93.素材採取一日目
「ルイー! こっち、こっち!」
「あそこ見て! ほら!」
「探してたのってあれでしょ?」
子供たちに手を引かれて草原を行くと、紫色の絨毯が広がっていた。匂いを嗅ぐと、花の匂いが漂ってくる。
近くに寄って、一応鑑定をしてみる。
【ラベンダー】
・薄紫色の小さな花を穂のように咲かせる植物
・甘く落ち着いた香りを持ち、心を鎮める効果がある
「うん、探してたのはこの花だよ。本当にありがとう」
そういうと、子供たちは嬉しそうにはしゃいで見せた。まったく、この村の子供たちは素材採取に役に立ちすぎ。何かお返しが出来ればいいんだけど――。
「ルイとまた探検出来て、楽しい! 儀式の後のルイは忙しくてあまり遊べてないから」
「やっぱり、大人は違うな! だって、職業があるんだもんな!」
「僕たちも早く職業分からないかなー」
確かに、そうかも。職業が分かると遊べなくなるからな。ということは、普段いけない場所に連れていけばお返しになる?
「じゃあ、明日は川の上流に一緒に行く? また、素材採取なんだけど……」
「行く! 絶対楽しそうじゃん!」
「だったら、お弁当持っていこうよ! みんなでピクニック!」
「それ、いいな! すげー、楽しそう!」
素材採取だけど、子供たちは喜んでくれている。普段いけない場所にいけるとあって、子供たちはとても楽しそうだ。
「じゃあ、明日は私の屋敷の前に集合ね。他に行きたい子がいたら、声をかけていて」
「分かった! 声かけるよ!」
「ついでに魔物駆除もしようぜ! お小遣いになるし!」
「何それ! 冒険じゃん! めちゃくちゃ、楽しそう!」
こうなったら、小さな冒険だ。子供たちは楽しそうに話していて、こちらも楽しくなってくる。
「じゃあ、私は今度は森に行くから。また、明日」
「森だったら、ついていくけど?」
「ハチと戦うことになるから、ちょっと厳しいかな。みんなを守れる自信はないよ」
「大人ってすげー! ハチと戦うの!?」
「うん、ルイについていくのはやめておこう。だけど、明日はついていくからねー!」
たくさんのハチがいるところに、たくさんの子供は連れていけれない。それを伝えると子供たちは明日を楽しみに去っていった。
ラベンダーは見つかったから、今度は森に行ってアレアの花とハチの巣を見つけてこよう。
◇
「えーっと、前来た時はこっちにあったけど……」
記憶を頼りに前に来た場所にやって来た。辺りを見渡しながら進んでいると、見たことのある花を見つけた。アレアの花だ。
「良かった、あった。……あっ、気をつけないと」
そうだ、前はハチがいて危険だった。あの時はアマリアお姉様がいてくれたけど、今はいないから気をつけないと。
そっと近づいてみると、羽音が聞こえてきた。目を凝らしてみると、三匹のハチが飛んでいた。
「まずハチを離さなきゃね」
指輪に魔力を通し、風魔法を発動させる。強い風を起こすと飛んでいたハチは吹き飛ばされた。
その隙にアレアの花を回収する。これで、無事に二つ目の素材を入手した。
その時、吹き飛ばしたハチが戻ってきた。アレアの花があったところを旋回している。
「そうだ! この子たちにハチの巣まで連れて行ってもらおう」
きっと、このハチたちは巣に帰るはずだ。その後を追えば、探さなくてもハチの巣が
見つかる。
ハチたちを観察すると、ふらっとその場を離れてとんで行った。私はその後を追っていく。
森の中を駆けていると、たくさんの羽音が聞こえてきた。そちらを見ると、木に大きなハチの巣が出来ているのを見つけた。
「やった! ハチの巣だ!」
ハチのお陰ですぐにハチの巣が見つかった。これであとは採取するなんだけど……。
「まず、ハチを退かさなくちゃね」
何百もいるハチを退かさないと、ハチの巣は取れない。でも、手段は考えてきた。
「風よ、私を守って」
指輪に魔力を通し、風魔法を発動させる。自分の周りに渦を巻くように風の壁を作った。これで、ハチの攻撃から身を守れる。
そのまま近づいて行くと、ハチがこちらに気づいた。次々と飛び立ち、向かってくる。
だが、風に阻まれてみんな飛ばされていってしまう。その間にハチの巣の側まで寄った。それから、風魔法で巣からハチを飛ばし、【切断】でハチの巣の三分の二を切り取った。
全部取ってしまうとハチが弱ってしまうし、また素材を取りたい時になくなってしまうのは大変だから残しておく。
【素材保管】にハチの巣を入れると、その場を離れる。すると、私の周りにいたハチは巣へと戻っていく。
「ふう……緊張した。これでまた、巣を大きくしてくれたら嬉しいな。そしたら、また採取に来れるし」
ハチミツが素材になるんだったら、今後も採取出来るようにした方がいい。取りつくさないように気を付けなければ。
「さて、流石にこれだけじゃ心もとないから、他のハチの巣も取りに行こう」
今日はハチの巣採取を頑張ろう。アリアの花を探しながら、森を歩き出した。




