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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第一章

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32.レシピ帳

「うーん……」


 私は生活圏素材辞典を机の上に広げ、指でページをなぞりながら思考を巡らせる。


 主要の成分を決め、そこに補助となる成分を加える。そして【合成】を行うことで、単体では存在しなかった新しい成分が生まれる。それが、今まで分かっている【合成】の基礎だ。


 これまでの成功例を思い返してみても、この法則は一貫している。主要成分が軸となり、補助成分が性質を整え、方向性を与える。だからこそ、結果は安定していて、予測もしやすい。


 けれど――。私はページをめくり、いくつかの素材名を見比べた。


「本当に、それだけなのかな」


 主要成分は一つでなければならない、という決まりはない。補助成分も、必ず一つである必要はないはずだ。ならば、主要成分を二つ組み合わせ、それを別の成分で補佐することも理論上は可能なはず。


 あるいは、主要成分を一つ、補助成分を二つ。それぞれが別の役割を持ち、相互に影響し合うことで、より複雑で、より高度な結果が生まれるかもしれない。


 頭の中で、成分同士が線で結ばれていく。今までは一本だった軸が、枝分かれし、網目のように広がっていく感覚。


「組み合わせが増えれば、その分、可能性も増える……」


 もちろん、その分だけ失敗の危険も高まる。成分同士が反発し合えば、効果が相殺されたり、最悪の場合は暴走する可能性すらある。


 それでも。私はページの端に、小さく図を書き足した。


 主要、補助、補助。主要、主要、補助。


 今まで触れてこなかった組み合わせが、そこには確かに存在している。


「【合成】は、まだ基礎しか触れていない段階なんだ」


 そう思うと、胸の奥が静かに高鳴った。この先には、まだ誰も見たことのない結果が眠っている。


 私は辞典を閉じ、次に試す組み合わせを頭の中でいくつも描き始めていた。


「私がちゃんと素材の効果を理解した上で、その生かす道を探す。とにかく、これは数をこなさないとダメだ。経験がきっと私の錬金術の可能性を高めてくれる」


 とにかく素材への理解力が必要だ。素材のことをちゃんと理解して、予想し、その通りの結果を出せるようにならないと。


「そのためにも、この辞典を読み込んで、素材の理解度を高めていかないと」


 まだまだ、知識が足りない。とにかく、この生活圏素材辞典を完璧に頭に叩き込むくらいには理解度を上げないと。


 集中して読み込んでいた時、扉がノックされた。


「はーい」

「ルイ様、夕食の時間ですよ」

「あっ、今行く!」


 レジーナが呼びに来てくれた。私は一旦本を閉じると、部屋を出ていった。


 ◇


「今日は食堂に来るのが遅かったな。何かやっていたのか?」

「うん。新しい錬金術の魔法について考えていたら、夢中になっていたの」

「ふふっ、ルイはもう立派な錬金術師ね。お父様とお兄様の体を良くしたんだから、もう一人前じゃない?」

「まだ一人前じゃないよ。ようやく、錬金術がなんなのか理解を始めたばかりなんだから」


 夕食を取りながら、今日も会話に花が咲く。今日の話題は私が食堂に来るのが遅れたことだ。いつもなら、もっと早く来るのに、今日は珍しく最後だった。


「今は何を考えていたんだい?」

「素材の成分をどうやって合わせれば、効果的な成分が出来るか考えていたの」

「そんなに難しいことを考えていたのかい? ルイはもう立派な大人だね」

「そ、そうかな?」


 考えていたことを伝えると、ファルスお兄様が驚いた声を上げた。これくらい普通だと思ったんだけど、結構大層な事をしていたらしい。


「でも、組み合わせが無限にあるから、結構大変なんだよね」

「素材の数だけ組み合わせがあるからな。頭を沢山使いそうだな」

「もし、頭が足りなくなったら私の頭を使ってもいいからね!」

「いや、アマリアお姉様……それは……」


 流石にアマリアお姉様の頭を使おうとは思わない。だから、その気持ちだけ受け取っておく。


「でも、頭だけでやろうとすると大変じゃない?」

「うん、そうなんだよね。今までの記録もしておきたいし……」

「実はね……。こうなるかなっと思って、取り寄せていたものがあるんだ」

「取り寄せ?」


 ファルスお兄様の言葉に首を傾げる。すると、ファルスお兄様は机に置いてあった包みを私に渡してきた。


「開けてごらん」


 なんだか、この光景は見覚えがある。ドキドキしながら包みを開けてみると、そこにはしっかりとした表紙の本があった。


「……本?」

「めくってごらん」


 言われた通りに捲ってみると、そこには真っ白のページが続いてあった。


「もしかして、これ!」

「うん。これから色んなものを作ると思って、レシピ帳なんていうものがあれば、ルイの役に立つかなって思ったんだ」

「丁度、こういうのが欲しかったところだよ! ファルスお兄様ありがとう!」


 頭の中で記憶するのも限界がある。だから、書き残した方がいざという時に使える。そのためのレシピ帳だ。


 ここに自分の考えを書き写して、今後のための記録を詰んでいく。そうすれば、経験が生かされて、自分の力になって戻ってくる。


「このレシピ帳に今までの考えをまとめて書いておけば、役に立つと思うの」

「そうだろうと思ってね、取り寄せておいたんだ。これから、このレシピ帳にルイの考えを書いておいて、役に立てて欲しい」

「うん、絶対に役立つよ!」


 流石はファルスお兄様だ。私の考えの一歩先を行ってくれるから、安心して頼れる。


「これから、沢山調合して、沢山経験を積むよ。そして、みんなの役に立つものを作るんだ」

「その調子だぞ。ルイは自身の力で道を切り開いていくんだ」

「何かあった時は私たちを頼ってね。家族なんだから、遠慮はしちゃダメよ」

「これからのルイの活躍、楽しみにしているよ」


 温かい家族の言葉が身に染みる。家族が私を思って用意してくれた本、そしてレシピ帳。これがあれば、どんなことも頑張れそうだ。


「見てて! 今にアッと驚く物を作って見せるから!」


 家族の思いに答えるためにも、錬金術を極めていこう!

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― 新着の感想 ―
 ここまででも短編ストーリーとしては終わりにしていい感じの切り方ですね。  でもオカンの薬は痛み止めだけだから、まだまだなんですよねぇ。
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