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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第四章

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107/115

107.痛みの回復

「イザベルお母様! 薬が完成したよ!」


 扉を開けて中に入ると、ベッドの上で横になっていたイザベルお母様が目を開けた。


「えっ……今、なんて?」

「だから、痛みを取り除く薬が出来たんだよ」

「それは本当なの?」

「うん、これが薬だよ!」


 驚くイザベルお母様の前に皿を差し出す。その上に乗っている天水のサボテンの欠片を不思議そうに見つめた。


「これが、薬? 植物にしか見えないけれど……」

「今回は訳があって、こんな形なんだよね。でも、効果はちゃんと付いている。だから、これを食べてみて」


 椅子に座って皿を出しだす。イザベルお母様が体を起こすと、手に取ってそれをまじまじと見つめる。


「これが、ルイの作った新しい薬。凄いわね、ルイはどんなものでも作っちゃうんだから」

「錬金術のお陰だね。さぁ、これを食べればイザベルお母様の痛みは無くなるよ」

「まさか、そんな日が来るなんて……」


 欠片を見て、感慨にふける。そして、じっと見つめたまま動かなくなってしまった。


「もう、じっくり見てないで、早く食べてみて!」

「ご、ごめんなさい……つい、感動してしまって」

「それは食べてからでいいから、さぁ!」


 私が急かすと、イザベルお母様は苦笑いをした。もう一度、欠片を見ると――口に入れた。軽く咀嚼をして、喉がゴクリと鳴る。


「……どう?」

「まだ変化は……あ、あら?」

「変わってきた!?」

「体の節々の痛みが……嘘……こんなことって……」


 イザベルお母様の表情がどんどん明るくなっていく。驚いたように自分の体を擦って、感触を確かめている。


「全身の痛みが引いていくわ……。凄い……痛み止めみたいな効果じゃない。痛みが無くなっていくような……」

「痛みを感じなくなった?」

「……えぇ。体の痛みがなくなったわ」


 深く頷くイザベルお母様を見て、私は鑑定を使った。


【対象:イザベル・グレンジャー】


【状態:慢性複合機能不全】


【進行度:中度〜重度(部位ごとに差異あり)】


【細胞】


・細胞機能の不全


・修復・再生能力の著しい低下


 鑑定結果を見て驚いた。神経の痛みだけじゃなくて、骨格や関節の症状と内臓の症状も無くなっている! これは絶対に天水のサボテンの効果だ! 神経だけじゃなくて、他の部位にも効いた!


「凄い、凄いよ! 一気に体の機能が良くなったよ!」

「えぇ、分かるわ。体が普通に近づいたって言うことが……」

「もう痛くない? 体調は戻った? 立てそう?」

「立てるかどうかは分からないけど、起き上がって全然苦しくないの……。こんなの本当に久しぶりで……」


 そう言葉を口にするイザベルお母様の目から涙が零れた。そして、私を優しく抱きしめる。


「こんなことだって、無理をせずに出来るわ。もっと、強く抱きしめることも……」

「良かった……本当に良かった……」


 イザベルお母様の腕に力が入る。今までなら、少し体を動かすだけでも顔をしかめていたのに、今は違った。


 震えるように私を抱きしめながら、何度も何度も背中を撫でている。


「ありがとう……ありがとう、ルイ……」


 耳元で聞こえた声は涙で掠れていた。


「イザベルお母様……?」

「私ね、本当は怖かったの」


 ぽつりと零れた言葉に、私は顔を上げた。イザベルお母様は優しく微笑んでいる。でも、その瞳からは次々と涙が流れていた。


「日に日に体が動かなくなっていくのが分かったわ。痛みも酷くなるし、出来ないことばかりで……」


 少しだけ抱きしめる力が強くなる。


「いつかルイを抱きしめることも出来なくなるんじゃないかって。笑顔で迎えてあげられなくなるんじゃないかって」

「そんなこと……」

「それでも、あなたの前では弱音を吐きたくなかったのよ」


 イザベルお母様は私の頭を撫でた。大好きな手だった。いつも優しくて、温かくて。でも、その手はずっと震えていた。


「私が苦しそうにしている姿を見て、どれだけ心配してくれていたか分かるもの」


 その言葉に胸が熱くなった。私はただ助けたかっただけだ。病気で苦しむ姿を見たくなかった。大切な家族だから。


「ルイ」

「うん」

「あなたは私の自慢の娘よ」


 その一言が胸に深く響く。前世では聞いたことのない言葉だった。思わず鼻の奥がつんとする。


「優しくて、頑張り屋で、人のために必死になれる子」


 イザベルお母様は涙を拭いながら微笑んだ。


「あなたが娘になってくれて、本当に幸せだわ」


 堪えきれなくなった。私はぎゅっとイザベルお母様に抱きつく。


「私だって……」

「うん?」

「私だって、イザベルお母様がお母様で良かった」


 声が震える。


「本当に、大好きだから」

「えぇ」


 イザベルお母様が優しく頭を撫でる。


「私も大好きよ」


 部屋の中は静かだった。けれど、その静けさは寂しいものではない。温かくて、心地よい。家族の温もりに満ちた時間だった。


 その日の夜は家族みんなでイザベルお母様をお祝いした。とても楽しい時間で、久しぶりに家族全員が一つになった気がした。


 だけど、また治っていない部分がある。次こそ、完治させてみせる。

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