3、サンス・ ナタリア
そして時は今に戻り、リコとサンスが会話した日の夜。星宮部隊。
(レンのやつ、大丈夫か?今頃任務から帰ってきたか、まだ任務の途中のどっちかだな。)
珍しく仕事を押し付けられず、早くに終われたロン。腕や肩を伸ばしながら静かな廊下を歩く。革靴から鳴る足音が響く。
今日こそは早く寝ようと部屋に行く。でもおかしい。自分の部屋には誰もいないはず。でもドアの隙間から電気がついてるように見える。
(誰だ?俺の部屋に忍び込んでるやつは。)
なんとなく想像はつく。呆れながら溜息をつき、部屋に入った。
「やっぱりお前か。こんな所で何してる?さっさと戻れ。」
「お、ロン先輩本日も疲労MAX。お疲れっす。」
部屋にいたのはサンス。呑気にロンの部屋の椅子に座り、勝手に人の本を読んでいた。
「なんで勝手に人の部屋にいる?というかなんで俺の部屋知ってんだ!!」
「まあまあそう怒んないでくださいよ。俺、学校の秘密の場所や宮部隊の裏事情まで知ってる立派なハッカーなんで。誰の部屋がどこにあるか探すくらい俺にとっちゃ朝飯前ですよ。」
「あ〜そうだ。お前ってそういう奴だよな。で?何の用だ?」
呆れることすら諦めたロン。髪をかきあげ、上着を脱ぎ、ハンガーにかける。
「レンのことっす。」
「レン?レンがなんだ。」
「俺、朝噂で聞いたんすよ。あの馬鹿レンが現役と任務に行ったって。それを本当か確かめるためにリコにも聞きに行ったんすけどアイツも何も知らないみたいで。だからロン先輩に聞きに来たってわけです。」
本を読みながら答えるサンス。そして独り言で「あとなんだこの本?こんなつまんねぇ本読んでんのかよ普段。」
とまた勝手に人の本に小言を言う。ロンは普段から難しい本しか読まないためそれがサンスにとってはつまらない。
「なら勝手に読むな。」
と本を取り上げる。
「あ〜本題に入らないと。今レンは何してますか?噂通りですか?それとも宮部隊辞めたとかそんなのですか?」
サンスはロンを見つめながら問いた。
ロンはしばらく考えて口を開いた。
「簡単に言う。噂通りだ。」
「ふ〜ん。アイツがねぇ…。は!生意気な野郎だぜ。この天才な俺を置いていくなんて、随分といい度胸じゃねぇか。」
プライドが非常に高いサンスは誰かに負ける、もしくは誰かの下になることなんて許せない。そのためライバルだと思っていたレンに先を越させるのは彼のプライドが許さないのだ。
「悔しがるくらいならもっと真剣に訓練をやれ。どうせ生意気ほざいて手を抜いたりしてるんだろ?お前のことだ。そんな事有り得る。」
「え〜ヤダ。訓練したくな〜い。あんなのつまんないですよ。周りは雑魚しかいねぇし。長官は上から目線でしか物言えないし。俺、あの連中との相性最悪なんです。」
「今の時期くらい耐えろ。そのままだったらレンのように現役との任務すら行かせて貰えないままクビになるぞ。そんなことになったら本当に困るのはサンス、お前自身だ。ただでさえお前は環境が環境だ。この先の未来も考えないでただ人の言うこと聞きたくないからと生意気ほざいてたらいずれ本当に苦労するぞ。」
「へーへ。わっかりましたよ。お説教はもう沢山です。」
両手を挙げながら答える。
「本当に分かってんのか?お前。」
「分かってますよ。あと、あんまり深掘りしないでください。」
「…分かった。ならさっさと部屋戻れ。明日も早いんだろ。早く戻って早く寝ろ。俺はもう寝る。」
「はいはい。そんじゃあ!情報共有あざす!」
「おー。」
笑顔でロンの部屋から出たサンス。表情は背中を向けた瞬間、一気に曇った。
環境が環境…か。確かにそうだ。あの時のことは思い出しただけで腹が立つ。
俺は俺以外の人間を信用していない。
俺は、大人がこの世で1番大嫌いだ!
俺の名前はサンス・ナタリア。16歳。
なんで大人が嫌いかって?まあそのうち分かる。俺は現役になったとしても隊長や副隊長、そして先輩面してくる隊員の言うことなんか聞くつもりなんかねぇ。
俺は俺だ。縛られたりなんかするもんか。




