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【三章完結】オノマトペ魔法師と堅物廷臣法官長の王宮事件録~わたしの魔法は、国家機密⁉~  作者: いとう縁凛
第三章 「四季禁忌」ハプスト領内乱事件

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030件目 領主の変革


 ハプスト村の発展のため、竹の産業をする事になった。今日は竹を乾燥させるための竈みたいな場所を作る。


「タケニタケを通せば乾燥して、作業ができるようにします。長いほど素材にした時に便利だと思いますので、それぐらいの大きさにしますね」


 目安となる大きさを決めるため、魔道具じゃない鉈で竹を切る。今日も集まってくれている可変派の人達と作業を進めた。


「この長さで、送り出す人と受け取る人を……って、すみません」

「村のために尽力していただきありがとうございます。水分はしっかりと取ってください。こちらに用意したので、星渡人様が終わったら皆さんもどうぞ」


 なぜか、ハプストさんがいる。ぶつかっちゃって謝ったけど、笑顔で返された。昨日までの態度と違って、ちょっと気味の悪さを感じる。しかも、なぜわたし優先。

 ハプストさんが言った通り、示された先には大きな瓶に入れられた給水所のような場所がある。そこへレオンハルトさんと一緒に行くと、わたしが飲む方の水には柑橘系の爽やかな香りがした。

 レオンハルトさんを初め他の人も水分を補給する。村の人達は、ハプストさんの態度に疑問を持たないのかな。


「お姉さ、ん。つぎは、何をするの?」

「あ、オルディちゃん。ちょっと聞いても良いかな」


 ハプストさんがいる前で聞くのは憚られ、オルディちゃんとちょっと場所を離れる。そしてハプストさんの態度について聞いてみたら、いつも通りだそう。言わされている感じもなかったから、たぶん村の人に取ってはあの態度が普通なのかもしれない。


 竹を乾燥させる竈の大きさを指示し、不審な動きをするハプストさんを見た。あちらもわたしを見ていたのか、バチッと目が合う。そして、どこかウキウキとした様子で近づいてきた。


「星渡人様。どうかされましたか」

「あ、いえ……(モヤモヤするし、聞いちゃおうか。)その、どうして態度を変えたのかと思いまして」

「これまでは大変失礼な振る舞いをしていた事、ここにお詫びいたします」

「……えっと、態度を変えた理由を伺っても?」

「まだ若輩者でして、村を存続させるためには必要だったのです」

「と、いうと……もしかして、内乱が続くようにしていたという事ですか」

「お恥ずかしながら、そういう事ですね。しかし村の問題の解決に、星渡人様に尽力していただいてので」


 ハプストさんが頬を染めて微笑んでいるような気がする。

 ずっと疑問だった。年を重ねる内に村の考えに染まるという事だったけど、村内の考えは統一されていない状態。絶対に誰かが意図的に二極化するようにしていたと思っていた。

 村内の情勢が悪ければ、国の平和のために視察を重ねる。ましてや、ここは東端の村。間にヴィエザ山があるとしても国境だ。放置もできない。


「……そういう事なら、今後は変わりますよね。ハプストさんはまだお若いし、村の人達の考えも変えてもらうようにお願いします」

「承りました」


 ぺこりとお辞儀をして離れていったハプストさんを、見送るような視線を送ってしまう。昨日の今日で、ここまで改心するものだろうか。

 疑問に思ったけど、産業の開発はハプストさんも正式に許可を出している。作り出すのは、早い方が良い。

 わたしは頭を切り替えて、竹を乾燥させる竈を作る作業へ移った。




「スーッとスーッと流れてく。竹はここから流れてく」


 長い竹の三分の二くらいを一気に乾燥できるような竈が完成した。石の竈は頑丈にできていると思う。ロゴスさんの土魔法とレオンハルトさんの風と水の複合魔法で、素材を作っていたし。


「伐採したタケニタケを、ここから右へ流して下さい。そうすれば乾燥した物が手に入ります」


 作業手順を伝えていると、香ばしい匂いが鼻に届いた。周囲を窺うと、領主の館で見た料理人が腕を振るっている。さながら屋台キッチンのような感じで、村の人達も集まっていた。


「星渡人様! 是非とも出来たてのステーキをお召し上がり下さい」

「あ、はい。どうも」


 食べやすいように切り分けられたステーキが載ったお皿を受け取る。でもカトラリーがないなと思っていたら、両側の口角を上げたハプストさんがフォークを持っていた。


「どうぞ」

「……どうも」


 村のためだったとはいえ、あれだけ剣呑な雰囲気だったハプストさんの態度の急変に慣れない。まだ何か考えているんじゃないかと思ってしまう。

 見られながら食べるのは慣れていなくて、ハプストさんに背を向けて食べ始める。

 肉々しいお肉は、肉汁があふれてきた。香辛料は特にかかっていないけど、良い塩梅の塩味がある。軟禁されている時からそうだったけど、どういう原理なんだろう?


