↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
370/442

閑話63話 ルナの想い(2)

ある日の午後。


 ルナは研究資料を届けるため、帝国の施設を歩いていた。すると、少し先にアベルの姿が見えた。


「アベル?」


 声をかけようとして、足を止める。

 アベルの隣には、フェリがいた。

 二人は何か話している。


「……」


 ルナは立ち止まった。

 別に珍しい光景ではない。仲間なのだから、二人で話すことくらいある。それなのに、なぜか足が動かなかった。


「アベル、さっきの話なんだけど……」

「うん」


 フェリが嬉しそうに話している。

 アベルも楽しそうに聞いている。


「……」


 ルナは、少しだけ眉を寄せた。何を話しているのか気になる。どうしてそんなに楽しそうなのかも気になる。

 そして、自分でも驚くほど、その場に入りたくなった。


「……私は何をしているの」


 小さく呟き、踵を返そうとする。

 その時、アベルがこちらを見た。


「あ、ルナ」

「……」

「どうした?」

「資料を届けに来ただけ」

「そうか。ちょうどよかった」


 アベルが近づいてくる。


「あとで、ちょっと相談したいんだけど――」

「今、フェリと話しているのでしょう?」

「え?」

「そっちの話が終わってからにしたら?」

「いや、別に大丈夫だけど…。」

「……フェリを待たせてはダメ。」


 ルナはそれだけ言って資料を渡した。


「私は研究室へ戻る」

「ルナ?」

「何?」

「……怒ってる?」

「怒ってない」

「でも、なんかいつもより――」

「怒ってない」

「……そうか」


 アベルは困ったように笑った。

 その顔を見て、ルナはすぐに後悔した。


「……」


 自分でも分かっている。

 アベルは何も悪くない。

 フェリだって何も悪くない。

 なのに、自分だけが勝手に不機嫌になった。研究室へ戻ったルナは、椅子に座ったまま深く息を吐いた。


「……これは」


 原因を考える。

 睡眠不足ではない。

 疲労でもない。

 研究の失敗でもない。

 ならば…


「嫉妬……?」


 その言葉が頭に浮かんだ。


「……まさか」


 ルナは否定しようとした。しかし、昨日までの自分を思い出す。アベルが他の女性と話していると気になる。自分に向けられた言葉を、他の人にも向けていると少し寂しい。


 そして今、フェリと二人で話しているだけで、嫌な気持ちになった。


「……」


 ルナは机へ突っ伏した。


「私、嫉妬していたの?」


 答えは出ない。けれど、その可能性を否定することもできなかった。しばらくして、扉が開いた。


「ルナ」

「……アベル?」

「さっきは悪かった」

「どうしてアベルが謝るの?」

「いや、なんとなく」


 アベルは困ったように笑った。


「でも、ルナが怒ってるなら、ちゃんと理由を聞きたい」

「……」


 ルナは顔を上げた。


「怒ってない」

「そうか?」

「……少しだけ、変だっただけ」

「変?」

「うん」


 ルナは少し考え、それから小さく笑った。


「私にも、よく分からない」


 それが今の精一杯だった。


 ただ一つ分かったことがある。自分はもう、アベルのことを「仲間だから」という理由だけでは説明できなくなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。