# エピソード ## 「雪の夜、君のぬくもり」
# エピソード
## 「雪の夜、君のぬくもり」
雪灯りが、夜空へ舞っていた。
青。
白。
金色。
無数の光が、
ゆっくり空へ昇っていく。
まるで願いみたいだった。
春たちは、
しばらくその景色を見上げていた。
誰もすぐには喋らない。
静かで。
暖かい時間。
その時。
女の子のお母さんが駆け寄ってきた。
「ルナ!!」
女の子が笑顔になる。
「ママ!」
どうやら、
無事見つかったらしい。
お母さんは何度も頭を下げた。
「ありがとうございました……!」
春は笑う。
「よかった」
女の子は帰る前に、
春たちを見上げた。
そして。
にこっと笑う。
「おにーちゃんたち、ずっと仲良しでいてね!」
結衣。
「────っ!?」
春。
「お、おう?」
女の子はそのまま去っていった。
残された二人。
気まずい。
超気まずい。
アリアはちょっと面白そうに見ている。
黒銀の羽根が、
ふわふわ舞っていた。
ルナがどこからか現れる。
「青春の匂いが濃い」
「どこ行ってたの!?」
「焼き魚屋台巡り」
「自由すぎる!」
その時だった。
──ヒュォォォ……
冷たい風が吹く。
結衣が小さく震えた。
「さむっ」
春はすぐ自分のマフラーを外す。
「ほら」
結衣へ巻こうとする。
結衣、固まる。
「え」
春は自然だった。
「風強いし」
結衣の顔が赤くなる。
「だ、大丈夫だよ!?」
「風邪引くだろ」
「でも春くんが寒いじゃん!」
すると。
春が少し笑う。
「結衣が寒いほうが嫌」
結衣。
停止。
アリア。
『……天然って怖い』
ルナ、深く頷く。
「無自覚破壊兵器」
結衣はもう限界だった。
「もぉぉぉ……」
真っ赤になって俯く。
でも。
マフラーは外さなかった。
その時。
空へ、大きな光が打ち上がった。
──パァァァァン!!
花火だった。
雪の国の冬花火。
白い夜空へ、
青と金の光が広がる。
結衣が目を輝かせる。
「すごい……!」
春も見上げる。
その横で。
アリアは少しだけ、
二人を見ていた。
春。
結衣。
笑い合ってる。
暖かそうで。
少し羨ましい。
その時。
春が振り返った。
「アリア」
『……?』
春は笑う。
「来てよかったな」
アリアは目を丸くする。
その言葉が、
胸へ静かに落ちる。
来てよかった。
仲間になってよかった。
そんなふうに思ったこと、
今まで一度もなかった。
黒銀の羽根が、
夜空へ舞う。
アリアは小さく笑った。
『……うん』
だが、その瞬間だった。
遠くの空。
花火のさらに向こう。
黒い光が、一瞬だけ走った。
──ゾワッ。
春の表情が変わる。
結衣も気づく。
アリアの羽根が揺れた。
空気が冷える。
そして。
エリシアが低く呟いた。
「……来ます」
祭りの夜。
静かな不穏が、
雪の国へ近づいていた。