「アンネ殿。あちらにスープもあるようだ」

「あ、レオンハルトさん。ちょっと聞いても良いですか」

「どうした」

「あの、お肉の塩味ってどこから来ているんですか」


 質問すると、レオンハルトさんは塩獣ザルソイの事を教えてくれた。

 曰く、北端の村の先に塩獣の巣があり、そこにしかいない魔獣のようなものらしい。火を通すと、味をつけなくても良い塩梅の塩味があるお肉になるんだって。

 味付けしなくても良いなんて、なんて素晴らしいお肉! 世に出回るお肉は全て塩獣で、卵も塩獣の鶏から取られるらしい。


「なるほど! 勉強になりました」

「北端の村には私の旧友もいる。もし狩りの様子が見たいのであれば、訪問も可能だ」

「んんっ……興味はありますが、今はそこまでの熱はありませんね」

「第二王子殿下は、女性の心をわかっていませんね。狩りなんて野蛮な行為、見たいと思う訳ないじゃないですか」


 さすがレオンハルトさん相手に交渉をしたハプストさん。恐れずに言葉を告げている。どこか勝ち誇ったような感じがするのは、わたしの気のせいかな。

 ハプストさんに指摘されたレオンハルトさんが、わたしを見る。


「えっと……今は、なので。後から見たいと思うかもしれないので」

「そうか……。母上からも、常日頃から言われている。もう少し女性の気持ちを考えろと。精進する」

「レオンハルトさんは、十分優しくしてくれていますよ!」

「第二王子殿下を優しいと感じられるのであれば、俺にも勝算はあるかもしれないですね」


 グッと眉間にシワを寄せたレオンハルトさんを見て、すぐにフォローした。

 そうしたら今度は、ハプストさんがレオンハルトさんを挑発する。本当に、恐れを知らないね!?

 ハプストさんの行動に驚いていたら、すっと手を持たれた。そのまま流れるようにハプストさんの口元へ持って行かれる。


「チェシア・ハプストは今この時より、星渡人様への愛を捧げます」

「は!? えっ??」


 手の甲にキスはされていない。でも端から見たらされているように見えると思う。そんなハプストさんの行動を見て、村人達が口笛を吹いて喜んでいる。

 ……いや、可変派にしても村の雰囲気と違いすぎない!?

 この状況をどうすれば良いのかと思って周囲を窺ったら、オルディちゃんが目を輝かせていた。いや、うん。外から見たら三角関係に見えるかもしれないけど、違うからね?


「アンネ殿。前にタケニタケの栽培を制限すると聞いた。周囲に打つ杭を準備しても良いだろうか」

「あ、はい。お願いします」


 問われるままお願いしたら、レオンハルトさんとハプストさんとの勝負内容が決まったらしい。ヴィエザ山で切り倒した木を杭にするまでが、勝負らしい。


「あっ、殿下!! お待ち下さい!!」


 走り出したレオンハルトさんを追って、ウィグネスさんとソイルさんが追いかけていった。可変派の多くの村人も、ハプストさんを追いかけていく。


 前に、コナー先輩が言っていた。レオンハルトさんは意外と乗せやすいと。

 確か、レオンハルトさんってわたしとそれほど年が離れていなかったはず。


「……ロゴスさん。レオンハルトさんの年齢をお聞きしても良いですか」

「第二王子殿下は、現在十八歳ですね」

「おぉ……わたしと二歳しか違わないんだ」


 タマちゃんと全力で遊んでいた時に、威厳を保たないといけないと言っていた。確かにその若さなら、時には年相応になる事もあるかもしれない。


 ロゴスさんと話しながらヴィエザ山を見ていたら、時折水柱や竜巻が上がっていた。レオンハルトさんが魔法で木を切っているのかもしれない。

 その魔法が、いつの間にか増えた。レオンハルトさんを追いかけたウィグネスさんとソイルさんも風と水属性だから、レオンハルトさんに加勢しているのかもしれない。

 ウィグネスさんは二十代後半に見えたけど……血気盛んな近衛達だね。元気なのは良い事だ。


 ヴィエザ山の山道が少し広くなったなと思っていたら、次々と杭になった木が運ばれてきた。あ、山で直接加工しちゃう感じだったんだ?

 レオンハルトさん達もハプストさんを追いかけた村人達も、山から戻ってきた。積み上げられた杭は、両陣営合わせるとかなりの量になる。公平を期するために、わたしが数える事になった。


「……えぇと、同数ですね」

「それでは第二王子殿下。第二戦と行きましょう。次は、杭を打つ本数で勝負です」

「望むところだ。アンネ殿、どの範囲に杭を打つか示してくれ」

「あ、はい。少々お待ち下さい」


 あらかじめ勝負の前に規格を決めたのか、杭の太さは全て同じだった。直径は、わたしの両手の平ぐらい。

 杭の直径と、本数をかけ算する。指で地面に書いていたら、レオンハルトさんが先端を丸めた枝を渡してくれた。


「これは?」

「動物は棒が好きだと聞いた。後でお爺様に渡そうと思っている」

「なるほど。では、お借りします」


 あの勝負の中タマちゃんへのお土産も作るなんて、実質レオンハルトさんの勝利では?

 そう思いつつ、地面に計算式を書く。


「アンネ殿は博識だな」

「ありがとうございます。でもこれくらいなら、小学生……えっと、十歳前後の子供が習いますね」

「なんと……。アンネ殿が持つ世界の知識水準は恐ろしく高いのだな」

「そう思ってもらえたら嬉しいです」


 レオンハルトさんと話しながら計算を進め、杭の全てを使い切る長さがわかった。ロゴスさんに協力してもらい、杭を打つ場所を特定する。

 いざ勝負、となった。

 いつの間にか可変派じゃない人達も増えている。観客が大勢いる中で行われた杭打ち勝負は、また勝敗がつかず。あのレオンハルトさんと拮抗するなんて、ハプストさんは意外とすごいね?

 まぁ、村のために王族と交渉しちゃうわけだから、ポテンシャルは高いか。


「ズドンと地下まで杭を打つ。地下の地下まで魔法壁!」


 大きく囲われた腰高の杭の一部に手を向けて、詠唱をした。杭が腐食しないように考えながら魔法を使ったから、たぶんそんな感じになっていると思う。




 こうして、ハプスト村への出張が終わった。帰り支度を済ませ、馬車に乗ろうとした時。ハプストさんがやってくる。

 そして、意味深な忠告を受けた。


 ……命を狙われるから気をつけてって、星渡人を許せない者って?? どういう事??




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