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【三章完結】オノマトペ魔法師と堅物廷臣法官長の王宮事件録~わたしの魔法は、国家機密⁉~  作者: いとう縁凛
第三章 「四季禁忌」ハプスト領内乱事件

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029件目 二枚舌の領主


 レオンハルトさん達と領主の館に戻ると、ハプストさんが出迎えてくれた。早速村の産業について話をしようとすると、わたしを見て驚いたように目を見開く。


「……対応が遅れてしまいました。命が狙われたと聞いています。その様子でしたら、難を逃れたようですね」

「あ、はい」


 村の外に出ていたハプストさん。帰ってくるなりあの毒殺未遂の事に触れてきた。どこからその情報を得たんだろう?

 村人達を思い出す。レオンハルトさんのように伝令鳥を出せるような風の属性持ちはいなかったように思う。他の属性で伝達する方法もあるかもしれないけど、そこまでの技術があるなら、村の中はもう少し様子が違っていたと思う。


「失礼ですが、ハプストさんはどこでその情報を得たんですか」

「料理長に、村内の変化を報告するように伝えていたのです」

「なるほど……(それなら問題ないか)」


 わたし達は館の外に出ている事が多かった。情報の伝達方法は、魔法を使った物ばかりじゃない。伝書鳩辺りなら、素早く連絡できるかもしれないよね。

 納得できる答えを自分の中で見つけ、頭を切りかえる。


「ハプストさんに相談があります」

「そうですか。ではこちらへどうぞ」


 ハプストさんに案内され、来賓室へ通される。


「ご相談とは?」

「はい。村の活性化のため、産業を持ってはどうかと思いました。村のそこら中に生えているタケニタケを使った物です。今、村の人達にそのやり方を伝えています」

「それはありがたい。しかし、それならば改まってのご相談とは?」

「タケニタケを使うため、その栽培地の確保をしたいです。繁殖力が高いので、周囲に人が住んでいない場所が良いと思います。それと、そのタケニタケを加工する作業場を近くに作れればと思っています」

「なるほど。そうですね……ヴィエザ山に近い場所に、いくつかタケニタケが建物を貫いている場所があります。その辺りであれば良いのではないかと」

「ありがとうございます。早速、明日から取りかかろうと思います」


 ハプストさんに頭を下げ、来賓室を出る。何となく視線を感じて振り返った時、ハプストさんは片方の口角を上げて笑っていた。


 来賓室を出て、夕食までは各自部屋で過ごす時間となる。木杯の中に水を出したら、スーザンが喜んでくれた。

 そして、夜番を任せて就寝する。




 翌朝。

 朝食を済ませ、ハプストさんが教えてくれた土地へ行く。ヴィエザ山の山道へ入る手前に、該当する家々があった。三軒ほど、竹に貫かれている。周囲を確認したけど、同じ条件の場所はないように思えた。


「まずはこのタケニタケを切りましょう」


 前のように竹が平屋を支えているかもしれない。でもこの場所を提供するなら住人はいないはず。そう思って、レオンハルトさんに魔道具で切ってもらおうとした。


「あんたら、何をやっているんだ!!」

「えっ??」


 いざ作業を始めようとしたら、三軒ある内の一軒から男性が飛び出してきた。


「領主より、この場所の更地化に許可をいただいた」

「んな事、ある訳ないだろ!! ずっと俺が住んでいるんだから!」


 男性は家から飛び出してきた。それなら、男性の主張は正しい。

 でもそうなると、なぜハプストさんはこの場所を産業の作業場にして良いと許可を出したんだろう。


「すまない。確認不足だったようだ。領主に確認しよう」


 レオンハルトさん達と、その場を離れる。振り返って見たら、住人の男性が腕を組んで家の前に立っていた。家を守るという強い意思を感じる。

 首を傾げながら、領主の館に戻った。そしてハプストさんがいた執務室へ行く。


「おや? どうしましたか」

「領主が言った土地には、住人がいた。また間違いがあるかもしれない。作業場を建てて良い場所までの先導を求める」

「作業場? 一体、何の話をされているのか」

「昨日、許可してくれたじゃないですか!!」

「許可……? はて?」


 ハプストさんが首を傾げる。その様子がわざとらしく思えて、ハッとなった。

 昨日、来賓室から出る時、ハプストさんは何か企んでいるように笑っていたよね。それはつまり、こうなる事を予測していたんだ。

 待って、もしかしてあの場所に住んでいるっていう男性も、もしかしたら嘘なんじゃない? ハプストさんと話してから一晩あったし、昨夜の内に仕掛けておけば……。


 やられた。初めから、許可を出すつもりなんてなかったんだ。

 隣に立つレオンハルトさんの顔を窺う。レオンハルトさんも、わたしと同じ事に気づいたみたい。


「……条件は?」

「さすが第二王子殿下。話が早いですね。こちらが、契約書となります」


 さも最初から用意していたかのように、一枚の紙を出してきた。レオンハルトさんがそれに目を通す。

 その間、わたしは思わずハプストさんを睨みつけてしまった。


「おお、怖い。美人の鋭い眼光は迫力がありますね」

「……そんな事を言ったって、誤魔化されないですから。最初からこうするつもりだったなら、どうしてそうしなかったんですか」

「おや、人聞きが悪い。俺はあくまでも村の場所を言っただけで、そこに建てて良いとは一言も言っていませんよ」

「でも、あの流れだったら!」

「いけませんねえ。契約は、口約束ではどうとでもなるんですよ」

「くっ……」


 ハプストさんの言う通りだ。村の中に手を加えるんだ。言わば、工事の発注をしたという事。それなのに書面で必用事項も確認せず、そのままにしてしまった。

 ハプストさんに言い負かされていると、契約書を見たレオンハルトさんが顔を上げる。


「この条項、定期的な食糧提供に関しては約束しかねる。産業が軌道に乗れば、その必要はなくなるはずだ」

「では、それまでの間という事でどうでしょうか」

「期間が曖昧なままなのは駄目だ。十年を最初の区切りとし、以降は三年ごとに契約更新の有無を決める」

「良いでしょう」

「そして、その契約更新時期と同じ期間を荷馬車貸し出し期間とする」


 レオンハルトさんはハプストさんに契約書を返し、その文言を書くように様子を見守る。何か不正な事をされるんじゃないかって思ってわたしも見たけど、レオンハルトさんが言った通りの事が書かれていた。

