表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/88

飾り付け

お久しぶりです。


クリスマス前日、飾り付けします。

 放課後、平太(へいた)が保育ルームに入ると、子どもたちは明日に控えたクリスマスに向けて、部屋の飾り付けをしていた。

 (たつ)(あや)は折り紙で作ったであろうサンタとトナカイをぺたぺたと壁に貼り、(かおる)(あん)はツリーの前でどれを付けようかと相談しながら、うんうん唸っている。


「――あ、平太くんこんにちは。平太くんも飾り付け手伝ってくれる?」


 部屋に入ってきた平太に気付いて、初枝(はつえ)は声を掛けた。

 平太は「はい」と返事をしながら、テーブルの椅子にリュックを置き、マフラーとコートを椅子の背に掛けてからワイシャツの袖を(まく)る。


「っし、何手伝えばいいですか?」

「そうね、壁の上の方に折り紙で作った星を付けてくれるかしら。裏に両面テープ貼ってあるから、剥がしてから貼ってくれる?」


 初枝は「これね」と縦横五センチ程の箱を渡す。

 箱の中には赤や青、緑に(だいだい)、紫に桃色と、黄色以外にも沢山の星が折られていた。


「すご……、結構ありますね」

「そうなの、午前中に折ったのよ。ね? 皆――」


 初枝が声を掛けると、子どもたちは振り返って「うん!」と元気に頷く。

 それから平太のもとに集まると、それぞれ箱の中を指差しながら伝えた。


「あ、これ! あたしがおったの あかいのとピンク!」

「わたしは、きいろとオレンジ、おったよ」


 彩と杏が箱からそれぞれ星を取り出し、見て見てと掲げる。

 二人の星は綺麗に折れていて、平太は「おぉ」と感嘆の声をあげた。


「さすが、上手いな二人とも――」


 褒められた彩と杏は「ふふふ」と嬉しそうに笑う。

 その横から辰が「おれもおれもー!」と箱から青色の星を取り出して見せた。


「おれは、あおのほし おったぞ!」

「……ぼくはみどりの」


 薫も箱からそっと緑色の星を取り出して、平太に見せる。

 平太は二人の星を見て、正直に感想を口にした。


「おぉ……、辰のは少し(いびつ)だけど、努力したのがわかるな。薫のもちょっと(いびつ)だけど、ちゃんと星ってわかるぞ。二人とも頑張ったな」


 平太の言葉に、辰は「ニシシ」と笑って、薫も「へへ」と少し照れたように微笑む。


「あ、むさらきは せんせーがおったんだよ!」

「せんせーのほしが、いちばんきれいなの――」


 そう彩と杏が紫色の星を取り出して、自分のと並べて見せた。

 確かに、よく見ると紫色の星は折り合わせにズレがなく、きっちりしている。

 それと比べると、子どもたちが折った星は折り合わせが少しズレていたり、本当にわずかだが、内側の白が見えている所があった。


「……あ〜……、でも、気にして見ないとわからないし、ここまで出来れば上出来だろ」

「そうそう――私は折るの初めてじゃないし、皆は初めてやったんだもの。最初は上手く出来なくて当たり前よ」


 そう初枝も会話に加わって、子どもたちに笑顔を向ける。


「それに、ちゃんと最後まで作り上げたのが偉いわ。ありがとね」


 初枝の言葉に、子どもたちは照れながらも嬉しそうに微笑んだ。


「――さ、そろそろ飾り付けに戻りましょうか。届かない所があったら、平太くんや私に言ってね」

『はーい』


 初枝が軽く手を叩いて仕切り直すと、子どもたちは返事をしてから戻っていく。

 平太も「やるか」と箱を持って、辰と彩の邪魔にならないように気を付けながら、壁の上の方に皆が作った星を綺麗に貼っていく。

 一直線にならないように位置をずらしたり、角度をつけたりと、平太なりに飾り付けていった――。


「……よし、こんなもんだろ」


 星を全て飾り付けてから、平太は壁を俯瞰(ふかん)するように少し後ろに下がって全体を見渡す。

 同じ色が続かないように、一直線にもならないよう、星の向きを考えて付けた甲斐もあり、壁の上方はカラフルな星空になった。


「すごい、きれい!」

「平太もやるな!」


 サンタとトナカイの折り紙を貼り終わった彩と辰が、楽しそうに壁を見上げる。

 平太も二人が貼ったサンタとトナカイの折り紙を見て、ニッと笑ってみせた。


「二人も上手に貼れたな」

「ふふ、でしょ!」

「あたりまえだろ!」


 と二人も嬉しそうに笑ってみせる。

 平太は二人の頭を軽く撫でてから、ツリーを飾り付ける薫と杏の元に向かった。




「どうだ? 進んだか――?」


 平太が声を掛けると、薫と杏は振り向いて「うん」と答える。


「あとちょっとだよ」

「うえのほう、平太お兄ちゃんつけてくれる……?」


 杏がベルのオーナメントを平太に渡し「あそこ」と指を差す。

 杏が指差した先は、ツリーのてっぺん近くだった。

 杏と薫が背伸びをしてもギリギリ届かない所だ。

 平太はツリーの上の方にベルのオーナメントを当てながら「ここか?」と確認する。


「そう、そこ。つぎはこれ、つけて」

「そのつぎは、これね……!」


 他のオーナメントを持って「はやく」「まだ?」と両脇で待機しながら急かしてくる二人に、平太は「待て待て」と苦笑した。


「そんな早く付けらんないから――っと、はい、次は?」

「ぼくのやつ、杏ちゃんのやつの ひだりよこにつけて」

「はいはい」


 薫から赤いボールのオーナメントを受け取って、杏のベルのオーナメントの左横に付ける。


