第13話:ディーラー(ショウホー)の配牌と、不平等な戦場
【賭市村康介と狙厨楼が、このゲームでショウホーに勝利できる可能性:0.0003%】――味覚を失い、痛覚を失い、右目の光を失い、世界の色彩を失った満身創痍のモブ。案内人トランプの招待状によって引きずり込まれたのは、果てしなく広がる『漆黒のカジノテーブル』。そこで俺たちを待っていたのは、特設盤面の総配牌人――案内人のショウホー。彼が持つ【ディーラー】の異能は、ゲームのルールも配られる手札も、すべて自分に都合よくコントロールする絶対のイカサマ。相手の手札は最強の【13(キング)】。俺たちの手札は最低の【1(エース)】。配牌が確定した時点で勝敗が決まる出来レース。だが、トランプの『1』ってのは、ルールのバグ(ハッキング)次第で、キングをも凌駕する世界最強のカードに反転するんだよ。胴元を相手にした命がけのハイ&ロー、大博打が始まります。
第13話:ディーラー(ショウホー)の配牌と、不平等な戦場「ようこそ、奈落の特等席へ」白黒の視界がぐにゃりと歪み、俺と楼が立っていたのは、自分の狭い部屋ではなく、果てしなく広がる『漆黒のカジノテーブル』の上だった。周囲の観客席には、姿の見えない無数の“神々”の気配(視線)が、スタジアムのように俺たちを見下ろしている。そして、巨大なテーブルの向こう側。仕立ての良い漆黒のタキシードを纏い、細長い指でトランプカードを美しくシャッフルしている男がいた。冷徹な切れ込みの入った狐の仮面を被った男――案内人のショウホー。「私はこの特設盤面の総配牌人を務める者、ショウホー。これより、イレギュラー(バグ)であるあなた方の処分を兼ねた、最後のゲームを始めましょう」ショウホーの細い唇が、三日月のように吊り上がった。【康介と楼が、このゲームでショウホーに勝利できる可能性:0.0003%】残された左目のカウンターが、絶望的な数値を冷酷に投射する。味覚を失い、痛覚を失い、右目を失い、世界の色を失った俺。満身創痍のモブ。対する相手は、ゲームを裏で管理する【ディーラー】そのものだ。「おいニート神……アイツの能力、何%でハッキングできる?」俺が呟くと、俺の肩の上にチョコンと乗った与廼輪年能神(よのわ としの かみ)が、珍しくポテトチップスを持たずに肩をすくめた。「0%だね。あいつの能力は【ディーラー(絶対配牌)】。ゲームの『ルール』も、配られる『手札』も、あいつの都合の良いように100%コントロールできる。ギャンブルにおいて、胴元に勝つ方法なんて存在しないのさ」ショウホーが細長い指で、カードを二枚、俺たちの前に滑らせてきた。「ルールは単純。互いに配られたカードの数字の大きさを競う、ただのハイ&ロー(高低勝負)。……ですが、私の能力は【ディーラー】です。私の手元には、常に『最強のカード』が配られるよう、世界の因果が定義されている」ショウホーが自分のカードをめくった。【キング(13)】。このゲームにおける、事実上の絶対最強の数字。「そして、あなた方の手元に配られたカードは――」ショウホーが冷酷に告げる。「【エース(1)】。最低の数字だ。解釈の余地も、確率の変動もありません。配牌(カードの数値)が確定した時点で、ゲームの勝敗は100%私の勝ち。負けたあなた方の心臓は、このテーブルのチップとして没収されます」ドクン、と胸の奥が冷たく凍りつく。相手がイカサマ(能力)で最強のカードを握り、俺たちに最弱のカードを配った。カードを引く『可能性(確率)』そのものを事前に操作された、完全なる出来レース。「康介……ダメよ、カードの数字が完全に固定されてる……! どんなに確率をハッキングしようとしても、1が13に勝てる数式なんて世界に存在しないわ!」隣で、完璧な観察眼を持つ楼が、俺の服の袖を掴んで絶望の声を上げた。手札、1。相手の手札、13。勝率、0.0003%。だが、俺の残された左目の奥で、ギャンブラーの血がドロリと黒く沸き立った。イカサマで良いカードを配った? 胴元が絶対に勝つゲームだと?「おい、ショウホー……」俺はモノクロの視界の中で、自分の前に配られた【1】のカードの文字を、左目でギチリとにらみつけた。「お前は自分でカードを配って、俺たちの数字を『1(エース)』に固定した。……だけどな、トランプの『1』ってのは、ルール(解釈)のバグ次第で、『13(キング)』をも凌駕する世界最強のカード【A】に反転するんだよ」「……何だって?」ショウホーの狐の仮面の奥の目が、わずかに細められた。言葉の定義すら破り捨ててきた俺だ。トランプのゲームのルールの隙間を突くなんて、へ理屈にすらならねえ。「お前は『数字の大きさ』を競うと言ったが、このゲームが【大富豪】や【ブラックジャック】のルールに一瞬でバグる確率、あるいは『1が最強となる特殊ルール』に世界の設定が相転移する可能性は――ゼロじゃねえだろ?」脳の奥、残された最後の『五感のリソース』がパチパチと音を立てて火花を散らす。これ以上能力を使えば、俺は本当にただの『動かない人形』になるかもしれない。だが、構うもんか。目の前に最高の賭け(ギャンブル)があるんだ。「神様……俺の『人間としての最後の欠片』も全部場に出して、この不平等な配牌ごと、お前のカジノ(盤面)をハッキングしてやる(オールイン)!!!!」キィィィイイイン――。漆黒のカジノテーブルが、真っ白なエラーログで埋め尽くされていく。フリーズしていた俺の左目のカウンターが、絶望の数値を置き去りにして、【100%】へと強引に跳ね上がった。(第13話・了)
第13話をお読みいただき、本当にありがとうございました!ついにゲームの元締めである案内人、ショウホーとの直接対決が幕を開けました!【ディーラー】という、手札もルールも思い通りに配れる絶対のイカサマ能力。相手のカードは最強の『13(キング)』、こちらのカードは最弱の『1(エース)』。確率を操作する前に手札を固定されるという、生存確率「0.0003%」の絶望的な出来レースです。ですが、そんな不平等を前に黙ってチップ(命)を払う康介ではありません。トランプの「1」はルール(解釈のバグ)次第で、キングをも凌駕する最強の『A』に化ける――。ゲームの前提そのものをハッキングして強引にカウンターを「100%」へ跳ね上げる、これぞ本作の真骨頂とも言える大博打を描いてみました!人間としてのリソースをすり減らし続け、いよいよ「最後の五感」までチップとして場に出した満身創痍の康介。果たして、ルールを歪められたショウホーの驚愕の表情とは……!?「1が最強のエースに大化けするの熱すぎる!」「胴元を相手にハッキングを仕掛ける康介から目が離せない!」と思ってくださった方は、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。下にあるブックマーク追加や、いいね(評価の★★★★★)をポチッと押していただけると、作者の執筆の可能性が100%にロックされて、ショウホー編の決着へ向けた更新スピードが限界突破します!それでは、ひっくり返った盤面での勝負が描かれる第14話でお会いしましょう!




