表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/99

57.薬師協会専属の冒険者(1)

 魔物を倒さなければいけない。


 でも、私が一人で倒せるのは、せいぜいゴブリンくらいまでだ。それ以上となると、正直かなり怖い。運が悪ければ、簡単に命を落とす。


 いつも私を守ってくれて、素材採取にも付き合ってくれたアマリアお姉様は、今は領地にいる。つまり、今の私のそばには頼れる強い人がいない。


 協力してくれる誰かが必要だ。そう分かっているのに、肝心の「当て」がない。


 私は小さく息を吐いた。


「うーん……どうしよう」


 考えられるのは、冒険者ギルドに依頼すること。でも、そこまで思いついて、すぐに現実が頭に浮かぶ。


 ――お金。


 冒険者を雇うには、当然報酬が必要だ。しかも、魔物討伐となれば、それなりの実力者を雇わなければならない。


 うちは、貧乏だ。胸を張って言えることじゃないけど、事実だ。冒険者を何日も雇えるほどじゃない。


 良い人を雇おうとすれば、お金が足りない。お金が少ない依頼なら、腕の立たない人しか来ないかもしれない。


 それで、もし途中で何かあったら?


「……それじゃ、本末転倒だよね」


 自分の身を守るために雇った人が原因で、かえって危険に晒されるなんて、笑えない。


 私は思わず、頭を抱えた。


 どうしてこう、上手くいかないんだろう。何か……何か、突破口はないの?


 ぐるぐると考えていると、不意に、ある光景が脳裏をよぎった。錬金術の実演をしていた、あの日。あの冒険者。


 クロヒョウの姿をした獣人で、静かで、でも圧倒的に強そうだった。


 ……あの人。あの場にいたのだから、薬師協会に関係があると思う。それに、私の錬金術にも興味を示してくれた。


 もし、あの人にお願いできたら――。


 薬師協会経由なら、普通に冒険者を雇うより、報酬も抑えられるかもしれない。


「……うん」


 少しだけ、胸の奥に光が灯った気がした。問題は、その人と直接の繋がりがないこと。でも――。


 スウィンなら、知ってるかも。一人で悩んでいるより、相談した方がいい。私は頭を上げ、気持ちを切り替える。


 よし。まずは、スウィンに話してみよう。


 ◇


「えっ? クロヒョウの冒険者に、協力を依頼したい?」


 スウィンのところへ戻るなり、私は思い切ってお願いを切り出した。最初こそ目を丸くしていたけれど、事情を順を追って説明していくうちに、スウィンの表情は次第に落ち着いていく。


「なるほどね。魔物の素材を使って、風邪薬を改良する……ってことか。それなら確かに、魔物と戦える人は必要だ」

「うん。いつも手伝ってくれていたアマリアお姉様も今はいないし、王都で伝手のない私には……あの人しか思いつかなくて」

「知らない土地なら、信頼できる人の伝手を使うのが一番だよ」


 そう言って、スウィンは納得したように頷いた。


「それでね……できたら、スウィンから紹介してもらえないかな?」

「紹介すること自体は構わないよ。なんて言ったって、彼は薬師協会の専属冒険者だから」

「えっ、そうなの!?」


 思わず声が上がった。


 冒険者が、薬師協会の専属。それって、かなり珍しいんじゃないだろうか。


 ということは、薬師協会に関わる私の依頼なら、話を聞いてもらえる可能性も……?


 期待が膨らみかけた、その時だった。スウィンの表情が、ふっと曇る。


「ただし……彼は高ランクの冒険者で、腕は確かだ。魔物討伐を任せる相手としては、これ以上ない」

「うん……」

「でもね、彼なりの基準があるみたいでさ。気に入った相手の依頼じゃないと、絶対に受けないんだ」

「……え?」


 嫌な予感が、胸をよぎる。


「彼が受けてきた依頼は、どれも名の知れた薬師のものばかり。それ以外は、どんな内容でも断ってる」

「そんな……」


 思わず、言葉が詰まった。つまり、新任の私は、その基準に届いていない可能性が高い、ということ。


 胸に浮かんだ期待は、すっと冷や水をかけられたように静まっていった。


 自然と、あの獣人の姿が脳裏に浮かんだ。


 ポーションの効果を、疑いもせずに確かめてくれたこと。


 普通なら、皮膚の表面を少し傷つけるだけで十分だったはずなのに、彼は迷いなく、自らの手の甲を貫通させてまで証明してくれた。


 あれは、ただの好奇心だったのだろうか。それとも、錬金術そのものに何かを感じ取ってくれたのだろうか。


 私の錬金術に、可能性を見出してくれたのではないだろうか。


 だとしたら、可能性はゼロじゃない。


「……それでも、彼に依頼したい」


 私は顔を上げ、まっすぐにスウィンを見る。


「彼は、錬金術に期待してくれているんだと思う。だから……話を聞いてくれる可能性はある」


 不安が消えたわけじゃない。断られるかもしれないし、冷たくあしらわれるかもしれない。


 それでも。そう信じたい気持ちの方が、今は強かった。


 きっと、大丈夫だ。根拠は薄くても、私は自分の錬金術を信じると、そう決めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載!

スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~

旧作

転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!

転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~

追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する

転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした

スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜

ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる

元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~

異世界喫茶で再出発ライフ

ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する

推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする

過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった


この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

コミュ障クラフターの私、引き継いだ能力が異世界では規格外すぎて無自覚に無双してしまう件~地味に暮らしたいだけなのに、なぜか注目されて怖いんですが~

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