 ふと気づいた。契約書は一枚。レオンハルトさんとハプストさん両名がそれぞれ署名した。でも、一枚だけじゃどちらが管理するかと揉め事になる。


「同じ内容を、もう一枚用意して下さい」

「いえ、それは……」

「あれ? おかしいですね。契約書は二枚作り、それぞれが持つべきでは?」

「少し時間をいただきます。インクも切れてしまいましたし……」

「問題ないです。その契約書、わたしに貸して下さい」


 何をするのかと不審がるハプストさんから、契約書を預かる。そして机の上に白紙の紙がある事を先に確認して、告げる。


「全く同じ内容の物を出すので、こちらの紙をいただきますね。ぴったり同じにコピーしろ!」


 にっこりと微笑んで圧を出すと、ハプストさんはなぜか頬を赤らめた。


「大事な契約ですので、双方が持っていて良いですよね?」

「そ、そうですね……」


 原本をハプストさんに返し、印刷した方をレオンハルトさんに渡した。


「では契約も無事締結できたので、作業場を作っても良い場所まで案内してもらえます? またいざこざが起きても面倒なので」

「わかりました。ご案内しましょう」


 さっと立ち上がったハプストさんが先導する。向かった先は、最初に訪れた場所だった。現地に着いてからギロッと睨みつけると、ハプストさんは気まずそうに目をそらす。

 ひとまずこれぐらいで良いかと、レオンハルトさんへ目を向ける。

 すると、レオンハルトさんが感心するような顔をしていた。


「アンネ殿は、交渉官もできそうだな」

「いいえ、そんな事はないです。最初は騙されちゃいましたし」

「二度目であれだけできるなら、この先は一度で成果を上げられるだろう」

「レオンハルトさんの助けになれたら良いんですけど……えっと、それでは作業場の事について話しましょう」


 レオンハルトさんは、話す時に目をそらさない。だからわたしも失礼がないように同じようにする。でもそうすると、見つめ合ったまま話す事になってしまった。褒められながらの事だから恥ずかしい。顔も熱いから、わたしから目をそらす。

 作業場について話すという名目があって良かった。


「まず必要になるのは、タケニタケの栽培所。ここ数日でわかったのは、切っても時間が経てばまた同じ場所から伸びていくという事。それにその時、すぐ近くに新しい芽が生えます」

「タケニタケの繁殖力は高い。それをどう制限する?」

「横に広がるように地下茎を伸ばすので、ある程度の敷地を確保したら地下深くまで繁殖を制限する杭を打とうと思います」

「なるほど。ではまず予定地を更地にしようか」


 レオンハルトさんと話をしていると、オルディちゃん達可変派の人達がやってきた。人手が増え、各自にどう動くか指示を出す。

 いつの間にかハプストさんはいなくなっていたけど、村の改革に忙しくてそのまま忘れてしまった。


 領主の館に行って作業者全員のお昼ご飯を頼み、午後も作業を続ける。平屋を貫いていたタケニタケを切り、崩れた平屋の瓦礫を片付け。

 夕方になったため本日の作業は終了。明日は、産業としての幅を持たせるための乾燥させる施設を作る。


「では、本日は終了です。手が空いていたら、また明日もよろしくお願いします」

「お姉さ、ん! もっと一緒、いたい!」


 本日の作業は終了し、それぞれ解散した。でもオルディちゃんが、もっとわたしと一緒にいたいと言ってくれる。


「レオンハルトさん、どうしましょう?」

「アンネ殿が使っている部屋ならば、グラディア卿もいる。良いのではないか」

「ありがとうございます。オルディちゃん、ニュイカさんに許可をもらいに行こうか」

「うん!」


 オルディちゃんと手を繋ぎ、ニュイカさんの元へ行く。そしてお泊まりの許可をもらって領主の館へ戻った。

 ハプストさんと遭遇したけど、会釈をして通り過ぎる。後ろから視線を感じたけど、気にしない事にした。

 スーザンにオルディちゃんを紹介して、夕食を取って部屋に戻る。


「お姉さ、ん! あのお、兄さんは、お姉さん、の恋人?」

「ち、違うよ! どうしてそう思ったの?」

「お兄さ、んの目。優しい」

「それは詳しくお聞きしたいですね、アンネ様!」


 オルディちゃんはワクワクとした目で、スーザンはキラキラと目を輝かせてわたしを見てくる。ものすごく期待されているみたい。


「……えっと、二人の期待には応えられないかな。レオンハルトさんとは、上司と部下だし(優しい目ってどんな感じ?)」

「私が確認する限りでは、それだけではないと思います! 第二王子殿下の表情は、今までで一番柔らかいと思います!!」

「レオンハルトさんって情が深いよね。関わった人の変化を見守ってくれる。……あれ?」


 つい先日見たばかりの、テッド君の変化を見て表情が柔らかくなっていた事を思い出しながら伝えた。でもスーザンはその表情を見ていないからか、驚愕というような感情を隠さず顔に出す。

 まぁ、スーザンは昼間一緒に行動している訳じゃないから知らないか。

 そんな事を思いながら、オルディちゃんとベッドに入った。







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