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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第一章

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31.筋肉増強薬の効果

「ファルスお兄様!」


 扉を開けて執務室に飛び込むと、そこではロザンお父様とファルスお兄様が並んで書類に目を通していた。


「おや、ルイじゃないか。どうしたんだい?」


 顔を上げたファルスお兄様は、いつもの穏やかな笑顔を浮かべて小首を傾げる。


「薬が出来たの! だから、使ってほしくて!」


 私はそう言って、勢いのままファルスお兄様の机に身を乗り出した。その様子に、ファルスお兄様は一瞬きょとんとしたあと、ぱっと目を見開く。


「薬って……もしかして、僕の体を強くするって言っていた、あの薬?」

「うん、うん! 筋肉増強薬っていうの。筋肉の働きを底上げして、さらに魔力でそれを補佐する仕組みなんだよ」


 少しだけ胸を張って説明すると、ファルスお兄様は感心したように息を漏らした。


「へぇ……それはまた、ずいぶん本格的だね。そんなものを作れるなんて、さすがルイだ」

「えへへ……」

「ありがとう。僕のために、こんな薬を作ってくれたんだね」


 そう言って、ファルスお兄様は本当に嬉しそうに微笑み、そっと私の頭を撫でてくれた。


「ほう、次はファルスの薬を作ったのか。ルイは錬金術をちゃんと使っているな、偉いぞ」

「もちろんだよ! だって、色々と作れる力があるんだから、それを役立てたいの! それで、ファルスお兄様が外に行く用事はある?」

「もちろん、あるぞ。この書類を確認したら、外に出てもらう予定だったんだ」

「そうなの!? だったら、私の薬を使って! 絶対に楽になるはずだから!」


 私がそう訴えると、ファルスお兄様は強く頷いてくれた。


「ルイが作ってくれた薬だ。ありがたく使わせてもらうよ」

「やった!」

「そのためにも、書類仕事を終わらせないとね。ちょっと待っててね」


 そう言って、ファルスお兄様は書類に目を走らせた。私は執務室のソファーに座り、仕事が終わるのを待った。


 ◇


「ルイ、お待たせ。じゃあ、行こうか」

「うん! はい、これ飲んでね」


 屋敷の外に出ると、私はすぐに筋肉増強薬を手渡した。


「へー、これが体を強くしてくれる薬か。匂いは……普通だね。さて、味はどうかな?」

「味にこだわるのを忘れていた!」

「そうなの? じゃあ、覚悟して飲まないとね」

「もう、ファルスお兄様ったら!」


 からかってきたファルスお兄様はくすくすと笑った。しばらく、瓶に入った薬を見つめると、口に付けて一気に飲み干した。


「どう? ファルスお兄様?」

「味は色んなものが混じった感じだね」

「そうじゃなくて、体の調子はどう?」

「うーん……。動いてみないと分からないかな」

「じゃあ、歩いてみようよ」


 私が手を引っ張ると、ようやく歩き出してくれた。


「最初は全然苦じゃないね。疲れるのは、しばらく歩いてから」

「あと百メートルくらい?」

「流石にそれでへこたれるほど、体は弱くないよ」


 話しながら歩いていく。まだ動き始めたばかりだから、薬が効いているのか分からない。


「あっ、でも……魔力の巡りは良くなったかも。体中に魔力が巡っているのが分かるよ」

「本当? 筋肉の補助をしてくれる感じになってる?」

「……うん。そんな感じだ。だから、いつもよりも体が軽い」


 よし、ちゃんと薬の効果が現れている。このまま体を動かせば、きっと疲れ知らずの体になると思う。


「どんどん、動いてみようよ! さっ、早く視察に行こう!」

「ちょっ、ルイ!」


 ファルスお兄様の手を引っ張ると、足早に道を歩き出す。


 ◇


 それから私たちは、村の現状を把握するため、いくつもの農家を訪ねて回った。農作物の生育状況、魔物による被害の有無、収穫や人手の問題。小さな違和感も見逃さないよう、丁寧に歩き、確かめていく。


 その間、私は何度もファルスお兄様の様子に目を向けていた。歩調は乱れず、足取りも軽い。立ち止まって書き留め、再び歩き出す動作にも、引っ掛かりがまるでなかった。


 いつもなら、ここまで動けば必ず一度は休憩を挟む。呼吸を整え、体を労わる時間が必要だったはずだ。それなのに今日は、止まる気配すらない。


 薬が、効いている。それも、想定していた以上に。


 筋肉そのものの出力が底上げされ、そこへ魔力が自然に寄り添うように働いている。その結果、動作一つ一つに無駄がなく、消耗が極端に抑えられているのが分かる。


 これは、はっきりとした成功だ。ファルスお兄様が問題なく動けている。その事実だけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。


 視察を終え、屋敷へ戻る段階になってから、私は改めて様子をうかがった。


「体の調子はどう?」

「……驚いているよ」


 返ってきた声は、少し弾んでいた。


「疲労が溜まっていない。息も乱れていない。むしろ、体が自然に前へ出る感じがするんだ」

「辛さは? 肺は大丈夫?」

「問題ない。肺はいつも通りだね。……でもね」


 ファルスお兄様は、自分の手を軽く握りしめてから、ゆっくりと開いた。


「今まで、無意識に制限をかけて動いていたんだと分かったよ。無理をしないように、壊れないようにって。でも今は、その枷が外れたみたいだ」

「……」

「こんなに動ける体だったんだって、初めて知った」


 その言葉を聞いた瞬間、私は確信した。この薬は、ただ体を強くするだけのものじゃない。可能性そのものを、正しく引き出す薬だ。


 胸の奥で、小さく、でも確かな達成感が芽生えていた。


「こんなに動いていて、まだ動ける。自分の体に感動しているところだよ。ルイの薬は僕の可能性を広めてくれた」


 そう言って、ファルスお兄様は私の頭を撫でてくれた。


「ルイのお陰で、僕は動ける。こんなに嬉しいことはないよ。本当にありがとう」


 そう言って、笑った。その表情は心の底から喜んでくれているようで、私の胸にいっぱいの嬉しさが広がった。


「ファルスお兄様の役に立って本当に良かった。これから、もっと良い薬を作って、病気を治すね」

「期待しているよ、ルイ」


 錬金術は色んな可能性を秘めている。それを生かすも殺すも私次第。これからも錬金術を使って、笑顔を作っていきたい。

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