「……よし、次は?」

「わたしの。さっきの飾りの みぎにつけてほしい」

「おっけ――」


 杏と薫から渡されるオーナメントを、平太は黙々とツリーに付けていく。

 時折「そこじゃない」と言われたり「もっとみぎ」などと教えてもらいながら、平太は最後のオーナメントをツリーに付けた。


「よし。あとは? 一番上はやっぱり星か?」


 まだ何も付いていないツリーの一番上を見てから、平太は杏と薫に顔を向ける。


「ぎんのほしか、きんのほしか、まよってる……」

「どっちもいいんだよ」


 杏と薫は銀と金の星のオーナメントを交互に見て「う〜ん」と難しい顔をした。

 どちらもツリーに被せることができる仕様になっているが、ツリーは一つしかないので選ばないといけない……。

 そこに初枝が「どうしたの?」とやってくる。


「何か困り事?」

「あぁ、ツリーの一番上に星を飾るらしいんですけど、金と銀どっちを付けるか迷ってるらしくて……」


 と難しい顔をする薫と杏の代わりに平太が答えると、初枝は「ああ」と軽く手を合わせて微笑んだ。


「その星ね、分解できるのよ。ちょっと貸してみて――」


 杏から銀の星のオーナメントを受け取ると、初枝は「よいしょっ」と小さく声を出す。

 それと同時に、銀の星がパカッと綺麗に半分に割れた。


「ほら――、こうやってね、半分に出来るの。平太くんも金の星半分にしてくれる?」

「わかりました――薫、ちょっと貸してみ」


 「うん」と薫から金の星のオーナメントを受け取って、「よっ」と声を出しながら星に力を込める。

 すると、パカッと金の星も綺麗に半分になった。


「ありがとう。そしたら、半分にした星たちを合わせて……」


 と初枝は平太に銀の星の半分を渡し、平太から金の星の半分を貰って、星の端を合わせる。

 そして少し力を込めて両手で挟むと、カチッと音がして(はま)ったのがわかった。


「はい――、これで金と銀の星の完成よ」


 そう綺麗に一つになった金と銀の星を、杏と薫交互に見せながら、初枝は「ふふふ」と笑う。


「これでどっちも飾れるでしょ?」

「すごい……!」

「ありがとう せんせー」


 二人は目を輝かせて、嬉しそうに金と銀の星を見つめた。


「それじゃ、平太くんに付けてもらいましょうか、あとはよろしくね」


 「私は彩ちゃんと辰くんの所行ってるから」と付け足して、今度は窓の飾り付けをする彩と辰の方に初枝は視線を向ける。


「わかりました。任せてください――」


 金と銀の星を初枝から受け取って、平太はツリーの一番上に星を被せる。


「……これで完成、か?」


 平太がツリーから少し離れて確認すると、杏と薫はツリーの周りを歩きながら出来栄えを確認して、嬉しそうに頷いた。


「うん、これでかんせい!」

「カンペキ!」


 二人とも満足のいく飾り付けが出来たらしく、きらきらとした瞳でツリーを見つめている。


「二人ともよく頑張ったな――。じゃあこれで大体終わりか」


 そう平太が言って窓の方に視線を向けると、彩と辰が初枝にアドバイスを貰いながら、ジェルステッカーを窓に貼っていた。


「あとは まどだね」

「てつだいにいこ……!」


 薫と杏も二人が飾り付けをしているのに気付いて、窓の方に向かっていく。

 薫と杏に続いて、平太も三人のもとに向かった。



「ツリーの飾り付け終わりました」


 平太が声を掛けると、初枝が振り向いて微笑んだ。


「あ、ほんと? ありがとね。あとは窓の飾り付けだけなんだけど、任せて大丈夫?」


 楽しそうに窓にジェルステッカーを貼る子どもたちに視線を向けてから、初枝は平太に視線を戻す。


「ちょっと職員室に用事があって、そんな遅くはならないと思うんだけど……」

「大丈夫ですよ。任せてください――」


 軽く腕を曲げて見せる平太に、初枝はふふっと小さく笑うと「頼もしいわ。じゃあよろしくね」と保育ルームを出て行った。



「サンタさんがまよわないように めじるしだな」

「これでちゃんと まよわないでこれるね!」


 辰と彩がぺたぺたと、星型のジェルステッカーを窓に貼る。


「あっちのまどにもはらないと」

「そうだね……!」


 薫と杏はジェルステッカーが貼られていない窓に気付いて、ハートやクリスマス仕様のジェルステッカーを持って移動し、窓にぺたぺたと貼っていく。


 窓から差し込む夕陽に照らされながら、楽しそうにジェルステッカーを貼る子どもたちを、平太は後ろから見守っていた。

 少しすると、辰が後ろで何もしてない平太に気付いて「あー!」と不満気な声を上げた。


「なに平太サボってんだよ〜、サンタさんこないぞ〜」

「ほんとだ! 平太お兄ちゃんサボっちゃダメだよー」


 彩も振り向いて「もー」と頬を膨らませる。

 薫と杏も「なになに?」と平太の方へ振り向いて、首を(かし)げた。


「俺はサボってんじゃなくて、見守ってんだよ」

「ずるい」

「平太お兄ちゃんも ちゃんとやって――」


 薫と杏に言われ、平太は「はいはい」と返事をしながら薫と杏のもとに向かう。

 薫と杏の間で、渡されたジェルステッカーを窓に貼りながら、明日本番か……と小さく呟く平太だった――







戻ってきた初枝。

平太「終わりました」

初枝「お疲れさま――明日、楽しみね(窓を見て微笑み)」

平太「そうですね(ふっと笑って)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