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【連載版】結婚すれば君を一途に愛すと誓うから、今だけは許してくれ?赦せるわけないじゃないですか。  作者: 織子


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Episode25ールーカスの父


会場を出ると、ルーカスはあっさりとヴィオレッタから手を離した。さらに二歩ほど距離も取られた。


(やっぱり避けるのね)

ヴィオレッタは心臓の高鳴りが冷めていくのを感じた。


「何をしに来たのかしら?ああ、お相手を探しに来たの?」


ひどく意地の悪い言い方になってしまった。すぐに後悔したが、言ってしまったものはもうどうしようもない。

ぴりっとした空気がルーカスを包んだ。

「何を言っているのです」

自分に対しては初めて聞く、怒気を孕んだ声だ。


(怒らせてしまった?)

途端にくじけそうになったが、負けじとルーカスを見据えた。


「お相手とは?お嬢様も夜会に新しい相手を探しに来たのですか?」

ルーカスが鋭い目つきのままヴィオレッタに迫る。思わず後ずさったが、果敢にも言い返した。


「私は違うわよ!アナスタシア様の代理で参加しただけよ!相手を探しに来たのはルーカスでしょう!」

叫ぶように言うと、ルーカスの目から怒りの感情が薄らぎ、落ち着いた声音に戻った。


「え?僕がですか?そんなわけがありません。お嬢様を迎えに来たに決まっているでしょう」


聞き捨てならない。もしかしたらここ数日夜まで戻らなかったのは他の夜会に参加していたからなのでは。


「嘘をつかなくてけっこうよ。ここ数日私を避けていたのに」

迎えならば他の者を寄こすはずだ。


ルーカスは困った顔のまま、短く息を吐いた。

「嘘ではありません。ここ数日……避けていたのは、家族が僕の婚約者にお嬢様を望むようになったからで……」


(家族ってアナスタシア様も?えっ?そうなの?)

舞い上がりそうな気持ちを必死で抑える。家族にそう望まれたとて、本人が望んでないのなら意味がない。


「そ、そう。悪かったわね。ルーカスにとっては迷惑なことでしょう」


必死に強がっているのを隠そうとして、やはり口調が悪くなってしまう。

(うう。こんな風に言いたい訳じゃないのに)


ルーカスの顔がさらに困った表情になった。

「……?いえ、僕が迷惑なわけがありません。お嬢様が困ると思い……その、申し訳ございません」

「何故ルーカスが謝るのよ?」

 ヴィオレッタは眉を吊り上げたまま首を傾げた。ルーカスが何を言いたいのか分からない。


ルーカスは言いにくそうに俯いた。

「その、先ほども聞いたでしょう?僕はお嬢様に嘘をつきました」


(先ほど?ロックス令息のことかしら?確かにルーカスの父親の事を言ってはいたけど……あ)


ヴィオレッタは思いついたまま聞いた。

「ルーカス、本当のお父上が誰か知っているの?」


ルーカスのアイスブルーの瞳が暗く輝いた。

「ええ。僕の父は平民の吟遊詩人でした。放浪していたのですが、類まれな美貌を持っており、よく皇城に呼ばれ詩を披露していたそうです。アウレリア皇女はそんな父に一目惚れをしてしまったのです」


(吟遊詩人……!)

父から聞いたことがある。一昔前までは街でも城でも、よく見かけたようだが、今は見なくなったと言っていた。

(でも、帝国の皇女が、平民と駆け落ちなんてあまり現実味が湧かないわ)


ヴィオレッタが思案していると、ルーカスは更に言った。

「アウレリア皇女は優秀な方だったようで、このような問題を起こすとは当時の皇帝も思っていなかったようです。今では皇城に吟遊詩人の立ち入りは禁止されていますし、警備も強化されました」


「そうなのね……」

先程ルーカスが言っていた、『皇室が布いた緘口令』とはこの事なのだろう。


「でもどうしてロックス令息が知っていたの?伯爵の口が軽いのかしら?」

ルーカスは首を振る。

「いえ。吟遊詩人であった父の美貌はとびぬけており、当時皇城で給仕していた者は父の事を鮮明に覚えていたようです。僕はその父と瓜二つらしく……緘口令だけでは噂は収まらなかったのです。今は亡き先代皇帝も、嫌悪感から僕には一度もお会いになりませんでした」


ヴィオレッタは少しずつ苛立ちが募ってきた。

「まあ。前皇帝陛下といえど、ルーカスの祖父にあたる訳でしょう?ひどい話だわ」


腕を組み鼻を鳴らすように言うと、ルーカスは目を瞬いた。

「ふふ。そうですよね」

そう言って短く微笑む。


「今は前皇帝陛下はもういらっしゃらないのだし、ルーカスが後ろめたく思うこともないでしょう」


やはり話をいくら聞いても、ルーカスが引け目に感じていることに納得が出来ない。


腕を組んだまま、ルーカスを見据えた。ルーカスの視線はヴィオレッタを向いていたが、すぐに目を逸らされた。

戸惑うように口を開き、小さな声でルーカスが呟く。


「僕は、父が嫌いなのです」








読んでいただきありがとうございます。


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