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【連載版】結婚すれば君を一途に愛すと誓うから、今だけは許してくれ?赦せるわけないじゃないですか。  作者: 織子


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Episode17ードレスショップでの一件③


「そんな……!ルーカス様、久しぶりにお会い出来たので、もう少しお話させてくださいませ」

「そのような時間はありません」

縋るように言うナタリアと、すげなく躱すルーカス。ヴィオレッタはアナスタシアに小声で聞いた。途中で遮られたナタリア嬢の言葉が気になっていたのだ。


「アナスタシア様、ナタリア嬢はルーカスの婚約者なのですか?」


婚約者はいないと言っていたものの、もしそうならば、ルーカスも婚約者を蔑ろにしている男になってしまう。


「――違います」

まだ扉の前に立っているルーカスがきっぱりと言った。


(かなり小声で言ったのに聞こえていたのね……)

うちの執事は、耳までいいらしい。アナスタシアを見ると、微笑んで頷いた。


「ええ。違いますよ。ルーカスがエヴァリスへ行く前に、婚約者候補として名が挙がったことがあるけれど、それだけよ」


アナスタシアの言葉にナタリアは食い下がった。


「で、ですが、あの頃候補だった令嬢達には皆もうお相手がいるのですよ?私はルーカス様をお慕いしているのでまだおりません。先日の貴族会議で、ルーカス様がフロストハイムの後継者になることが決まったのでしょう?ならば、早くお相手を決めるべきです!」


(――えっ。ルーカスが?)

三男であるルーカスが後継者に選ばれるということは、兄達に何か問題があったと言うことだ。というかこれは――(私が聞いて良い話なのかしら?)

VIPルームとはいえ、人々が行きかう街中の店舗で話して良いことではなさそうだ。


「口を慎みなさい。ナタリア・ガーラント」

アナスタシアはもう僅かたりとも笑っておらず、冷ややかな声だった。リュシエンヌも絶句している。


さすがのナタリアも青ざめた。

「あ……申し訳ございません……!」


「リドル。馬車を一台用意してちょうだい。ナタリア嬢をガーラント邸まで送り届けなさい」

リドルは頷き、他の店員に指示を出す。

アナスタシアは深く息を吐いた。

「――ふう。ナタリア嬢、家門の機密事項を、このような人目のある場で口にするなんて言語道断です。家門へ正式に抗議しますから、そのつもりでいなさい」

「はい……」

一気に覇気を失ったナタリアが俯く。ヴィオレッタは堪らずルーカスを見た。ナタリアが言ったことが本当ならば、クロイツ家の執事などやっている暇はない。


「ルーカス、本当なの?」

「あ……」

ルーカスが途端に所在ない表情をした。たった今まで冷ややかで淡々としていたのに。


「ちょっと、貴方……!いくら公爵夫人のお友達の娘だからって、ルーカス様を呼び捨てにするなんて……!」

俯いていたナタリアが顔を上げた。――が、すぐにリュシエンヌに口を塞がれた。リュシエンヌの顔には『もうこれ以上余計なことは言うな』と書いてあった。


「お嬢……いえ、ヴィオレッタ嬢はいいのです。貴方がとやかく言うことではありません」

ルーカスがばっさりと言い、『出口はこちらです』と言わんばかりに扉を開けた。


「さあ。行きましょう、ナタリア」

「分かったわ……」

リュシエンヌに促され、ようやくナタリアは部屋を出て行った。


最後にナタリアがこちらを見た。絡みつくような視線が不快で、ヴィオレッタは顔を逸らした。

(ルーカスも大変な令嬢に目を付けられているのね)


アナスタシアが立ち上がる。

「楽しい気分が薄れてしまったわね。ルーカス、ヴィオレッタを連れて先に公爵邸に戻ってくれる?私はもう少し用事がありますからね」



◇


「ルーカス。貴方フロストハイム公爵家のご子息だったのね。びっくりしたじゃない」


帰りの馬車で、咎めるように言ってしまった。とはいえエヴァリスでのカフェでの会話からして、ヴィオレッタがルーカスの生家を知らないことは分かっていただろうに。

一言くらい言ってくれても良かったと思う。問い詰めるような口調になっても仕方がない。


ルーカスは申し訳なさそうに言った。

「すみません……!道中で話そうと思っていたのですが、ばたばたしていて失念していました」


「そうなの?……なら仕方がないわね」

失念とは。ヴィオレッタは素直に驚いた。ルーカスは何事も備えをして、完璧に物事を進めると思っていたからだ。執事のルーカスはそういう男だった。


「お嬢様、気分転換をしに帝国へ来たというのに、騒がしくして申し訳ありません」


ルーカスがぽつりと言った。ヴィオレッタは目を瞬いた。

(私が気分転換に付いて来たと思っていたの?)


ヴィオレッタにしてみれば、ルーカスがお父上に会うのが億劫がっていたから、励ましてあげたいという思いだけだった。

元よりルーカスは何でも出来る。執事として仕事をしている彼を見ていると、ヴィオレッタが手を貸す必要などなかった。しかし今回、ルーカスが困っている様子を初めて見たのだ。だから力になれればと思った。






読んでいただきありがとうございます。


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