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【完結】龍淵の蒼、狐の剣華 〜苦労を知らない神だった私が、不遇な『狐の女帝』を略奪し、溺愛し尽くすまで〜  作者: okazato.


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8/8

結びの花 龍神様の愛し方

「それで、弟君は元気にやってるの?」


 私は素早く判をつきながら、リサーに尋ねる。


「はい! ご隠居様や族長からは、初めて教わることも多いようで、楽しく過ごしているみたいですよ」


 今も護衛役を担っているリサーは、華やかな笑顔で言い切る。


 狐族の長候補の件は、あれからあっという間に解決していた。


 それは、祝言での騒動から数日後のこと。なんと、リサーの弟であるレムートにも、三つ目の尾が生えたのだという。


 リサーを『狐の女帝』としないために、ヴィート君は色々と動いてくれていたのだが、こちらから手を回す前に、次の長候補はレムートにすり替わっていたらしい。


「できれば男児に継がせたかったでしょうから、みんなも安心したはずです」


 リサーは晴々とした面持ちで語るのだが、私は納得しきれていないところもあった。


「君が『女帝』を避けられたことは、よかったとして。それでも素直には受け入れられないよね」


「どうしてですか?」


 リサーの瞳に、不機嫌な顔をした私が映り込む。


「だって君のほうが、先に三尾になっていたんだよ? 『女帝』を目指していなかったとはいえ、長となる権利は、レムートと君に等しくあるはずだ。なのに、リサーは一方的に候補から外されていた。ずいぶんと勝手だとは思わない?」


「うーん、そうですか?」


 悩むそぶりを見せつつも、リサーの顔には笑みが溢れていた。


「あまり気にしていなかったです。私は、龍神様のおそばにいられることが幸せですから」


 可愛らしい発言に、思わず胸がときめく。


「ねぇリサー。今からデートでもしない?」


「そんなの駄目に決まってますからね、龍神様……?」


 聞き耳を立てていたヴィート君が、背後から囁きかけてくる。


「ちぇっ、仕方がないなぁ。でもちょっとぐらいは、休憩させてくんない?」


「はぁ……十五分だけですからね」


 ぶつくさと文句を言いながらも、ヴィート君は足早に退室する。


 部屋にはリサーと私の、二人だけが残された。


「おいで、リサー」


 彼女を招き寄せ、ひざの上に座らせる。ふわふわの尾は、嬉しそうに左右に揺れていた。


「この仕事さ、今日で一段落つくから。明日はお休みにして、二人でゆっくり過ごそうよ」


 髪飾りを指先でいじりながら、リサーに提案する。


「龍神様。二人でっていうのは、その」

「ん?」


 リサーは目線を逸らしたまま、遠慮がちに口を開く。


「龍神様のお部屋で、ですか?」

「……うーん。どうしようねぇ」


 少し悪戯いたずらな気持ちになって、私は尖った耳にそっと触れる。


「あっ!」


 ここが彼女の弱いところだというのは、よく知っていた。


「リサーはどうしたい?」

「それは、……っ」


 耳の付け根をさすりながら尋ねると、リサーの両目がうっとりと細まっていく。


 さらに唇を耳に這わせると、彼女はびくりと全身を震わせた。


「やめてください。そんなことされたら、んぅっ……うまく答えられないでしょお!?」


 リサーは立ち上がり、こちらに向かって全力で叫んだ。


「ごめんごめん! つい、リサーの可愛い姿が見たくなっちゃって」


「もう! 早くお仕事に戻ってください、そんなんじゃ、明日までに終わりませんからね!?」


 ぷりぷり怒っているリサーの腕を引き、手の甲に口づけを落とす。


「じゃあこれを片付けたら、続きをしてもいい?」


 低い声で囁くと、リサーの体が真っ赤に染まった。


「え、ええ! ちゃんと全部終わらせたのなら、ですよ!? それまでは私も、好きに過ごしますからね!」


 彼女は逃げ出すように、部屋を飛び出していく。


「ふーむ。そうと決まれば、のんびりしてられないよね」


 机の上に積み重なった書類へ、勢いよく腕を伸ばす。


 どうやらリサーは、この仕事を片付けるまでに、相当時間がかかると踏んでいるらしい。

 なら、とびきり早くに終わらせるしかないよね。


「そろそろいいですか、龍神様?」


 ぴったり十五分後に戻ってきたヴィート君は、真面目に働いている私を見て、満足げに腕を組んだ。


「これだけやる気になってくれるのなら、席を外した甲斐がありますね」


「まあ、リサーを待たせるわけにはいかないし。さっさと終わらせよう」


 承認済みの書類を持ち上げ、ヴィート君は満足げにうなずく。


「いいですね。龍神様が本気を出せば、昼前にでも片がつくでしょうから」


「はははっ! 本当にヴィート君は、私のことを分かってくれてるよね」


 書類をさばきながら、微笑む。


 仕事終わりにすぐ追いかけたら、きっとリサーは驚くだろうな。


 目を丸くしているリサーを、思い切り抱きしめて。それからどうしよう?


 柔らかい耳は丹念にほぐして。三つの尻尾にも、順番に触れてあげて。

 それから、全身愛してあげるんだ。この世でたった一人だけ、龍神のつがいとなった彼女のことをね。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。作品が心に残りましたら、感想等いただけますと励みになります。


今作は甘さに全振りしましたが、3/28に完結した『双面の贄姫 〜身代わり令嬢はどうにかして悪役を回避したい!〜』(全137話)でも、違った形の『龍』を物語に描いています。


「身代わり」×「タイムリープ」×「全員救済 (ハッピーエンド)」


処刑される未来を回避するため、少女は再び“偽りの令嬢”を演じる。


前世とは異なる事件をいくつもくぐり抜け、運命の修正を試みる歩みは、いつしか国を揺るがす大きな謎へと繋がっていく──。


『双面の贄姫』は、広義の謎解き(ミステリー・サスペンス)要素を含んだ、異世界恋愛ファンタジーです。


リンクはページ下部にございます。愛と救済のドラマを、ぜひお楽しみください!

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