「恋の匂いと干し魚事件」
次の日。
春たちは、星雪の国ルミナスへ向かう途中だった。
だが。
現在──
「待てぇぇぇぇ!!」
雪原を全力疾走していた。
理由。
ルナが逃げた。
しかも。
宿屋の高級干し魚をくわえたまま。
ルナは雪の上を爆走する。
「ふっ、この魚からは“運命”を感じた」
宿屋のおばちゃん激怒。
「金払ってけぇぇ!!」
レオナ大爆笑。
「アホすぎる!!」
春は必死だった。
「ルナ止まれぇ!!」
結衣も追いかける。
「もぉぉぉ!!」
アリアは少し遅れて走っていた。
『……毎日騒がしい』
でも。
ちょっと楽しそうだった。
その時。
ルナが雪へ突っ込む。
──ズボッ。
「あっ」
落とし穴。
次の瞬間。
春も落ちた。
「うわぁぁ!?」
さらに。
結衣も止まれない。
「きゃぁっ!」
──どさぁぁ!!
三人まとめて穴へ落下。
上からレオナの爆笑が響く。
「コントかお前ら!!」
穴の中。
春の上に結衣。
さらにその上にルナ。
「ぐえっ」
結衣が真っ赤になる。
「ご、ごめん!!」
慌てて離れようとする。
だが。
滑る。
また春へ倒れる。
──どんっ。
超近い。
春「……」
結衣「……」
心臓がうるさい。
ルナが真顔で言う。
「恋の落とし穴」
「うるさい!!」
その時。
上からアリアが覗き込んだ。
『……何してるの?』
春が真顔。
「俺も知りたい」
アリアは少し考える。
それから。
ふっと黒銀の羽根を舞わせた。
ロープ代わりにするらしい。
だが。
慣れてない。
羽根が途中で絡まる。
結果。
アリアも落ちた。
──どさっ。
今度は春の横。
アリア、数秒停止。
『……狭い』
結衣が何故かちょっとむっとする。
「……近い」
アリア「?」
春「?」
ルナだけ全部理解していた。
「修羅場の香りが熟成されてきた」
「されてない!!」
その時だった。
穴の奥から、低い唸り声。
──グルルル……
全員が止まる。
春がゆっくり振り向く。
そこには。
巨大な雪熊。
しかも冬眠中だったらしい。
今、めちゃくちゃ機嫌が悪い。
数秒沈黙。
雪熊。
「グォォォォォ!!!」
春たち。
「「「ぎゃぁぁぁぁ!!!」」」
結局。
全員で雪原を全力疾走することになった。
リリィは転びながら叫ぶ。
「朝からイベント多すぎですぅぅ!!」
ミアがキレる。
「誰のせいだと思ってるのルナぁぁ!!」
ルナは魚をくわえたまま言った。
「後悔はしていない」




