111.資料を探す
「あっ、おはようございます! 来てくださったんですね!」
約束通り、翌日に魔法協会の資料室を訪ねた。相変わらず本や資料で埋め尽くされているが、昨日よりは整頓されているような気がする。
「あれから調子はどうですか?」
「凄く良いみたいです! 体中が疲れていたのに、急に元気になって。体がスムーズに動けるようになったんです。凄い薬があるんですね」
どうやら、昨日の薬は良く効いたみたいだ。この様子だと、今日も作業は続くようだし、もう一本渡しておいた方がいい。
「これ、使ってください」
「えっ!? いいんですか?」
「はい。ぜひ、作業を早く進めてもらいたいので」
「助かりますー! この仕事、意外と筋力が必要なので、昨日と同じ力が発揮出来ると作業が捗ります」
薬を手渡すと、ピニカは薬を飲み干した。すると、みるみると表情が明るくなっていく。
「うん、これですこれ! この力があれば、作業は進みます!」
「良かったです。それで、今日ここに来た意味は?」
「あぁ。昨日でまとまった区画がありますので、その区画なら資料を探しても大丈夫ですよ」
やった! まだ作業の途中だけど、資料が見れる! ピニカに案内されて行くと、その区画の本棚だけ綺麗に並べられていた。
「ここなら見ても構いません。そこに空いている机がありますので、そこを使ってください」
「ありがとうございます」
「いえいえ、少しでもお力になれればいいのですが……。それでは、私は作業に戻りますね」
そう言って、ピニカは作業に戻っていった。私は整理された区画の本棚を見て、資料探しを始めた。
◇
「んー……ないな……」
整理された区画を調べてみたが、そこには魔力道に関する記述はなかった。ということは、まだ調べていない区画にあるかもしれない。
そう思って、新しい区画を探そうとしていると――鐘の音が響いた。どうやら、閉庁の時間のようだ。
仕方なく私は見ていた資料を戻し、ピニカさんに会いに行った。
「ピニカさん、終わりなので帰りますね」
「あっ、そうですね。欲しい資料は見つかりました?」
「いえ、それが見つからなくて……」
「そうですか……。整理が終わったらお手伝いが出来ると思うのですが……」
そう言って、ピニカさんは辛そうに体を動かした。
「薬が効いているととても動きやすくていいんですが、疲労が溜まるのがいけませんね。明日に響かなかったらいいんですけど……」
確かに、筋肉増強剤は筋肉が増えても疲労は消えない。もし、明日に響いて仕事が遅れれば、私の資料探しも遅れてしまう。
じゃあ、ここはそれも解決してあげよう。【素材保管】からロザンお父様に使っている、再生の湯の素を取り出した。
「あの、ピニカさんの家に浴槽はありますか?」
「えぇ、ありますよ? それが、どうかしました?」
「この薬を湯に入れてみてください。そしたら、体の疲労が軽くなります」
「そ、そんな薬があるのですか!? ぜひ、使わせてください!」
ピニカさんに素を渡すと、とても喜んでくれた。これで、明日の仕事が捗ればいいのだけれど……。
私は薬を渡すと、屋敷へと戻っていった。
◇
翌日、開庁と共に資料室を訪ねた。すると――。
「ルイさん! 昨日の貰った薬、凄く効きました!」
私の姿を見るや否や、ピニカさんが興奮気味で迫ってきた。
「体の疲労が全部消えて、凄く体が楽になりました! これ、凄い薬ですね!」
「聞いてよかったです。はい、今日の分の薬です」
「あ、ありがとうございます! ルイさんのお陰で、仕事が進んで怒られなくなります!」
感極まった様子でピニカさんは薬を受け取り、飲み干した。
「ここまでしてくださったルイさんの期待に応えられるよう、今日も整理を頑張ります!」
「忙しいときに押しかけてすいません。でも、助かります」
「任せてください! ルイさんはご自分の仕事をしてくださいね。では!」
ピニカさんが意気揚々と整理を始めると、私も自分の資料探しを始める。昨日仕上がった新しい区画を前にして、再び資料探しを始めていった。
◇
私の薬とピニカさんの頑張りで資料は驚くほどに早く整理され、私の調べ物が進んだ。中々、魔力道についてい書かれていた書物は見つからなかったが、諦めずに一つずつ確認していった。
そうして、私は魔力道についての記述を見つけた。
「あった、これだ!」
それは魔力回路についての書物だった。その内容を読んでいくと、魔力道についての事が詳しく書かれてあった。
古びた紙には、魔法研究者による解説が細かく記されている。
『魔力道とは、魔力循環器官の総称である。魔力道は血管や神経のように目視することは出来ない。しかし、確かに存在しており、生物の生命活動と深く結びついている』
やっぱりあった。私が探していた情報だ。ページをめくりながら読み進める。
『体内で生成された魔力は魔力道を通じて全身へと運ばれる。魔法を使用する際には、この魔力道を通じて魔力を集め、魔法へ供給する』
なるほど。つまり魔力道は、血管のようなものだ。魔力というエネルギーを全身へ循環させるための見えない回路。
じゃあ、アマリアお姉様なこの魔力道が繋がっていないから魔力が外に出せないってことなのだろうか。
その後も記述を読んでみたが、魔力動について詳しく書かれている文章だけで、それを繋げるとか治すとかの記述はなかった。
「んー……一番欲しい情報がない」
やはり、この世には魔力道を繋げ合わせる手段がないということだ。ないと分かっただけでも収穫だ。私が作ればいいのだから。
「あとは、魔力道に作用する素材があるかの調べ物か……」
そこからきっと、新しい薬の手がかりが見つかるはず。私はさらに調べ物を続けた。




