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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第四章

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102/115

102.天水のサボテン

 私たちはオアシスの周囲を慎重に見回り、他に魔物が潜んでいないか確認していった。


 途中、小型の魔物と数度遭遇したものの、どれも脅威になるほどではない。ケインたちと一緒に手際よく仕留め、短時間で周囲の安全を確保していく。


 そして――。


「よし、これでひとまず安全だな」


 周囲を見渡しながら、ケインが大きく息を吐いた。


「じゃあ、本命を探そう。天水のサボテンだ」


 その言葉に、私たちは気を引き締める。天水のサボテン。


 砂漠でも限られた場所にしか生えない希少植物で、背丈は五十センチほど。平べったい葉を何枚も重ねたような独特の形をしているらしい。


 ただ問題は――この広いオアシスの中から、それを見つけなければならないということだった。


「草に埋もれてたら厄介だな……」

「色も周囲と似てるって話だったよね」

「踏み潰さないよう気をつけろよ」


 声を掛け合いながら、私たちは捜索を開始した。背の高い草をかき分け、水辺の近くを確認し、岩陰まで丁寧に見て回る。


 湿った土の感触が靴裏に張り付き、葉の間からは小さな虫が飛び立っていく。風が吹くたびに草木が揺れ、視界の端で何かを見つけた気になることも何度もあった。


「あっ――いや、違うか……」


 似た形の植物を見つけるたびに近寄って確認するが、どれも普通の雑草や別のサボテンばかり。天水のサボテンらしき姿は、一向に見つからない。


 時間だけが少しずつ過ぎていった。オアシスの周囲を半周し、さらに奥まで調べる。


 水辺の近く。倒木の影。草が密集している場所。怪しい場所は一つずつ潰していったが、成果はなかった。


「……見当たらないな」


 ケインが眉をひそめる。額には汗が滲み、いつもの余裕も少し薄れていた。


「まだ見落としがあるんじゃない?」

「いや、かなり細かく探してる。これで無いなら……」


 仲間の言葉に、ケインは難しい顔で周囲を見回した。それでも諦めず、私たちは再び捜索を続けた。


 草をかき分け、膝をついて地面を確認し、ときには這うようにして茂みの奥まで覗き込む。


 けれど――一周。さらに確認も兼ねてもう一度周囲を見回ったが、結局それらしい植物は発見できなかった。


 静かなオアシスに、重たい空気が流れる。


「……そんな、ないの?」


 誰かがぽつりと呟く。苦労してここまで来たというのに、肝心の天水のサボテンが見つからない。


「やっぱり、希少なサボテンだけはあるわね。そう簡単には見つからない」

「落ち込んでいても仕方がない。明日、違うオアシスに探しにこう」


 セリウス兄妹はそれほど落ち込んではいない。それだけ、探すのが難しい素材のようだ。


 二人の様子を見て、私たちも気持ちを切り替えた。大丈夫、他のオアシスに必ずあるはずだから。


 そして、日が暮れ――その日はオアシスで一晩を過ごした。その翌朝、軽く朝食を取った私たちはすぐさま砂船に乗り込んだ。


「じゃあ、次のオアシスまで行くわよ! 大丈夫、他のオアシスの場所も分かっているから」


 そう言って、ロイザが砂船を動かす。砂船は風魔法の風を受けて、飛ぶ鳥のように砂漠を進んでいった。


 そうして私たちは各地に点在するオアシスを求めで移動をした。


 移動中、魔物に襲われることもあり、その道中は平坦なものじゃなかった。だけど、現地人のセリウス兄妹がいてくれるお陰で、難関も突破出来ていた。


 襲い掛かってくる魔物は次々と倒し。砂嵐を察知すると、方向転換をして回避。魔物と自然の驚異からセリウス兄妹は守ってくれていた。


 そして、肝心のオアシス。やはり、希少な素材とあって、中々見つからなかった。二か所目、三か所目。次々とオアシスを渡り歩くが中々見当たらない。


 それでもセリウス兄妹は元気なままだ。それを見ると、私たちもやる気が溢れてくる。こんなところでめげちゃいけない。


 そうして、四か所目のオアシスへとたどり着いた。


「よし、魔物は全部倒したな。天水のサボテン探しを開始するぞ」


 ケインの言葉に私たちは頷く、動き始めた。私たちは四人に分かれ、オアシスの捜索を開始した。


 何度も繰り返してきた作業だ。けれど、だからといって気を抜く者はいない。


「見逃さないよう慎重にいこう」

「少しでも怪しかったら呼んで」


 声を掛け合いながら、それぞれ距離を取りつつ歩いていく。


 背の高い草をかき分け、水辺の近くを調べ、岩陰や木の根元まで丁寧に確認していった。天水のサボテンは普通のサボテンと見分けがつきにくい。


 だからこそ、怪しい植物を見つけるたびに立ち止まり、鑑定スキルで確認を行う。


「……違う。これは砂棘サボテン」

「こっちも別物ね」

「紛らわしいな……」


 期待しては落胆する。その繰り返しだった。それでも、誰も諦めてはいない。草をかき分ける音だけが静かなオアシスに響く。


 私は再び茂みの中へ視線を向ける。


「……ん?」


 ふと、草の奥に何かが見えた。緑色の平べったい葉。何枚も重なるように伸びた独特の形。


 資料で見た天水のサボテンに、あまりにもよく似ていた。心臓が大きく跳ねる。


「み、みんな……!」


 思わず小声で呼びかけながら、私は慎重に草をかき分けた。すると、そこには一本のサボテンが静かに生えていた。


 大きさは五十センチほど。薄い青緑色の葉には、朝露のような透明感がある。まるで水を内側に溜め込んでいるかのような、不思議な瑞々しさだった。


「これ……」


 ケインたちも息を呑む。誰も軽々しく触れようとはしなかった。もし違ったら、また振り出しに戻る。


 そんな不安が全員の表情に浮かんでいる。私はごくりと唾を飲み込み、震える指先をサボテンへ向けた。


「……鑑定」


 スキルを発動する。情報が頭の中へ流れ込んできた。


【天水のサボテン】


・サンドリーナ乾燥地帯の砂漠のオアシスにだけ映えるサボテン


・正常な機能に戻す成分が含まれている


「天水のサボテンだ! ようやく、見つけたよ!」


 私の声に他の三人も沸いた。とうとう見つけた、天水のサボテン。私は【道具召喚】でシャベルを取り出すと、天水のサボテンを丁寧に掘り起こして採取した。


「やった、一つ目の素材……入手!」


 これで、残りはカイザルスコーピオンだ。

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