第12話:モノクロのオムライスと、盤上の案内人
【賭市村康介の目に映る世界が、元の鮮やかな色彩を取り戻す可能性:0.00%】――味覚を失い、痛覚を失い、右目の光を失い、ついに俺の世界はモノクローム(白黒)になった。灰色のオムライスを前に、完璧な観察眼を持つ相棒・狙厨 楼にケチャップの位置を教えてもらう、そんな凸凹な日常。だが、最強格のエッペランダーをへし折った俺たちのバグは、世界のシステム(裏側)に無視できないエラーを刻んでいた。部屋を塗りつぶすチェス盤の格子模様。現れたのは、神々のデスゲームを裏で取り仕切る総管理――案内人のトランプ。「世界の上位能力者だけが集う『特設盤面』へご招待いたします」提示された生存確率は、わずか【0.0003%】。拒否権なしの最終決戦(第4章)、神様の特等席ごと全部を引っくり返す大博打が始まり
「……なぁ楼。これ、何%の確率で『ケチャップ』か『ソース』か見分けがつく?」放課後。俺――賭市村 康介は、自宅の狭い六畳一間のワンルームで、フライパンを片手に立ち尽くしていた。エッペランダーとの激闘から一夜明け、俺の視界は完全に『色彩』を失っていた。机の上に置かれた二つのボトル。俺の目には、どちらも同じ「濃い灰色」の液体にしか見えない。味覚を失い、痛覚を失い、右目の光を失い、ついに世界はモノクローム(白黒)になった。「はぁ……。左がケチャップで、右が中濃ソースよ。あんた、本当に私がいなきゃオムライス一つ満足に作れないわね」あきれ顔でボトルを指さしたのは、俺のベッドに腰掛け、漫画を読んでいた狙厨 楼だった。完璧な100%の観察眼を持つ彼女は、今や俺の「失われた色彩」を補うための、なくてはならない外部脳(相棒)だ。「悪りぃな。白黒の世界じゃ、どっちをかけても同じ『灰色のドロドロ』にしか見えねえんだよ」【康介がこのオムライスの色を正しく認識できる可能性:0.00%】視界の端のカウンターが、相変わらず冷徹な現実(詳細テキスト)を告げている。味はしないし、作るときに油が跳ねても熱さを感じない。それでも、隣で楼が「うん、見た目は普通に美味しそう」と呟いてくれるだけで、不思議とモブ人生の退屈さは消え失せていた。「いやぁ、実によい夫婦漫才だねぇ。ポテトチップスが進むよ」天井の照明器具の上に器用にしゃがみ込み、コーラを飲みながらニヤニヤしている与廼輪年能神(よのわ としの かみ)。「おいニート神、勝手に人の部屋を劇場にするな。……ん?」その瞬間、俺の残された左目のカウンターが、今までにない『不気味なバグ』を起こした。ピキピキ、とノイズが走り、視界の白黒の景色が、まるでチェス盤のような「白と黒の格子模様」へと強制的に塗り替えられていく。部屋の壁が、床が、家具が、すべて盤上のマス目へと変質していくのだ。【康介と楼が、この部屋から物理的に一歩でも動ける可能性:0.00%】(詳細:上位権限【盤面支配】の展開。ゲームの『ルール』が上書きされ、ターンが回ってくるまで行動不可)「……動け、ない……!?」楼がベッドから立ち上がろうとした姿勢のまま、彫刻のようにピタリと凝固した。指一本、瞬き一つできない。「あーあ、ついに来ちゃったか」与廼輪年能神がポテトの袋を閉じ、初めて真面目な顔をして照明から飛び降りた。「康介、楼。あいつは他の能力者とは違うよ。神々のデスゲームを裏で取り仕切る、上位の存在だ」部屋のドアが、鍵も開けていないのに静かに開いた。そこから入ってきたのは、仕立ての良いタキシードを着て、シルクハットを被った一人の『男』だった。顔の半分が道化師のような仮面で覆われており、その隙間から覗く瞳は、感情の欠片も存在しないガラス玉のようだった。