# エピソード ## 「雪灯りの下、君と笑う」
# エピソード
## 「雪灯りの下、君と笑う」
雪祭りの夜。
街には無数のランタンが浮かんでいた。
青い光。
金色の光。
雪へ反射して、
まるで星空が地面へ降りてきたみたいだった。
写真撮影のあと。
春たちは自由行動になっていた。
リリィは屋台へ一直線。
「チョコバナナですぅぅ!!」
レオナは酒屋へ消えた。
ミアが追いかける。
「ちょっと待ちなさい!」
ルナは焼き魚屋台を見つけて目を輝かせている。
そして。
気づけば。
春と結衣。
二人きりになっていた。
「……あ」
「……あ」
ちょっと気まずい。
結衣は視線を逸らす。
さっきの、
“可愛い”発言を思い出してしまう。
心臓がうるさい。
春も少し照れていた。
すると。
通りの奥で、
雪のランタンが光っていた。
結衣が小さく言う。
「……見に行く?」
春は笑う。
「行くか」
二人は並んで歩き始めた。
静かな夜。
周囲は賑やかなのに、
二人の間だけ少し落ち着いている。
雪が降ってきた。
ふわり。
白い雪が、
結衣の髪へ落ちる。
春は何気なく手を伸ばした。
「ついてる」
さらっと雪を払う。
結衣、停止。
「────っ」
また近い。
近すぎる。
春は全然気づいてない。
結衣は顔を赤くしながら言う。
「春くんって……」
「ん?」
「距離近い……」
春、きょとん。
「そう?」
「そうだよ!?」
その時。
通りの向こうで、
子どもの泣き声が聞こえた。
「うぅ……」
小さな女の子だった。
迷子らしい。
春はすぐしゃがみ込む。
「大丈夫か?」
女の子は涙目。
「ママがいないの……」
結衣も優しく笑う。
「一緒に探そっか」
女の子はこくりと頷いた。
その後。
三人で祭りを歩くことになった。
だが。
途中で。
女の子が突然、
春と結衣の手を繋がせた。
「……?」
春&結衣。
「「え?」」
女の子は真顔。
「カップルは手つなぐんでしょ?」
結衣、爆発。
「ち、違うの!!」
春も慌てる。
「誤解だって!」
だが。
女の子は不思議そう。
「でも仲良しだよ?」
二人、黙る。
否定できない。
その時だった。
遠くから、
アリアの声。
『……見つけた』
振り返ると。
アリアがいた。
しかも。
黒銀の羽根へ、
雪が積もっている。
結衣が驚く。
「アリアさん!?」
アリアは少し息を切らしていた。
『二人とも、急にいなくなるから』
その声が、
ちょっとだけ寂しそうだった。
春は笑う。
「ごめん」
アリアは小さく視線を逸らす。
その時。
女の子がアリアを見る。
「わぁ……きれい」
アリアが固まる。
『……え』
「おねーちゃん、羽きれい!」
アリアは言葉を失った。
昔は。
その羽を怖がられた。
化け物みたいに言われた。
でも。
この子は笑っている。
まっすぐに。
アリアの黒銀の羽根を、
綺麗だと言った。
アリアの瞳が揺れる。
黒銀の羽根が、
ふわりと舞った。
結衣が優しく笑う。
「うん。すごく綺麗」
春も頷く。
「似合ってる」
アリアは少し俯いた。
顔が赤い。
『……ずるい』
「え?」
『そういうこと、自然に言う』
春。
「?」
結衣、即答。
「そこがずるいの!!」
その瞬間。
遠くで鐘が鳴った。
──カァァン……
祭りの光が、
一斉に空へ浮かび上がる。
雪灯り。
夜空へ舞う無数の光。
結衣は思わず息を呑む。
「……綺麗」
春も空を見上げる。
その横顔を。
結衣は少しだけ見つめていた。
すると。
春が不意に言う。
「こういう時間、好きだな」
結衣の胸が熱くなる。
春は空を見たまま続けた。
「みんなで笑ってる時間」
「結衣が笑ってる時間」
その言葉に。
結衣は、
もう何も言えなくなった。
ただ。
雪の中で、
嬉しそうに笑った。




