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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第四章

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96/98

96.出発前

「はい。これが冷感クリームとメセグリンだよ」


 みんなの前で作ったアイテムを出す。すると、家族は物珍しそうにアイテムを見た。


「ほう、これが……」

「お疲れ様、ルイ」

「一日でこんなに作り出すなんて、本当にルイは凄いわ」


 褒められて、とてもいい気分だ。


「ちょっと、使ってみてよ。これは凄いよ」

「じゃあ、俺はメセグリンの試飲だな」

「僕は冷感クリームを試してみるね」

「私も冷感クリームで」


 ロザンお父様がコップを手にすると、その中に少しだけメセグリンを入れる。その横ではファルスお兄様とアマリアお姉様が冷感クリームを試す。


「ふむ、良い匂いだ……。甘さの中に刺激がある。これは、かなり個性的なお酒だな」


 そう言って、ロザンお父様がメセグリンを飲む。すると、驚いたように目を見開いた。


「……これは、面白いな」


 ロザンお父様は、ゆっくりと目を細めた。口の中で味を確かめるように、もう一度小さく含む。


「最初に来るのは蜂蜜の甘さだ。だが、ただ甘いだけじゃない。発酵したことで、果実酒のような香りと酸味が生まれている」


 グラスを軽く揺らしながら、続ける。


「その後から、じわりと辛みが来るな。この乾燥木……ペーラーンズの根だったか? それの刺激が舌に残る」

「うん! そこが特徴なんだよ!」


 私が頷くと、ロザンお父様は感心したように息を漏らした。


「蜂蜜酒に近いが、かなり別物だな。甘味だけで終わらない。喉を通った後に、身体が少し熱くなる感覚がある」


 ロザンお父様はさらに一口飲み、今度は真剣な顔で考え込んだ。


「香りも良い。蜂蜜由来の柔らかな香りに、木の燻したような風味が混ざっている。後味にほんの少し苦みがあるのも、酒としてまとまりが出ているな」

「苦くない?」

「いや、この程度ならむしろ良い。甘すぎる酒は飽きやすいからな。この刺激と苦みのお陰で、何杯でも飲めそうだ」


 そう言って、ロザンお父様はまたグラスへ口を付けた。気に入ってくれたみたいだ。


「どう? 気に入ってくれそう?」


 私が尋ねると、ロザンお父様は即座に頷いた。


「これなら、問題ない。酒好きの奴も気に入ってくれるだろう」


 ロザンお父様の合格が貰えた。メセグリンの方はこれで大丈夫だろう。残りは冷感クリームなんだけど――。


「これは凄い……。クリームを塗ったところが冷えていく」


 ファルスお兄様は、自分の腕を何度も触りながら驚いた声を上げた。


「凄く冷たいわ! これなら、暑い乾燥地帯に行っても凌げそう!」


 アマリアお姉様も感心したように目を輝かせる。二人の反応を見て、私は期待を込めて尋ねた。


「どう? 問題なさそう?」


 すると、ファルスお兄様はすぐに頷く。


「ああ、問題ない。これなら暑い中でも、かなり活動しやすくなると思う」

「ええ。全部を防げるわけじゃないでしょうけど、熱気による体力の消耗はかなり抑えられそうね」


 アマリアお姉様も真面目な顔で答えた。


「本当!? じゃあ、サンドリーナ乾燥地帯に行っても問題ない?」


 その言葉に、三人は一瞬だけ顔を見合わせた。だけど、ロザンお父様は静かに頷く。


「準備を整えれば、以前よりはずっと安全に探索できるだろうな」

「これがあるだけで、かなり違うと思うよ」


 ファルスお兄様も同意する。アマリアお姉様も小さく頷いた。


「確かに効果は高いわ。熱対策としては十分優秀だと思う」

「やったぁ!」


 思わず飛び跳ねる。これなら、サンドリーナ乾燥地帯へ行ける。だが、喜ぶ私に、アマリアお姉様がじっと視線を向けてきた。


「でも、ルイ。だからって油断しちゃ駄目よ?」

「え?」

「乾燥地帯は本当に危険なんだから。熱だけじゃないわ。水不足、砂嵐、魔物。ちゃんと準備して、困ることがないように。単独行動なんてもってのほかよ? あと、無理をしたら――」


 アマリアお姉様のお説教が始まりそうになる。だけど私は、もう別のことで頭がいっぱいだった。


「イザベルお母様にも報告しなくっちゃ!」

「あっ、こら、ルイ! まだ話は――」


 私はそのまま勢いよく部屋を飛び出した。後ろからアマリアお姉様の声が聞こえてきたけれど、今の私は止まれない。だって、新しい場所へ行けるかもしれないのだから。


 それに、イザベルお母様の悪いところを一つ治せるかもしれない。


「イザベルお母様、聞いて! サンドリーナ乾燥地帯に行けることになったよ!」


 扉を開けて声を上げると、寝ていたイザベルお母様がビックリした顔を浮かべた。


「そう……約束した物を作ることが出来たのね」

「うん! もう、何も問題ないって!」

「もう、問題なくないわけないでしょ」


 傍によると、コツンと頭を突かれた。


「自然の驚異はあるし、魔物だって生息している。過酷な地方よ。そんな所にルイとアマリアを行かせるなんて、気が気じゃなくなるわ」


 心配そうに目を細めて、頭を撫でてくる。


「素材を取るよりも、まずは自分の体の心配をしなさい。無事に帰ってくることが、何よりも嬉しいことだからね」


 その優しさに心が穏やかになる。心配する気持ちに包まれると、行かない方がみんなの為になるかもという考えも浮かんでくる。


 だけど、ここはグッと堪える。


「自分の事も大切にする。その上で、お母様の薬となる素材を取ってくるから。だから、待っていて。すぐに良くするから」


 イザベルお母様の手をギュッと握り、強い目を向けた。心配そうな顔をしていたが、すぐにやわらかく微笑んでくれた。


「……分かったわ。ルイに任せるわ」

「うん、ありがとう」


 その言葉があれば、何倍も力が出せる。絶対に素材を入手して、無事に帰ってくるんだから!

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