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願いが叶った女  作者: 花梨
56/56

№55

楽しそうに目を輝かせて話す弟の声に耳を傾けていた。

くるくると変わる表情と素直な笑顔に安心していく自分が居た。

その目は私を信頼し安心しきっている。

兄弟だから当然の事、普通なら……。


「それでは兄上、私は城下へ行ってきます。」


「ああ、楽しんで来なさい。」




何の悪戯か知らないが、国王の第一王子として産まれた私に

兄弟という情は必要ないと教えこんだ者が居た。

その意味さえも理解できない小さな子供に言い聞かせる悪い大人達。

自分を信用しろと誰もが私に囁く、あの者は危険だと聞きたくも事を私に囁く。

子供の私はその言葉に心を乱され混乱し、頭の中で必死に答えを導き出そうと足掻き、

自分の味方が誰なのかがだんだん分からなくなっていた。

それだけなら良かったが、国王である父上の回りも不安で信用できなくなっていった。


愚かな私は、何の力も持たないくせに、父上を母上を弟のクラリスを

皇太子である私が護らねばならないと考えるようになっていた。

薄汚い心ばかりの家臣等必要ない、邪魔なだけだと気づいたからだ。

もう誰一人信用できる者等いない城で、必死で知識を叩き込み書物を読み漁り

剣を奮い自分を鍛える事に没頭した。

唯一たった一人の者だけを傍に置く…。

それが傍つきのコンスタンだった。コンスタンは私の身の回りの世話だけをする。

それは幼き頃より変わってない。淡々とそれだけをしてくれる。

余計な事は何も言わず、毎日ただ私の傍に居てくれた。


今思えばコンスタンは私の変化に気づいていたのだろう。

嫌…、我が国の腐敗に気づいていただけだろう。


ある時を境にコンスタンは私の傍つきから先生へと変わった。

身の守りかたから、攻撃の仕方、魔術に魔力の出し方まで教えてくれた。

私はコンスタンが居たから今まで無事に生きながらえてこれた事を知る。

それは父上が、私を必死に護ってくれたのだと言う事も…。

誰よりも信頼でき優秀な人物を私の傍に居させてくれた事がなによりの証拠だった。


父上は、国王として全てを知っていたからだ。


そしてそれを私に託した。


力無き国王ではなかった、時には騙されたふりをして父上なりに必死で

国を民を私達家族を護っていたのだと…、気づくのが遅すぎた馬鹿は私だった。



「…何故……私をレガーナへと連れてきたのだ?」


私の問いにコンスタンは何も答えない。


「意味も無くここへは来ないだろ?」



「はぁ…レガーナは理想です。この国は素晴らしい、それを殿下に見て頂きたかった」


「それだけなのか?」


「政も城下の賑わいも、田畑の潤いも、そして王族と重鎮の家臣達もです。

決して無駄にはなりません、もう殿下もお気づきでしょう。

この王城が見えない部分でもしっかりと見張られ護られている事に…。

この国も最初からこうではなかったのです。先帝の時代は乱れてました。

でも今はどうですか、これだけの大国、ここまで成し得た現国王は賢王です。

その方の姿、振る舞いを、私は殿下に見て頂きたかったのです。

レガーナの国王は…きっと殿下の事を理解して頂ける器をお持ちです。

それは…デュークハインヒル殿下にも同じ思いです。

クラリス殿下のお話しを聞いていて…私は殿下こそが近づく御仁だと確信致しました」


「デュークハインヒル・ワーズナー・ボイトか……。」


「はい、正直言いまして…初めてお姿を拝見しました時は身震いしました…。

底知れぬ恐怖と言いますか、言葉では言い表せない何かを感じました。

次世代の王だと思いました、身体が勝手に平伏す感じで…初めてでしたあの感覚は…」


「ああ…それは私も感じたよ…、悔しい程にね。」


「あの方の前では……私など赤子も同然…、歯向かう気すら起きません。」


「それでも、国が安定した中でぬくぬくと育った皇太子ではないか?」


「それは違います、あのお方は私が知りえる中で

一番命を狙われた回数が多い方です。

この王城も他国の刺客で溢れていました。血生臭い話は後をたたず、

実際誰かが何処かで小さな皇太子様を狙ってましたからね。

毎日欠かすこと無く何人もの刺客が狙っていたのは当時は有名な話しでした。」


「私よりもか?」


「はい、比ではありません。だからあそこまでお強くなられたのでしょうね。

勿論持って産まれた資質は別格だったとは思いますが…。」




「あら、デュークとお友達になりたいの?」


「「!!!!!」」


「セレスティーナ王妃様、いくら自国の城でも他国の皇太子の部屋へ勝手に

入り込むとは…。あまり良い行動とは思えませんが?」


「まあコンスタンタン、あなたからそんな言葉が出るとは、ふふふ。」


「………っ。」


「あなたも勝手にサラの部屋に入ったでしょ?」


「何が仰りたいのですか?」


「ふふふ、アドリアン殿下と散歩でもしたいと思いましてね。」



慈愛に満ちた瞳は、恐ろしくはないが、それでもこの王妃にも

なんとも言い得ない怖さを感じてしまう。

私と散歩をしたいだと?いかにもな理由だな……。狙いはなんだ? 


「喜んでお供いたします。」


「まあ、若くて素敵な男性と散歩なんて嬉しいですわ。」


何を考えているのか……、不思議な方だが…気は許せぬ。




「デュークは偏屈なのよ、怒りんぼうで俺様で自己中、そうそう身勝手だわ。」


「…………、はあ…。」


「あとね、口調も乱暴で、デリカシーなんて言葉きっと知らないわね。」


「……そうですか……。」


「でもね、むかつく程…頭はいいのよ、剣の腕も一流なの、どう思う?」


「……どうと…言われましても……。」


「ホントッ、むかつくわ、息子のくせに…。偉そうなんだからっ。」


「………。」


「ねえ、ちゃんと聞いてる?」


「え? はいはい、ちゃんと聞いてます。」


「アドリーちゃんみたいに可愛い時と凛々しい時を使い分けてくれたらいいのに…」


「…ぃっ…、……はは…。」


「あのムスッとした顔で、キリリッとした鋭い瞳、可愛げもないのよね…。」


「アドリーちゃんのあの犬コロ状態は大好きよ。むぎゅってしたくなるわ。」


「………はは……どうも……。」


「あれをデュークに教えてあげて頂戴。犬コロになるコツを。」


「あの…、無理です…。殿下に殺されそうですよ…。」


「あら、大丈夫よ、流石のデュークも他国の皇太子を殺したりはしないわ。」


「やっぱり…無理です。」



それからも王妃はしつこくアドリアン殿下の元へと頼みに行くのであった。







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