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【三章完結】オノマトペ魔法師と堅物廷臣法官長の王宮事件録~わたしの魔法は、国家機密⁉~  作者: いとう縁凛
第三章 「四季禁忌」ハプスト領内乱事件

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閑話休題④ 出張から一ヶ月後

閑話休題のため、少し短めです。

とは言っても、3000字くらいあります……。

第三章の重たい雰囲気を吹き飛ばすような、息抜きになれば。


「あ、オルディちゃんからの手紙だ」


 ハプスト村へ出張してから一ヶ月が経った。

 今日は午前中だけ休み。この後スーザンと約束があるけど、届けられた手紙が気になって封を開けた。


***


お姉さんへ


 お姉さんが帰った後、良い事がたくさんありました。タケニタケの物作りが始まって、村が元気になったと思います。

 わたしが作ったカゴの細かいところを、お母さんが直してくれました。テッドお兄ちゃんも毎日汲んだ水を持ってきてくれます。

 村のみんなも、服装を気にするようになりました。もしかしたら、新しいお父さんができるかもしれません。

 エイダお姉さんが顔を赤くしながら手紙を見ていました。お母さんに聞いたら、エイダお姉さんにも春が来るかもしれないって言っていました。春って何ですか?


 お姉さんのおかげで、村は元気になりました。ありがとうございました。

 また遊びに来てください。


オルディ


***


 ニュイカさんに新しいお父さんって……文面からすると、仕立て屋のティルトさんかな? 髪の悩みを持っていたから顔をよく見ていなかったけど、うっすらと覚えている顔から判断すると、ニュイカさんの少し年上って感じかな。

 ふふっ。それにエイダさんとウィグネスさんの交流も順調みたいだ。

 ハプスト村のその後が幸せそうで良かった。オルディちゃんの手紙が大人っぽく見えるのは、ニュイカさんに内容を確認してもらっているのかもしれない。

 今まで閉塞的な村の中で、話せる相手はニュイカさんぐらい。そのニュイカさんもあまり動けないって言っていたしね。色んな人と話して、自分の考えもちゃんと伝えられるようになっているのかもしれない。次に訪問する時は、オルディちゃんの変化に追いつけないかも。


 手紙を鏡台の引き出しに入れる。

 ルリアーナ姫からもらった保湿クリーム、レオンハルトさんが用意してくれた数々の羽根。それに、オルディちゃんからの手紙。

 鏡台の引き出しを開けるだけで笑顔になれそうだ。


「あ、そろそろ行かないと」


 思い出に浸ってばかりじゃ、スーザンとの約束に遅れちゃう。

 気持ちを切り替え、部屋を出た。そして待ち合わせ場所の天秤宮まで行く。そこにはスーザンの他に弟のソイルさんもいた。


「アンネ様!! おはようございます!」

「姉上、うるさいです」


 二人も午後から仕事みたい。近衛を表す白地に金紋様の鎧を着ている。

 今日はスーザンにオノマトペ魔法をもっと見せるという約束だったけど……ソイルさんもいるって事は、姉弟だね。スーザンに冷たい言葉を投げつつ、期待の眼差しをわたしに向けていた。


