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忘却の対価は最果ての愛 ──絶望を悪魔に売却したので、元婚約者の名前すら思い出せません  作者: あとりえむ


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第27話:偽りの誓い、真実の鎖

魔界の城の最深部、黒真珠で敷き詰められた儀式の間。

そこには、人間界のどんな教会よりも厳かで、そして禍々しい静寂が満ちていた。


祭壇の前に立つゼパルは、リリアーナの震える小さな手を、慈しむように包み込んでいる。


「リリアーナ。お前に、私のすべてを捧げる準備ができた。魔界に古くから伝わる、魂の血約を結びたいのだ」


ゼパルの琥珀色の瞳が、執着と独占欲を隠そうともせずに燃え上がっている。


「これでお前と私は、魔力が尽き、命が尽きるその瞬間まで、一瞬たりとも離れることはなくなる。お前の痛みも、喜びも、すべてが私のものとなり、私の守護がお前を永遠に包み込むだろう」


リリアーナは、その言葉を純粋な愛の告白として受け取り、頬を薔薇色に染めた。


「……そんな、私のような者に、そこまで……。ありがとうございます、ゼパル様。貴方は私の恩人であり、私のすべてです。喜んで、その誓いを受け入れますわ」


彼女の返答に、ゼパルは満足げに目を細めた。

彼は懐から、絶望の結晶で研ぎ澄まれた銀の小刀を取り出す。


その瞬間、鏡の裏側の断絶の間では、アリステアが狂ったように鏡を叩き、血を吐くような絶叫を上げていた。


やめろ! リリアーナ、それを受けてはいけない!

それは愛ではない。お前を永遠に、その男の家畜にするための呪いだ!

頼む、僕を見てくれ、僕を思い出してくれ!!


アリステアの叫びは、魔法の壁に遮られ、一音たりともリリアーナには届かない。

彼は、かつて自分がリリアーナを婚姻という契約で縛り付け、利用し尽くしたことの写し鏡を、今、特等席で見せつけられているのだ。


ゼパルはわざと鏡の方を一瞥し、アリステアの絶望を確認すると、リリアーナの指先に小刀を当てた。


一滴の紅い血が、黒真珠の床に滴り落ちる。

ゼパルも自らの指を切り、二人の血が混ざり合った瞬間、爆発的な魔力が室内を渦巻いた。


「契約は成った。リリアーナ、お前はもう、どこへも行けない。死神でさえ、お前を私から奪うことはできない」


リリアーナの視界に、不可視の鎖が自分の魂に巻き付く光景が見えた気がした。

けれど、彼女はそれを温かな抱擁だと信じ、ゼパルの胸に身を委ねた。


魂が結びついた衝撃で、彼女の脳内に残っていた過去への微かな未練が、ゼパルの強大な魔力によって完全に圧殺され、塗りつぶされていく。


「……あぁ、不思議ですわ。今、とても幸せで、とても……静かな気持ちです」


リリアーナは微笑み、ゼパルに甘い接吻を返した。

彼女を救い出す可能性は、これでこの世から一滴も残らず消滅した。


たとえ奇跡が起きて、アリステアが彼女を連れ戻そうとしても、彼女の魂はゼパルの所有物として、魔界の深淵に固定されている。


鏡の裏側で、アリステアは力なく床に伏した。

リリアーナが微笑んで契約を交わしたあの瞬間、自分と彼女を繋いでいた最後の縁が、塵となって消え去ったことを悟ったのだ。



ハッピーエンドという名の、冷酷な完結。

ゼパルは、自分だけの生ける宝石を腕の中に抱き、その重厚な鎖の感触を愉悦とともに噛み締めていた。



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