表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/13

第10話:主観の誤読と、絶対の辞書

【賭市村康介の持つ【可能性】の能力が、今後一切発動しない可能性:100.00%】――へ理屈の誤読(美肌化)で難を逃れたのも束の間、最強格の独裁者・エッペランダーが放った次なる言葉は、世界の設定そのものの改変だった。【無力】と定義された空間。概念そのものを禁止され、俺の瞳のデジタルカウンターは完全にフリーズしてゼロを示す。クジを引くことすら許されない、完全なるチェックメイト。だが、能力が消されたなら、俺自身の『ただの肉体モブ』が、奇跡の確率で世界の設定を突き破るだけだ。「モブ」の本当の意味を教えてやる。神の敷いた絶対の辞書を破り捨てる第10話、命がけの誤読が完成します。

「――え?」空間のすべてを真っ白な虚無へと変えるはずだった、エッペランダーの【崩壊】。その光が俺たちの身体を包み込んだ直後、狙厨楼ねらいずろうは呆然と自分の両手を見つめて声を漏らした。彼女の、そして俺の衣服に付着していた埃や、肌の古い角質だけがサラサラと綺麗な砂のようになって剥がれ落ちていく。新陳代謝の強制活性化。宇宙の始まりから一度も起きたことのない、言語の意味合いの確率的バグ。俺たちを消滅させるはずだった絶対の死は、ただの『究極の美肌効果』へと強引に書き換えられていた。「はぁ、はぁ、はぁ……!」喉の奥からせり上がる血の泡を吐き捨てる。痛覚はない。だが、世界の記述言語を強制的に誤読ハッキングしたリソースの消費は凄まじく、俺の残された左目の視界までが、チカチカと不吉な砂嵐ノイズを上げ始めていた。【康介の左目の視力が、残り3分で完全に失われる可能性:84.3%】「……嘘。僕の定義ルールを、へ理屈の解釈だけで上書きしたというのかい?」横断歩道の真ん中で、エッペランダーが初めてその美しい眉を不快そうにひそめた。彼が持つ純白の本のページが、パラパラと激しい音を立てて逆めくりに回転していく。「素晴らしいよ、賭市村康介。君の『可能性』は、確かに世界のシステムを一時的にバグらせる。……だけどね、言葉ってのは辞書に載っているものだけじゃないんだ」エッペランダーが、ゆっくりと俺たちに向かって片手をかざした。彼の瞳の奥に、血のように赤い文字の羅列が浮かび上がる。「解釈の余地すら存在しない、絶対の事実を君たちに突きつけよう。――【無力エッペランダー】」ゴ、オオオオオオオンッ!!!目に見えない巨大な概念の質量が、俺と楼の身体に直接のしかかった。ただの重力じゃない。俺の細胞の、筋肉の、脳のすべての運動機能に対して「お前たちは無力である」という絶対の設定が世界から強制されているのだ。「あ、が……っ!?」隣で楼が膝をつき、アスファルトに両手をついた。俺の『可能性の眼』が、最悪のアラートを視界に投射する。【康介の【可能性】の能力が、今後一切発動しない可能性:100.00%】(詳細:エッペランダーの言語定義により、この空間において『可能性』という概念そのものが存在を禁止されたため)「しまっ……!」手が出ない。目のカウンターが、完全にフリーズしてゼロのまま動かなくなる。能力の発動そのものを「無力」と定義され、クジを引くことすら許されない完全なるチェックメイト。「あーあ、完全に詰みだね」ひび割れた空間の端で、与廼輪年能神(よのわ としの かみ)がメロンソーダの缶を放り出し、やれやれと首を振った。「あいつ、言葉の意味だけじゃなく、この空間の『概念の存在そのもの』を消しやがった。康介、君のギャンブルのチップ(可能性)が、場に存在しない状態だ。これじゃあオールインすらできないよ」エッペランダーが、冷徹な独裁者の目で俺たちを見下ろす。「言葉とは、勝者が作る辞書のことだ。可能性を失った君たちは、もうただの平均値のモブに戻ったんだよ。……さあ、終わりだ。――【停止エッペランダー】」彼がその言葉を紡いだ瞬間、俺たちの心臓の鼓動が、ゆっくりと速度を落とし始めた。世界が、完全に『停止』という言葉のレールに向けて閉じていく。生存確率、0.00%。能力の存在確率、0.00%。だが、俺の残された左目は、まだ死んでいなかった。能力が消され、数字が映らなくなった真っ暗な視界の奥で、俺は泥臭く、冷徹に、エッペランダーの言葉を思考し続けていた。「おい、エッペランダー……。お前、今、俺たちのことを『モブ』って言ったよな?」「……それが何か?」「モブってのはな、何の略か知ってるか? ――『フラッシュモブ(群衆の突発的な行動)』のモブだろ」俺は痛覚のない、そして無力と定義されたはずの右拳を、ギチギチと音を立てて握り締めた。能力が消された? 世界の設定が書き換わった?関係ねえよ。俺の身体には、これまで「世界のバグ」を生き残ってきた、イカれたギャンブラーの血が流れてんだよ。「能力が消されたなら、俺自身の『ただの肉体モブ』が、奇跡の確率で設定を突き破るだけだ」キィィィイイイン――。完全なゼロの世界。フリーズしていた俺の左目の奥で、能力のシステムではなく、俺の魂そのものの『可能性』が、真っ赤なエラーを引き起こして爆発した。【無力化された賭市村康介のただの拳が、フラッシュモブ的な突発的バグにより、エッペランダーの顔面にクリーンヒットする可能性:0.0000000000000001%】「神の敷いた辞書なんて、俺のへ理屈で全部破り捨ててやる(オールイン)!!!!」(第10話・了)

第10話をお読みいただき、ありがとうございました!エッペランダーの【無力】によって、康介の最大の武器である「可能性の能力そのものが消去される」という、本作最大の絶望的なチェックメイトを描いてみました。確率のクジすら引かせてもらえない完全なゼロの世界。そこで康介が繰り出したのは、エッペランダーが放った「モブ」という言葉を逆にハッキングし、『モブ = フラッシュモブ(突発的な集団行動)の略だから、ただの肉体が突発的なバグを起こして拳がヒットする確率:0.0000000000000001%』を魂の力で引き寄せるという、最高にイカれた逆転劇でした!ニート神・与廼輪年能神(よのわ としの かみ)も「これじゃオールインすらできないよ」と匙を投げた状況からの、ルール無用の大博打。果たして、設定をへし折った康介の拳はエッペランダーに届くのか!?「モブの意味をそこに繋げるの天才すぎる!」「能力を消されても魂で賭けを続ける康介が熱すぎる!」と思ってくださった方は、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。下にあるブックマーク追加や、いいね(評価の★★★★★)をポチッと押していただけると、作者の執筆の可能性が100%にロックされて、エッペランダー編の決着となる第11話の更新スピードが限界突破します!それでは、絶対の辞書を殴り破る第11話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