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第4話:狙厨 楼の完璧な世界

【狙厨楼が放った弾丸が、賭市村康介の心臓を撃ち抜く可能性:100%】――絶対の死から、俺は失った「味覚の余白」を使って生き延びた。だが、次はない。遠く三十階建てのビルの屋上から、冷徹に次の銃弾を装填する“死神の少女”――狙厨ねらいず ろう。逃げ切る可能性、ゼロ。ならば、すべてのラッキーの破片をかき集め、一瞬で奴の懐まで駆け上がるのみ。「100%の因果」を敷いて満足している少女に、世界をハッキングする本物のギャンブルを教えてやる。狙撃手との決着、屋上の死闘が幕を開け

「……チッ。外した、だと?」はるか遠く、地上三十階のビル屋上。夜風に長い黒髪を揺らしながら、狙厨ねらいず ろうは大型ライフルから目を離し、不愉快そうに眉をひそめた。包帯で片目を覆った細身の少女。その姿は一見、華奢な女子高生にしか見えない。だが彼女の瞳の奥には、冷酷な神の数式が並んでいた。彼女の能力は【因果固定ロックオン】。彼女が引き金を引いた瞬間、その弾丸が標的に命中する確率は、世界のシステムによって『100%』に固定される。相手がどれだけ素早く動こうが、どんな盾を構えようが、弾丸が空間を歪めてでも必ず心臓をブチ抜く。それが、彼女の主(神)から授かった『絶対のルール』。それなのに、地上のあの冴えないモブ――賭市村かけいちむら 康介こうすけは、心臓の空間を文字通り『消去』して弾丸をすり抜けた。「確率の例外バグを起こしたのね。……面白い。でも、次はない」楼は冷ややかに微笑み、ボルトアクションを引いて次弾を装填する。だが、再びスコープを覗いた瞬間、彼女の身体が凍りついた。地上にいるはずの康介が、いなくなっていた。「どこへ行った……!?」『バックステージへようこそ、お嬢さん』不意に、楼の背後から声がした。ガサリ、とジャージの擦れる音。いつの間にか屋上の給水塔の上に、ポテトチップスを食べながら座っている与廼輪年能神(よのわ としの かみ)がいた。「神様……!? なぜここに。私の主(神)との協定はどうしたの」「いやぁ、僕の最高のおもちゃ(康介)がさ。君のいる場所までの『最短ルートの可能性』を全開にして走っちゃってね。ほら、もう来たよ」バシャァァアアンッ!!!屋上の立ち入り禁止の鉄扉が、あり得ないほどの強風の突風によって蝶番ちょうつがいごと吹き飛んだ。そこから現れたのは、息を荒くし、両目から血を流した賭市村康介だった。「はぁ、はぁ……。見つけたぞ、狙厨 楼」「なっ、なぜここまで一瞬で……! 階段を上がってくる確率は計算していたはず!」「計算? そんなもんに縛られてるから、お前は100%しか引けねえんだよ」康介は前髪を乱暴に跳ね上げ、血に染まった『可能性の眼』で楼を睨みつけた。康介は、このビルへ向かう道中、全ての信号が青になる確率、エレベーターがちょうど一階で待っている確率、屋上の扉の鍵が金属疲労で壊れる確率――それら全ての「数パーセントのラッキー」を極限まで集約し、一瞬で最上階までワープするような【奇跡の直通ルート】を強引に作り出したのだ。「化け物が……! だが、この至近距離なら私の勝ちよ!」楼が素早く腰のハンドガンを抜き、康介の眉間に銃口を向けた。「私の【因果固定】は、この距離なら発動まで0.1秒。お前が能力を使うより早く、脳を確定で消し飛ばす!」彼女の指が引き金にかかる。だが、康介は逃げも隠れもしなかった。ただ、ポケットから一粒の『フリスク(ミント菓子)』を取り出し、口に放り込んだだけだった。「……おい、狙厨楼。お前の能力は『確率を100%にする』力だな?」「そうよ。覆らない絶対の未来!」「じゃあ、お前がその引き金を引いた瞬間――」康介は、ミントの強力な刺激(刺激物)が、味覚の消えた自分の脳を激しく突き刺す感覚を、能力の燃料へと変換した。「――お前が持っているその拳銃の全原子が、確率の偏りによって『今この瞬間に、全て液体(水)に相転移する』可能性は何%だ?」「は……?」【銃が液体に変わる可能性:0.000000001%】それは、宇宙が始まってから一度も起きたことのない、物理法則の究極のバグ。だが、ゼロではない。「神様……俺の残った【痛覚】も全部まとめて、この大博打オールインに突っ込む!!!」キィィィイイイン――。世界が、完全に白黒に反転した。康介の瞳のカウンターが、限界を突破して火花を散らす。「消し飛べ、モブ――ッ!!」楼が引き金を引いた、その瞬間。バシャ。彼女のバレルから放たれたのは、鉛の弾丸ではなかった。彼女が握っていたハンドガンそのものが、金属の形を失い、冷たい『ただの水』となって、彼女の手から床へとバシャバシャと流れ落ちたのだ。「え……嘘、私の、銃が……水……!?」完璧だった彼女の世界(100%)が、目の前で粉々に砕け散る。愕然とする狙厨楼の胸ぐらを、康介は血まみれの手で乱暴に掴み取った。「100%ってのはな、冷めててつまらねえんだよ。……俺の勝ちだ、狙厨」康介はありったけの力で、拳を彼女の顔面へと叩き込んだ。(第4話・了)

第4話をお読みいただき、ありがとうございました!確率100%の絶対的な死神――狙厨ねらいず ろうとの屋上の決戦、いかがでしたでしょうか?普通の異能バトルなら「弾を避ける」か「盾で防ぐ」ところですが、康介の【可能性】の力はそんな次元では留まりません。宇宙の歴史で一度も起きたことのない『拳銃の全原子が偶然液体(水)に相転移する確率:0.000000001%』を強引に引き寄せて勝利する、まさに本作ならではの大博打を描いてみました。完璧な世界(100%)を粉々に砕かれた楼の驚愕の表情、そして味覚に続いて「痛覚」まで代償に捧げた康介の執念が、少しでも熱く伝わっていれば嬉しいです!「銃が水に変わる演出、鳥肌立った!」「狙厨楼、敵だけど名前もビジュアルも最高!」と思ってくださった方は、ぜひ応援をよろしくお願いします。画面下のブックマーク追加や、いいね(評価の★★★★★)をポチッと押していただけると、作者のモチベーションの確率が100%に固定されて次回への筆がめちゃくちゃ進みます!それでは、激闘の余韻と次なる展開が動き出す第5話でお会いしましょう!

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