕事を邪魔して、おまけに我が家の優秀な執事に手を出すなんて……まぁ執事は平気だと思うけど」

アウグストの身体から、怪しげな黄金の魔力が立ち昇った。

「アイリーン。ちょっと実家にご挨拶に行こうか。僕の『本当の魔力』、まだ君に見せていなかったしね」

「どういうこと?」

「ちょっとそのブレスレット外してみて」

私がアウグストの腕から魔導具と思われるブレスレットをカチリと外した瞬間。


アウグストの体が光に包まれ、そして現れたのは——


紛れもない古代竜。


サファイアの鱗を纏い、ルビーのような瞳は神々しいまでの光を放っている。


——いやいやちょっと待ってこれは聞いてなさすぎる。トカゲちゃんどこいった?


そして——

ゴォォォォォォォッ!!!!!


王都全域が、マグニチュード7クラスの震動に襲われた。


床に張り付いていた暗殺者たちが消し飛んだ。



その頃、ヴェルゼ侯爵家の本邸は、お祭り騒ぎだった。

「これでローエン家も我が物!」と確信した兄嫁が祝杯を挙げていたのだ。

ちなみに兄はまだ帰ってない。

「あ〜せいせいしたわ! あの小賢しいアイリーンが戻ってくるのは忌々しいけど、ヴェルゼ家もまた蘇るわ!」

兄嫁が高級ワインをがぶ飲みしながら、高笑いしている。

「はい、奥様。間も無く旦那様も戻ってこられましょう」

向こうの執事や使用人とそんなクソみたいな会話で盛り上がっているところへ。


ズドォォォォン!!!!!


正面玄関が爆破され、私とアウグストがエントリーした。

文字通り、門扉ごと吹き飛ばしての登場である。


「な、なによお前たち! 泥棒よ! 出会い頭に何を……って、アイリーン!?」

「お久しぶりです、お義姉様。引き継ぎの件ですが、私はやっぱり戻れません」

「そんなこと言って、後で泣いて謝っても許さないわよ。ちょっと暗殺者、こいつら取り押さえなさい!」


——い、いや、兄嫁、後ろの古代竜見えてないのか?


「アウグスト、やっちゃっていいわ。しゃーないです」

「うん、ありがとう、アイリーン」


アウグストが、一歩前に出る。

そして、ただ、小さく息を吸い込んだ。


「——『 滅 べ 』」


ズドォォォォォォォォン!!!!!


純白の魔力の奔流が、一瞬にしてヴェルゼ侯爵邸を包み込む。

それは爆発というより、消滅だった。

暗殺者たちの武器が光に溶け、豪華絢爛な壁が塵になっていった。そして光の圧力に耐えかねて、全てが吹き飛んでいく。

わずか数秒の後。

光が収まると、そこには見事なまでの「更地」が広がっていた。


「おぉ〜!めっちゃ綺麗になった!」

こうして、私を追い出したヴェルゼ侯爵家は、物理的に王都から消滅した。


……私の実家、ちょっと寂しいけど。

しゃーない。


「ふぅ……すっきりした。アイリーン、お腹空かない?」

「空きましたね。アウグスト。帰って美味しいお菓子とお茶にしましょう」

トカゲ……もとい、世界最強の古代竜である旦那様は、人間の姿に戻ると私の手を優しく握り、微笑んだ。

「これからも、僕の領地の書類仕事、ずーっと手伝ってくれる?」

「ええ、もちろんです。その代わり、美味しいハーブティーを毎日淹れてくださいね」


最強の旦那様からの、至高の餌付け。

私の結婚生活(と、終わらない帳簿仕事)は、ここからが本番のようだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


もし「トカゲちゃん可愛い!」「モブ兄嫁のフラグ建築最高だった!」と思った方は、ぜひページ下部の【評価(星)】をぽちっと押してやってください。アウグストから美味しいハーブティー(執筆の原動力)が貰えます!


\ 次回作の予告です /

古代竜の次は、最強のモフモフが登場します!


『婚約破棄された私ですが、元婚約者が「駄犬」と言って捨てたのは守護神獣フェンリルでした。お返しするのは構いませんがモフ助は帰りたくないようです』


今度は元婚約者に「駄犬」と捨てられた伝説の神獣(モフ助)をめぐる、爽快ざまぁ&モフモフ癒やしファンタジーです。元婚約者が後悔で泡を吹く予定ですので、ぜひお楽しみに!


6/13 はじまりました!

【全3話予定】婚約破棄された私ですが、元婚約者が駄犬と言って捨てたのは守護神獣フェンリルでした。お返しするのは構いませんがモフ助は帰りたくないようです

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