113.マジックバットの素材
貰ったリストを見て、町中を歩いて素材屋を探す。
「リストの上から順番に大店なんだね。大きな店なら良い素材が売っているかな?」
王都の大店だ。きっと、欲しいものがすべて揃っているに違いない。採取に行くよりも簡単に素材が手に入るから、時間がかからなくていい。
薬を売ったお金が手に入ったことだし、買える範囲で素材を買った方がいいのでは?
そんなことを考えていると、リストに書いてあった大店へとたどり着いた。中に入ると、棚という棚に素材がぎっしりと並べられていた。
流石、大店。これならば、マジックバットの素材が手に入るかもしれない。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「あの、マジックバットの素材って売ってますか?」
「はい、ございますよ。こちらでございます」
まさか、もう見つかったの? 驚きながら誘導されると、一つの棚にたどり着いた。そこには、マジックバットの素材と思われる、牙や翼が並べられていた。
「こちらになります」
「ありがとうございます。少し見せていただいてもいいですか?」
「もちろんです。ごゆっくり」
そういうと、店員は離れていった。私はすぐに翼を手に取った。畳んでいて分からないけれど、広げれば一メートルは超える大きな翼だ。
被膜を触ってみると、ちゃんとした弾力もある。これならば、太鼓に打ってつけだ。
「だけど、問題は品質だよね……」
見た感じ、高品質に見える。だけど、見えている部分が真実とは限らない。私はこっそりと鑑定のスキルを使った。
【マジックバットの翼】
・品質:73
……思ったよりも低い。この品質で太鼓にしたら、上手く振動が伝わらないかもしれない。
そうだ、肝心の魔力の含有量はどれくらいなんだろうか?
【マジックバットの翼】
・魔力含有量:64/100
半分ちょっとか……。100の品質は無理だとしても、せめて90は欲しい。そうじゃないと、安心してアイテムに使えない。
品質も魔力含有量も90くらいは揃えたいところだ。他の素材は、どんな感じだろうか?
他の翼を手に取ってみて鑑定してみると、品質は75前後、魔力含有量は65前後に留まった。大店だからと言って、良い品質のものがあるとは限らないということか。
でも、大丈夫。お店は他にもたくさんある。私は商品を戻すと、大店を出ていった。
◇
それから、様々な店を渡り歩いた。マジックバットの素材はメジャーなのか、たくさんの商品が並べられていた。
まぁ、魔法使いの杖の素材になるものだから、メジャーなのは当たり前か。でも、そのお陰で色々と商品を見て回れた。
だけど、目標値の90に到達する素材は中々見当たらなかった。良くて80台までだ。あと、もう一声欲しかった。
でも、色んなお店を回って気づいたところがある。拘りのお店にはいい品が売っているということ。そのお店は小さな店に多かった。
だから、私は小さなお店を中心に探し回った。そして、また一つのお店にたどり着いた。
石造りでごつい扉をしたお店。飾り気はゼロ、看板は木の板に文字が書かれているだけの物。
「なんか、頑固そうなお店だな……」
入るのを躊躇してしまいそうになるが、気を引き締めて扉を開いた。すると、こじんまりとした店内には数多くの素材が並べられていた。
でも、数は少ない。ここにはマジックバットの素材があるだろうか?
私は迷わず、カウンターに行った。すると、白髪のおじいさんが本を読みながら椅子に座っていた。
「あの、マジックバットの翼は置いてありますか?」
「……あぁ?」
ギロリと睨まれた。まるで、値踏みをするような視線だ。
「……どうして、そのことを知っている?」
「えっと、魔法協会からの紹介で」
「なんだ、ただの偶然か。だったら、お前は運がいい。昨日、入ってきたばかりの翼がある」
昨日入ってきたばかりの翼!? それは、品質が良さそうだ!
おじいさんが席を立ち、こちら側にやってくる。そして、一つの棚に近づいた。そこには、綺麗に整えてある翼が一つ飾られてあった。
「みてみな」
翼を手渡され、確認する。すると、今まで見た中で一番綺麗に見えた。色艶が良く、強い弾力性がある。今にも動きそうな程に新鮮で、申し分ない品質だ。
ドキドキしながら、鑑定を使うと――。
【マジックバットの翼】
・品質:93
・魔力含有量:87
「……あっ」
「どうした? 最高の素材じゃなかったのか?」
「求めていた魔力量が足りなくて……」
「どれだけの素材を求めていたんだ。これくらいが、店の限界だと思うが」
そうか……。やっぱり、お店に持ち込まれると品質も魔力の含有量も下がる。いや、その前にマジックバットの討伐が完璧じゃなかった、という理由もあるかもしれない。
でも、この素材は惜しい。今まで見た中で一番の品質と魔力含有量だ。
「魔力量が足りないか……。もし、魔石みたいに自分で魔力を含ませることが出来たらいいのにな」
……そうだ。足りないなら補えばいい。調合ならそれが可能かもしれない。
「おじいさん、ありがとう! ちょっと、やりたいことが見つかったよ。この素材下さい!」
「いいのか? 目的の物じゃないと思うが……」
「大丈夫。私が求めるものに昇華するから!」
魔石に魔力を込めることが出来るなら、素材にも魔力を籠めることが出来る。調合で挑戦してみよう。




