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巻き戻すたび、世界の解像度が落ちていく ~彼女を救う15,498回目の夏、僕だけが君を覚えている~  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった


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砂嵐のガレージ

「やれやれ……」


気がつくと、俺はガレージの椅子に座っていた。

ひどい頭痛と、喉の渇き。視界に映るモニターの明かりが、妙に目に刺さる。


「……またか」


デジャヴなんて生易しいものじゃない。これは、確信だ。

俺はデスクの上のデジタル時計を見た。日付は、数日前に戻っている。

モニターに走っていたはずの「未来の俺」からのメッセージは消え、代わりに意味をなさない砂嵐が画面を埋め尽くしていた。


「凛……」


その名前を呼ぶと、胸の奥が焼けるように痛む。

あの坂道での感触。誰も彼女を覚えていなかった絶望。

それらすべてを覚えているのは、この世界で俺一人だけだ。


俺は、震える手でストップウォッチを手に取った。

不思議なことに、この時計だけは「巻き戻って」いない。液晶には、彼女が消えた瞬間の時刻が刻まれたまま、静止している。


「おい、倫! 昼メシ行こうぜ」


ガレージの扉が勢いよく開き、石田が顔を出した。

一瞬、心臓が止まるかと思った。


「……悪い、食欲がないんだ」

「なんだよ、またガジェットのいじりすぎか? ほどほどにしとけよ」


石田の反応は、俺が知っている「昨日」と同じだ。

彼は、凛の存在を欠片も思い出さない。俺がどれだけ叫んでも、この世界にとって彼女は「最初からいなかったもの」として処理されている。


石田が去った後、俺は狂ったように過去のログを叩き起こした。

もし、すべてがループしているなら。もし、この停滞に意味があるなら。

どこかに、このループを抜け出すための「バグ」が残されているはずだ。


「……これか」


数千行に及ぶコードの底。

俺が書いた覚えのない、不可解なディレクトリが見つかった。

ファイル名は『LOG_REMAINS_00.zip』。


それを展開しようとした瞬間、モニターの砂嵐が激しさを増し、スピーカーから耳を裂くようなハウリング音が鳴り響いた。


『――させない』


ノイズの隙間から、誰かの声が聞こえた気がした。

凛の声ではない。もっと無機質で、冷徹な、この世界のシステムそのものが発したような拒絶反応。


俺は、そのノイズに抗うようにエンターキーを叩きつけた。

モニターが激しく明滅し、一瞬、俺の意識は真っ白なノイズの海に飲み込まれた。


「……負けるかよ。宿題は、まだ終わってないんだ」


俺は歯を食いしばり、光の中に手を伸ばした。

この「停滞」こそが、凛を救うための唯一の猶予期間リードタイムだと信じて。

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