男は優雅にお辞儀をすると、空間に半透明の『チェスの駒』を浮かび上がらせた。「はじめまして、イレギュラー(バグ)の御一行様。私はこの『神座継承戦』の総管理を務める者――案内人のトランプと申します」その声は、機械の合図音のように冷たく響いた。「賭市村康介様、ならびに狙厨楼様。あなた方は『最強格』であるエッペランダーを、能力の前提を書き換えるという禁忌によって撃破しました。これは、ゲームの運営上、見過ごせないエラーです」トランプが指をパチンと鳴らすと、俺の目の前に、真っ黒な『招待状』が宙に浮かんだ。「これより、あなた方を『特別監視対象』に指定します。次のゲームは、ただの野良試合ではありません。世界中の上位能力者だけが集う、隔離されたデスゲーム『特設盤面』へご招待いたします」トランプの仮面の奥が、三日月のように不気味に歪んだ。「拒否権は存在しません。あなた方が次に進む可能性は、私が『100%』と定義しました。……それでは、盤上でお待ちしております」男の姿が、チェスの駒が消えるようにフッと空気中に溶けて消えた。それと同時に、部屋を縛っていた格子模様が消え、俺たちの身体の自由が戻る。「はぁっ、はぁっ……! 今の、何よ……! プレッシャーだけで心臓が止まるかと思ったわ……!」楼が胸を押さえ、激しく呼吸を乱しながら俺にすがりつく。最強格を倒したことで、ついにゲームの『元締め』を引きずり出したのだ。味覚がなく、痛みを知らず、右目が見えず、世界がモノクロになったモブ主人公。だが、俺の瞳の奥のデジタルカウンターは、男が残していった黒い招待状を捉えて、青く、激しく明滅し始めていた。【隔離された『特設盤面』から、生きて生還できる可能性:0.0003%】「0.0003%……」俺は前髪を跳ね上げ、残された左目で不敵に笑ってみせた。「上等だ。ゼロじゃねえなら、その神様の特等席(盤面)ごと、俺たちが全部引っくり返してやるよ」バラバラの欠片を武器にしたモブと元・死神の、世界を巻き込んだ最終決戦(第4章)が、今度こそ幕を開けた。(第4章・開幕 / 第12話・了)
第12話をお読みいただき、本当にありがとうございました!そして、ここからいよいよ最終決戦(第4章:グランド・ステージ編)が開幕します!世界が完全にモノクロ(白黒)になってしまい、オムライスのケチャップとソースの区別すらつかなくなった康介。それをツンツンしながらも甲斐甲斐しくサポートする相棒・楼の日常コメディ(?)からスタートしましたが……。最強格のエッペランダーを屁理屈でへし折った代償は、ゲームの運営元を直接引きずり出すという最悪のエラーを引き起こしてしまいました。登場したデスゲームの総管理、案内人のトランプ。提示された次なる戦い『特設盤面』の生存確率は、まさかの【0.0003%】。味覚、痛覚、右目の光、そして世界の色彩。人間としてのあらゆるリソースを失った満身創痍のモブ主人公と、完璧な目を持つ元狙撃手の相棒が、世界ランク上位の化け物たちを相手にどうやってこの超絶低確率をハッキングしていくのか。これぞ本作の集大成となる世界のハッキング頭脳戦を全力で描いていきます!「案内人トランプの黒幕感がヤバすぎる!」「生存率0.0003%からどう逆転するのかワクワクが止まらない!」と思ってくださった方は、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。下にあるブックマーク追加や、いいね(評価の★★★★★)をポチッと押していただけると、作者の執筆の可能性が100%に固定されて、第13話の更新スピードが限界突破します!それでは、神様の盤面をひっくり返す第13話でお会いしましょう!




