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第3話:味覚障害のレモンと、確率100%の死神

【賭市村康介の味覚が、正常に機能している可能性:0.00%】――世界の因果をハッキングした代償は、すぐに俺の肉体に現れた。すべてのエンタメの欠片をくっつけたようなこの世界は、奇跡を起こした主人公に、そこまで優しくはしてくれない。失われたレモンの酸味。そして、味気ない日常を噛み締める暇もなく、俺の視界カウンターに最悪の真っ赤なアラートが鳴り響く。【10秒後に、心臓を撃ち抜かれて即死する可能性:100.00%】可能性クジすら引かせてもらえない、確率100%の死神との頭脳戦が始まります。

「……おいニート神。これ、何%の確率でバグってんだ?」翌日の放課後。俺――賭市村かけいちむら 康介こうすけは、学校の近くのコンビニ前で、手に持った黄色い果実を睨みつけていた。生のレモンだ。罰ゲームでも何でもない。俺はそれを、ミカンのように皮を剥いて、そのままガブリと丸齧りしていた。「んー、確率っていうか100%バグってるね。君が昨日、世界の因果を捻じ曲げた代償さ」隣で自販機に寄りかかり、メロンソーダを飲んでいる与廼輪年能神(よのわ としの かみ)が、他愛なさそうに笑う。【康介がレモンの『酸味』を認識できる可能性:0.00%】俺の『可能性の眼』が、冷酷な現実(詳細テキスト)を網羅していた。昨日、結衣の存在確率を引き上げるために脳を酷使した結果、俺の脳の味覚神経の可能性リソースが焼き切れたらしい。今、俺の口内を満たしているのは、酸っぱさでも甘さでもない。ただの冷たい水分と、かすかな『消しゴムの粉』のような無機質な味だけだった。「最悪だ。唐揚げにレモンかけられてもキレる資格すら失ったわ」「気の持ちようだよ。激辛ペヤングだって無傷で食える、最強の激辛王になれる可能性は100%だ」「うるせえよ。……ん?」愚痴をこぼした瞬間、視界の端のカウンターが、見たこともない速度でノイズを発した。ピキピキピキ、と文字が引き裂かれるような音。視界に、真っ赤な警告アラートのテキストがズラリと緊急スクロールを始める。【康介が今から10秒後に、心臓を撃ち抜かれて即死する可能性:100.00%】(詳細:対抗能力者【因果固定】の狙撃。弾丸は既に発射され、因果の確定により回避不可)「100%……だと!?」嘘だろ。俺の能力は『低い確率を形にする力』だ。前提として「0.01%」でも生き残る可能性がなければ、発動すらできない。それが、生存確率ではなく、死亡確率が『100%』に固定されている。つまり、避ける可能性も、弾丸が逸れる可能性も、世界に『0%』しか残されていない。「言っただろ、康介」与廼輪年能神が、メロンソーダのストローを咥えたまま、ゾクッとするほど冷たい目で俺を見た。「次の敵は、確率を『100%』にロックしてくる化け物だって。可能性を奪われた君は、ただのモブだ。残り、3秒」正面、はるか遠くのビルの屋上から、目に見えない死の因果が迫ってくる。思考しろ。100%を引っくり返す、この世界に存在しない『バグの欠片』を、俺の脳内でこじ開けろ……!【自分の肉体で弾を避ける:0.00%】【自販機の影に隠れる:0.00%】(弾丸が自販機を透過する因果に固定されている)全部ダメだ。世界が「俺の死」を確定させている。ならば――俺自身の可能性ルールを、もう一度バグらせる。【詳細:俺の味覚神経が『酸味』を100%失っている矛盾の反作用により、今この瞬間に、俺の心臓の位置の空間ごと『存在しない(味のしない)無の概念』に一時的に置き換わる可能性:0.0000001%】味覚が消えた。なら、その消えた「味覚の可能性の余白」を使って、俺の肉体の一部を一時的に世界から「消去ハッキング」して隠す!「神様……俺の『失った五感』ごと、この理不尽に全部賭ける(オールイン)!!」ガギィィィイインッ!!!世界が静止し、俺の胸の中央が、一瞬だけデジタルなモザイクのように完全に透明化(透過)した。その直後、目に見えない弾丸が、俺の心臓があった「空洞」を音もなく通り抜け、背後のコンクリートの壁を木端微塵に粉砕した。「は、がっ……あぁぁああッ!!」口からドッと鮮血が溢れ出た。心臓の空間を強引に確率の隙間に隠した反動で、胸が引き裂かれるような激痛が走る。だが、俺の目の前のカウンターは、100%の死を拒絶し、強引に【生存】へと書き換わっていた。「へぇ……!」与廼輪年能神が、初めてメロンソーダを落として目を見開いた。「自分の『欠陥バグ』を逆利用して、死の因果をすり抜けたか。君、本当に頭がおかしいね」遠くのビルの屋上で、スコープを覗いていたであろう人影が、動揺したように立ち上がるのが見えた。俺は血混じりのレモンを地面に吐き捨て、前髪を乱暴に跳ね上げた。両目のデジタルホログラムが、今度はその狙撃手に向けて牙を剥く。「おい、死神。お前が俺を殺し損ねる確率は『ゼロ』だったんだろ?」視界に、敵の逃走経路の確率が、青い導線となってクッキリと浮かび上がる。「確率100%の運命レールを敷いて満足してんじゃねえよ。ここからは、俺の『可能性』のギャンブルの時間だ」(第3話・了)

第3話をお読みいただき、ありがとうございました!異能の代償で「レモンの味がしなくなる」というコメディ的な展開から、まさかその『失った味覚の余白』を使って生存率0%の即死攻撃をすり抜けるという、自分でも予想外に尖ったトリックが生まれました。確率100%で死を確定させてくる最悪の狙撃手に対し、味覚を失った康介の反撃のギャンブルがここから始まります。与廼輪年能神(よのわ としの かみ)も、ようやくポテトを置いて本気で面白がり始めたようです(笑)。「自分の欠陥を逆利用するの熱すぎる!」「この頭脳戦、次どうなるの!?」と思ってくださった方は、ぜひ応援のほどよろしくお願いします!下にあるブックマーク追加や、いいね(評価の★★★★★)をポチッと押していただけると、康介の次の勝率が100%に跳ね上がります!それでは、狙撃手との決着となる第4話でお会いしましょう!

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