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【連載版】結婚すれば君を一途に愛すと誓うから、今だけは許してくれ?赦せるわけないじゃないですか。  作者: 織子


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Episode22ールーカスの憂い

風が吹き、ルーカスの銀髪が揺れて目元にかかった。外で気軽に聞く話ではないのかもしれない。


「あ、言いたくないのなら……」


ヴィオレッタが聞いた事を後悔し始めた時、ルーカスが口を開いた。


「いえ、大丈夫です。……私の実の母は、フロストハイム公爵夫人の妹、アウレリア第二皇女です。二十年ほど前、アウレリア皇女は突如行方不明になりました。皇室騎士団総出で探したのですが見つからず……行方不明になって五年後、僕を連れてフロストハイムへ現れたのです」

「……!」

ヴィオレッタは息を呑む。


「僕は当時三歳でしたので、あまり記憶には残っていませんが……母は身体を壊しており、僕を公爵家に預けてしばらくして亡くなりました」


「……そんな……!」

ヴィオレッタは言葉が出てこない。ルーカスは淡々と言葉を続けた。


「皇室は、僕と亡くなったアウレリア皇女を親子鑑定し、親子と認めましたが……父親が分からないため皇室へ戻す訳にも行かず、フロストハイム公爵家へ養子として入ったのです」

「父親は分からないの?」

「はい……皇室の血を引いているとはいえ、父親の分からない僕がフロストハイムを継ぐわけにはいきません。レオナルド兄上が皇太子になるならば、エドガー兄上がフロストハイムを継ぎ、僕は陰ながら兄達を支えていきたいのです」

「そう……」


(アウレリア皇女殿下は駆け落ちをしたのね…父親が分からないのならば、ルーカスの言い分も分かるけれど……)


言い分は分かる。だけど、どこか腑に落ちない。ヴィオレッタは眉間に皺を寄せた。


「聞いて楽しい話ではありません。さ、お嬢様。朝食をとりに戻りましょう」


もう少し話を聞きたかったが、どう見てもルーカスは言いたくないようだ。無理に聞くことはしたくない。

ルーカスに促され、ヴィオレッタは邸宅に戻った。ダイニングルームへ連れて行かれ、給仕に「朝食を準備してくれ」と指示すると、ルーカスは部屋から出ようとするので、慌てて聞いた。


「ルーカスは食べないの?」

「私は汗をかきましたので、先に流して来ます」


そう言うとルーカスはダイニングルームを出て行った。朝食は皆食べるタイミングが違うらしい。ヴィオレッタはバゲットを口に運びながら思案した。


(父親が誰か分からないとしても、皇女殿下の息子なのは確かで、能力も公爵家の皆様は認めているのでしょう?)

相応しくないと考えているのは、ルーカスだけなのではないだろうか。



◇


朝食を食べ終え、しばらく待ってみたが、ルーカスは戻ってこなかった。


(そう言えば、私はルーカスの部屋を知らないわ)

エントランスにアナスタシアの姿が見えた。


「アナスタシア様」

「あら。ヴィオレッタ。ちょうどよかったわ。今呼びに行かせようと思っていたのよ」

「何か御用でしたか?」


アナスタシアは短く息を吐き、胡乱げに言った。

「ルーカスがね、また皇城へ行ってしまったの。全く。自分のお客様の相手もせずに何をしているのだか……」

ヴィオレッタは沈んだ気持ちを悟られないよう明るい声で言った。継承者が変わる時期など、忙しくて当然だ。

(むしろこんなに忙しい時期に付いてきてしまって、困らせていないかしら)


「気になさらないでください」



しかし、次の日も、そのまた次の日も、ルーカスと顔を合わせることはなかった。夜には帰宅しているようだったが、ヴィオレッタが起きる頃にはすでに出かけており、夜遅くに戻ってくるのだ。

ヴィオレッタはアナスタシアに護衛をつけてもらい、街を観光することは出来たが、ルーカスに案内してもらえると思っていたので気分は沈む。


その日の夜、目が覚めてしまった。水差しの水は切れている。メイドを呼ぶのも忍びない時間なので、ヴィオレッタは給湯室へ向かった。エントランスから声が聞こえる。


(あら?こんな時間に誰かしら?)

ヴィオレッタは立ち止まった。寝着のままなのだ。このままうろついては外聞が良くない。やっぱり部屋へ戻ろうとすると、覚えのある声が聞こえた。


「ルーカス。貴方こんな時間まで何をしているの」

「皇太子殿下に呼ばれているので仕方ありません」

「嘘おっしゃい。こんなに長くかかる用事など、貴方にはないでしょう。ヴィオレッタを避けようとしているみたいだけれど、連れてきたのは貴方でしょう」


(――え)

ヴィオレッタは固まった。たしかに、皇城に呼ばれたにしても、夜遅くまで帰ってこないのはおかしいとは思っていたが。

(私を避けていたからなのね……)


心臓に鉛が落ちたように気分が沈む。


ヴィオレッタはその場を動かず、じっと蹲った。少しでも動けば、この距離ではルーカスに気づかれてしまうかもしれない。この会話を聞いてしまったことを悟られたくない。

エントランスの二人は少し会話をしてそれぞれ自室に戻っていった。

ヴィオレッタは少し間を置いて、静かに客室に戻った。




















読んでいただきありがとうございます。


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