「えっと、それじゃぁ始めますけど……二人は何か希望はありあますか」

「アンネ様!! ソイルに敬語なんて必要ありませんよ!! アンネ様の方が立場は上なのですから!」


 ソイルさんを見る。何度も頷いてくれたから、その言葉に甘えようかな。


「じゃぁ、改めて。何か希望があれば」

「アンネ様の全てを肯定します!」

「んー……それなら、ちょっとやってみたい事があるから運動場へ行こう」


 廷臣法官達が日々身体を鍛える、運動場へ移動した。今日は珍しく貸し切りみたいだ。


「じゃぁ、いくよ」


 頭の中でトランポリンと、その後の展開を思い浮かべる。


「ぴょんと乗ったら跳び上がる。高さが出たならジュワッと隠形おんぎょう!」


 体操教室にあるような、大きな水のトランポリンを出した。そしてそこへ飛び乗り、何度も跳ねる。


「わー! アンネ様、素晴らしいです!! アンネ様の身体能力、神々しく輝いています!!」

「姉上、これは普通の運動能力です。それに輝いているのはアンネ様が太陽に照らされているのであって……」


 ソイルさんの方が冷静なのかな。分析しているように見えたけど、その目はキラキラと輝いている。

 ちょっと高く飛びすぎて怖くなってきたし、次の段階へ。

 両手を水のトランポリンに向けると、着地した瞬間に真っ二つに折れた。そしてグラディア姉弟の悲鳴が聞こえる中、パッと両腕を広げる。

 大量の水と火がぶつかり合って、発生した蒸気の量も多い。姉弟がわたしを捜している間にこっそりと二人の背後へ行く。


「っ!!」

「おっと、ストップ。わたしだよ」

「アンネ様!? いつからそこに!?」

「姉上はもっと鍛錬が必要ですね」

「くぅっ……! ソイルの言う通りなのが悔しいっ」


 奇襲に良いでしょと言おうとしたら、ソイルさんが振り返った。その反応速度は、正に近衛。王族を守るにふさわしい対応だね。


「水のトランポリンはともかく、火と水の組み合わせをやってみた。実戦でも使えると思わない?」

「えぇ、実戦向きです!」

「姉上もしくは火属性の魔法師がいれば、同じ事を再現できるって事ですね。勉強になります」

「グラディア卿、ソイル。ロジェナが呼んでいる。すぐに行ってやってくれ」

「「はっ。かしこまりました」」


 運動場にやってきたレオンハルトさんに指示され、姉弟がわたしとレオンハルトさんに一礼してから去って行く。


「レオンハルトさん、今日は午後から仕事ですけど……午前の用事が終わったので今からっていうのはダメですか」

「問題ないが、休める時には休んでおいた方が良い」

「それなら、ちょっと早めのお昼ご飯なんてどうでしょう?」

「了解した。それなら私が案内しよう」

「お願いします!」


 歩き出したレオンハルトさんの隣に並んで、王宮を出た。




 ▲▲▲


 アンネを連れて外へ出たレオンハルトは、屋台が並ぶ東地区を目指す。屋台を選んだ理由は、調理工程が全て見えるから。主に毒殺を懸念しての事だが、それをアンネに伝えはしない。


「レオンハルトさん! あれ、あれが美味しそうです!!」


 まるで子供のように無邪気にはしゃぐ姿は、殺伐とした話すら似合わない。アンネが廷臣法官として働くようになってから一月経ち、手元に資金もあるだろう。

 しかし、レオンハルトは女性に払わせるような男ではない。上司でもあるし、と、くるくると表情を変えるアンネを追いかける。


「泥棒! 誰か捕まえてっ」

「おばあさん!」


 人が集まるところに犯罪も有り。肩掛けをつけた老婆から鞄を盗んだ盗人が、レオンハルトの方へ走ってきた。

 すぐにでも捕縛する体勢を整えようとした時。


「これ、借りますね!! ばさりばさりと絡め取れ! 盗人の足を絡め取れ!」

「ぬあっっ!?」


 老婆の肩掛けを、アンネのオノマトペ魔法で飛ばしたようだ。詠唱の通りに見事に盗人の足に肩掛けが絡みついている。突然の捕縛に、盗人は勢い良く顎をぶつけた。

 肩掛けを解こうと躍起になっている盗人の肩を叩く。


「窃盗の現行犯で逮捕する。観念する事だ」

「ひえっ……」


 一番街東地区を担当する廷臣法官達も定期的な巡回をしていたようだ。すぐにやってきて、犯人の身柄を拘束した。

 犯人の足から解いた肩掛けを持つアンネに、拾った老婆の鞄を渡す。


「アンネ殿のおかげで迅速に鎮圧できた。礼を言う」

「い、いいえっ! わたしは、廷臣法官としての職務を果たしたまでです!!」

「?」


 アンネが顔を赤らめた事に疑問を持ちつつ、老婆に肩掛けと鞄を渡す様子を見守る。

 レオンハルトは知らない。アンネだけではなく、その場に居合わせた人達もその微笑みに目を奪われたという事を。


 老婆に微笑み話を弾ませるアンネを見て、左手に触りながら思う。

 あの笑顔を守るためなら、残りの三つの葉も埋められるだろう、と。


 ▲▲▲


これにて、第三章が終了です。

次は第四章。

ぼちぼち投稿頻度を増やしたいとは思いますが、まだストックに余裕がありません。

構成は十二章で考えているため、まだもう少し(月)(金)更新が続きます。

更新を待っていただける神読者様は、ブックマーク登録をして待っていただけると幸いです。


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