第2章 兄が旦那様を消したと言うので、仕事を放り出して帰ります
それからしばらくして、私はアウグストの古い領地に旅立った。
ローエン家は王国始まってからずっと続く名家。
色々と悪い奴らがはびこっている。
「アイリーン様、次はこちらで」
執事がまた書類を持ってくる。
「ちょっと多くない?」
「はい、ですが私もお手伝いいたしますので」
アウグストは私を気遣って執事をつけてくれたのだ。
でもこれ無理じゃない?
「アウグスト様も本当に申し訳ないと」
「そう……頑張るわ」
私はそれを次々と片付ける。
そして不正を働く奴等を次々と牢屋にぶち込んでいく。
ちょっと可哀想だけど……これもローエン家のため。
しゃーない。
午後のハーブティーを飲んでいると執事がやってきた。
「アイリーン様、ヴェルゼ家の方が——」
兄がやってきた。何をいまさら……ってこんなとこまで来たの?
「アイリーン、やはりお前には戻ってもらう」
「どうしてですの?私はもう用済みでは?」
「お前の引き継ぎは雑だった。妻が困っている」
でしょうね、噂は聞いてたわ。でも雑はないぞ。
「そうはいっても私はもうアウグスト様の妻。ローエン家の人間。むりです」
「まぁそういうだろうと思っていた」
兄がニヤリと笑った。
「あの死に損ないなら暗殺者を送った。ヴェルゼ家自慢の影の者だ」
「なんですって!?」
古代竜ってドヤってるけど実際トカゲちゃんだよ?
お茶飲んでるだけだし。
それに私も知ってるけどヴェルゼ家の暗殺者、結構強い。
ちょっとまずいかも!
「お前は私と帰るのだ」
後ろにいた兄の従者たちが私を囲む。
「アイリーン様! 屋敷へお急ぎください。ここは私が!」
執事が短剣を手に従者たちの前に立ちはだかった。
私はダッシュで事務所を出た。
そして領地で一番足の速い超高級魔獣馬車のギルドへ殴り込む。
「王都のローエン邸まで! お釣りは要りません、死ぬ気で飛ばしなさい!!」
そして死んだ。
主に私が。
超高級なのはスピードだけで、乗りごごちは最悪だった。




