第10話「処刑台の招待状」
午後十一時を回った頃、二階の奥からドスンという鈍い物音が響いた。
続いて、微かに漏れ聞こえるベッドのスプリングが軋むリズミカルな音と、詩乃の押し殺したような高い嬌声。
遠藤が泊まりに来てから二時間。夕飯の席ではあれほど傲慢に振る舞い、母親を顎で使っていた娘が、いまや自分の部屋で獣のように男の肉体に貪りつかれているのだ。
一階のリビングは、間接照明の薄暗いオレンジ色の光に包まれていた。
アイランドキッチンの前に立つ涼子は、スポンジを握ったまま、二階を見上げて硬直していた。
水栓から流れる水の音だけが静寂を満たしている。その背中は小刻みに震え、薄手のサマーニット越しにも、心臓が激しく波打っているのが見て取れた。
娘の情事の気配。
本来なら母親として叱責し、止めに入らなければならないはずの醜態。だが、涼子の身体はその淫靡な気配に怯えながらも、どうしようもない熱を帯びてしまっていた。
昨夜、この家の主寝室で実の息子に貪り尽くされ、種を注ぎ込まれた記憶。その甘美な猛毒が、二階から響く猥雑な音に共鳴して、彼女の胎内をじくじくと疼かせていたのだ。
「……母さん」
背後から静かに名前を呼ぶと、涼子の肩が大きく跳ね上がった。
振り返った涼子の顔は、罪悪感と情欲で朱に染まり、瞳は潤んでいた。
「れ、蓮……まだ起きていたの? もう遅いから、部屋に戻って寝なさい……」
「寝られるわけないだろう。あんな音が頭の上から聞こえてるのに」
僕は一歩ずつ歩み寄り、蛇のように間合いを詰めた。
涼子は後ずさりしようとしたが、背中はすぐにシンクの冷たい大理石に突き当たった。逃げ場など最初から存在しない。
「詩乃は、自分の部屋で男と激しく絡み合ってる。……母さんは、あんな音を聞かされて平気なの? 身体の奥が、疼いてたまらないんじゃないの?」
「やめて……そんな汚らわしいこと言わないで……! あの子も、あなたも、どうかしてるわ……っ」
涼子は必死に両手で耳を塞ごうとした。
だが、僕はその細い手首を無慈悲に掴み取り、強引に引き剥がした。
息のかかる至近距離。大人の女特有の甘く饐えた匂いと、隠しきれない発情の臭気が鼻腔を突く。
「汚らわしい? 昨日、父さんのベッドで俺のペニスを咥え込んで、イキ狂っていたのは誰だっけ」
「あ……っ、言わないで……お願い、許してぇ……っ!」
涼子は涙を零しながら首を振った。
だが、僕はその懇願を無視し、彼女を力づくでリビングの中央へと引きずり出した。
吹き抜けの螺旋階段から、真っ直ぐに見下ろせる位置。二階の廊下の明かりがわずかに届く、白革の巨大なローソファの上へと、涼子の身体を乱暴に押し倒した。
「蓮、ダメよ……! ここじゃ……階段から、誰か降りてきたら見えちゃう……!」
「見られればいいじゃないか。母さんが、息子の女になったところを」
「いやぁっ……!」
悲鳴を押し殺すように口元を押さえる涼子のサマーニットを、僕は躊躇なく胸元まで引き裂くように捲り上げた。
ブラジャーのホックを外すと、重みのある白い双丘が、ボロンと夜気の中に零れ落ちる。昨夜僕がつけた紫色の鬱血痕が、月明かりに照らされて毒々しく浮かび上がっていた。
続いて、タイトスカートの裾を腰まで捲り上げ、薄いレースのショーツを引き剥がす。
――グチュ、と濡れた粘着音が響いた。
すでに、触れる前から涼子の秘裂は白濁した愛液でドロドロに泡立っていた。二階の情事の音を聞きながら、リビングで一人、下着を濡らして待っていたのだ。
「ほら……こんなに溢れてる。口では嫌がりながら、身体はもう俺を欲しくて狂いそうになってるじゃないか」
「ちが……違うの、これは……っ!」
「嘘をつくな」
僕はスウェットのズボンを脱ぎ捨て、すでに凶暴に反り上がった蓮の剛直を晒した。
太く筋張った熱杭を、涼子の太ももを大きく押し開いた割れ目の入り口へと、ぐじゅりと擦り付ける。
「あ……っ、ひ……っ!」
熱い先端が粘膜を押し分ける感触だけで、涼子の腰がガクガクと痙攣した。
二階からは、依然としてドスン、ドスンと荒々しいピストン音が響いている。
その真下で、家庭を支えてきた美しく気品ある母親が、全裸同然の姿でソファーの上に開帳され、息子の肉棒を前に涎を垂らしている。
この完璧な背徳の舞台。
「母さん、大きな声を出したら、詩乃とあの男が降りてくるよ。……必死で声を殺して、俺に犯されなよ」
「蓮……っ、待っ……入っ――ッ!!」
言葉を最後まで言わせず、僕は腰を一気に沈め、根元まで容赦なく貫通させた。
グチャリ、と肉と肉が激しく噛み合う重い結合音が、吹き抜けの天井へと吸い込まれていく。
「んん――ッ!! んぐ……ッ!」
涼子は両手で自分の唇を塞ぎ、目を白黒させながら激しく身悶えた。
息子の若い剛直が、子宮口を狂暴に圧迫し、何年も乾ききっていた熟れた粘膜を容赦なく削り取っていく。
逃げ場のないリビング。階段から誰が降りてきても一目でわかる開かれた空間で、実の息子に貪られるという絶対的な狂気。
その恐怖が、涼子の女としての神経を狂乱の絶頂へと跳ね上げた。
「あ……っ、ん……っ! ふーっ、ふーっ……!」
口を塞いだ指の隙間から、濁った熱い息が漏れ出る。
僕は涼子の豊かな乳房を片手で乱暴に揉み潰しながら、腰の動きを加速させた。
バチン、バチンと、激しく皮膚が打ち付けられる音が、静まり返った一階に響き渡る。
涼子の膣壁が、息子の肉茎を逃すまいと飢えた蛇のようにぎちぎちに締め付けてくる。
「母さん……すごいよ。締まりが良すぎて、頭がおかしくなりそうだ」
「あ゛っ……! だめ……蓮、それ以上……動かしたら……わたし、声が……出ちゃう……っ!」
涼子は涙を流しながら首を振り、快楽の波に抗おうとする。
だが、その腰は無意識のうちに、僕のリズムに合わせて必死に突き上げられていた。
母親としての尊厳など、疾の昔に消え去っていた。
その時だった。
ギィ……と、二階の廊下から、部屋のドアが開く乾いた蝶番の音が響いた。
ピタリと、涼子の身体が凍りついた。
続いて聞こえてきたのは、ペタペタと素足で廊下を歩く、気だるげな足音。
階段の方へと、確実に近づいてくる。
「あ……っ、詩乃……? 嘘……嘘でしょう……!?」
涼子の瞳に、真の絶望の色が浮かんだ。
だが、僕は腰を引くどころか、逃げようとする涼子の太ももをさらに強く掴み、最深部へと深く、深く、体重をかけてペニスを捩じ込んだ。
「蓮……っ! やめて、抜いてぇっ……! あの子が……降りてきちゃう……ッ!」
「抜かないよ。……ここからが、本番だ」
僕は冷酷な笑みを浮かべ、階段から真っ直ぐに見下ろせる角度へ、涼子の濡れそぼる腰をぐっと高く持ち上げた。
足音は、すでに螺旋階段の一段目を踏み締めていた。




