95.冷感クリームとメセグリン
「さて、まずは何をしようかな?」
集めてきた素材を見て、始めにすることを考える。
「……うん。ハチの巣を蜜蝋と蜂蜜に分ける作業から始めよう。何か、便利な魔法はないかな?」
画面を開き、錬金術の魔法の欄を確認する。
「あっ、これなんていいんじゃない。【分離】っていう魔法を使えば、一つの素材を分けることが出来る」
良い魔法が見つかってよかった。【容器召喚】で必要な容器を出し、それからハチの巣を目の前に置き、手をかざす。意識を集中させると、魔法を発動させた。
「【分離】」
すると、ハチの巣が動き出した。その中から蜜蝋と蜂蜜が出てきて、それぞれの容器に入っていく。しっかりと最後まで魔法を発動させると、綺麗に分離することが出来た。
「おぉ、この魔法は便利! 簡単に分離が出来ちゃった」
これは手間が省ける。やっぱり、錬金術の魔法は凄い。
「じゃあ、先に作るのは冷感クリーム。作り方だって、ちゃんと考えてきたんだから」
レシピ帳を開き、そこに書いてあるメモを見る。
「まずは、冷晶を【粉砕】する」
容器に入れた冷晶を【粉砕】の魔法で粉々にする。これで冷晶の下準備は終わりだ。
「後は香りづけのラベンダーだね。乾燥させた方が香りが強くなるから、その処理もする」
水分が抜けることで香り成分が相対的に凝縮される。生のラベンダーはみずみずしくて爽やかな香りだけど、少し軽くて拡散しやすい。一方、乾燥させると甘みや深みが出て、より濃く、持続する香りになるからだ。
目の前にラベンダーを用意すると、手をかざす。
「【乾燥】」
【乾燥】の魔法をかけると、ラベンダーから水分が抜けていく。だけど、乾燥しすぎもダメ。それを見極めるためにも鑑定で品質を確認する。
【品質:100】
【品質:100】
【品質:100】
【品質:99】
「ここだ!」
品質が下がったところで、すかさず【乾燥】の魔法を止めた。これで出来る限りの高品質な乾燥したラベンダーが出来た。
「じゃあ、蜜蝋、粉砕した冷晶、乾燥させたラベンダーを容器に入れて。最後は【調合】!」
容器に材料を入れて、混ぜ棒でかき混ぜながら【調合】を施す。すると、三つの素材が溶けあいながら混ざり合っていく。
抵抗するような感触はない。とてもスムーズに混ざり合っていき、その感触が止まった。
「出来たかな?」
【冷感クリーム】
・肌に塗ると、温度が下がる
・ラベンダー匂い付き
「よっし、冷感クリームの完成!」
事前にちゃんと考えておいたお陰で、失敗もなく調合が完成した。
「ふふっ、ちょっとは錬金術を上手く使えるようになったんじゃない」
今までの経験のお陰で、何が最適なのか分かってきた。だから、途中で躓くことはない。
「この調子でメセグリンも完成させよう」
そうして、目の前に素材を並べる。
「この中で処理が必要なのは……アレアの花、ぺーラーンズの根かな」
まずは、アレアの花を発酵させて酵母を作る必要がある。ペーラーンズの根は乾燥させると香りが強くなると書いてあったから乾燥させる。
「うん、まずはアレアの花からだ」
容器にアレアの花と水を入れる。手をかざすと、【発酵】の魔法を発動させた。すると、少しずつ水が白く濁ってきた。そのまま【発酵】を発動させていくと、今度は泡が立ってきた。発酵している証拠だ。
そのまま発動させていき、鑑定で品質を確認する。
【品質:89】
【品質:94】
【品質:96】
【品質:96】
「品質100はいかなかったか。でも、これで【発酵】はおしまい。やりすぎると悪くなっちゃうしね。ちゃんと、酵母になっているかな?」
【天然酵母】
・アレアの花で作られた天然の酵母
「うん、出来てる。じゃあ、次はペーラーンズの根の処理だね」
目の前にペーラーンズの根を置くと、【乾燥】の魔法を発動させる。すると、根から水分が抜けて縮まっていくのが分かった。鑑定して品質を確かめよう。
【品質:100】
【品質:100】
【品質:100】
「へー、これは品質が変わらないんだ。簡単でいいね。じゃあ、この辺で終わり。香りはどうかな?」
試しに乾燥させたペーラーンズの根を嗅いでみる。すると、スパイシーな匂いが強くなっているのが分かった。
「うん、これならお酒に混ぜると良いアクセントになりそう。さて、じゃあ次は本番。お酒造りだね」
壺に水、蜂蜜、天然酵母、ペーラーンズの根を入れる。手をかざし、【発酵】の魔法を発動させた。
しばらくは何も反応がなかった。最初の変化は匂いだった。匂いが香ってきて、それがだんだんと強くなってきている。そして、シュワシュワとした音も聞こえてきた。
その音が段々と強くなっていくと、アルコールの独特の匂いがしてきた。確か、この時に味をつける素材を入れっぱなしだと苦みや渋みになるはずだ。だからここで、ペーラーンズの根を取り除く。
そのまま【発酵】を続けると、音も匂いも落ち着いてきた。ここで、鑑定で様子を見る。
【品質:78】
【品質:80】
【品質:84】
「おっ、ゆっくり品質が上がってる。じゃあ、そろそろ仕上がるかな?」
【品質:94】
【品質:96】
【品質:96】
「品質が上がらなくなった。ここが最大値か」
それを確認すると【発酵】の魔法を止めた。匂いを嗅いでみると、角の取れたまろやかな匂いがしてくる。これは完全に熟成されたお酒の匂いだ。
試しに鑑定してみると――。
【メセグリン】
・蜂蜜を主原料に発酵させた酒に、香りや風味づけとして植物素材を加えたもの
「やった! ちゃんと完成している!」
失敗せずに成功した! やっぱり、ちゃんと素材の事を知っていると、スムーズにアイテムを作ることが出来た。
「これで、サンドリーナ乾燥地帯に行ける」
目的のアイテムを作れた。これを持って、いざサンドリーナ乾燥地帯へ!
新連載一つ、投稿させていただきました。
「スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~」
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