今度は、ちゃんと笑っていた。
吹雪の中。
春と結衣は、手を繋いだまま雪原を駆けていた。
──ゴゴゴゴゴ!!
後ろから雪崩。
レオナが叫ぶ。
「速ぇぇぇぇ!?」
ミアがツッコむ。
「なんで手繋いだまま走れてるの!?」
結衣は必死だった。
「だ、だって離したら転びそうだし!!」
春も必死。
「俺も今それどころじゃない!!」
だが。
めちゃくちゃ息ぴったりだった。
リリィが目を輝かせる。
「夫婦ですぅぅ!!」
「違うから!!」
その瞬間。
春が雪へ足を取られる。
「あ」
ズルッ。
そのまま結衣ごと転倒。
──どさぁぁっ!!
雪煙が舞う。
レオナが爆笑。
「ダサすぎるだろぉ!!」
結衣は春の上へ乗っかる形になっていた。
超近い。
鼻先が触れそう。
結衣の顔が真っ赤になる。
「〜〜〜っ!!」
春も固まる。
心臓がうるさい。
その時。
ルナが真顔で言った。
「キスイベント?」
「違う!!!!」
アリアが少し離れた場所で見ている。
そして。
ぽつり。
『……仲良い』
結衣がさらに赤くなる。
「な、仲良くないもん!!」
春も混乱。
「いや仲良いだろ!?」
「なんで春くんが肯定するの!?」
ミアが頭を抱える。
「戦闘中なんだけど!?」
すると。
巨大深淵獣が怒って突っ込んできた。
──グォォォ!!
春が慌てて立ち上がる。
「やばっ!」
だが。
結衣のマフラーが春の剣に引っかかった。
「え?」
「うわっ」
二人同時にまた転ぶ。
──どしゃぁぁ!!
レオナ、腹筋崩壊。
「漫才かお前ら!!」
深淵獣ですら困惑して止まっていた。
リリィが真顔で言う。
「敵も引いてますぅ」
アリアが小さく吹き出す。
『……ふふ』
全員が止まる。
結衣が目を丸くした。
「アリアさん……今笑った?」
アリアはハッとする。
『ち、違』
でも。
黒銀の羽根が、ふわふわ舞っていた。
ルナが即答。
「楽しい羽根」
『だから違う!!』
その瞬間。
深淵獣が再び咆哮した。
春が剣を構える。
だが。
結衣が先に前へ出る。
「咲いて──Promise Bloom!」
金色の花が雪原へ広がる。
深淵獣の足元が凍る。
春が笑った。
「ナイス!」
結衣も笑う。
「えへへ♪」
その時。
春が突然真顔になる。
「……結衣」
「え?」
春はそっと結衣の頭へ手を伸ばした。
結衣の顔が真っ赤になる。
「!?!?!」
だが。
春が取ったのは。
髪についていた雪玉。
「雪ついてた」
結衣、数秒停止。
リリィが転げ回る。
「鈍感ですぅぅぅ!!」
レオナが天を仰ぐ。
「こいつラスボスより手強いわ……」
アリアはまた吹き出した。
今度は、ちゃんと笑っていた。




