翌朝
翌朝。
山小屋の外は、一面の銀世界だった。
白い雪。
吐く息も白い。
リリィは朝から雪へ突っ込んでいる。
「ふわふわですぅぅ!!」
レオナは雪玉を投げていた。
「くらえぇ!!」
「子どもですか!?」
ミアのツッコミが飛ぶ。
そんな中。
春は荷物を整えていた。
すると。
結衣がそっと近づく。
「……はい」
温かい飲み物を差し出した。
春は少し驚く。
「俺に?」
「うん」
春は笑った。
「ありがと」
結衣の胸が少しだけ高鳴る。
最近。
春に笑われるだけで嬉しい。
その時。
アリアが静かに外へ出てきた。
雪景色を見上げる。
『……綺麗』
黒銀の羽根が、ふわりと舞った。
結衣が笑う。
「アリアさん、雪好き?」
アリアは少し考える。
『嫌いじゃない』
『音が静かになるから』
春は頷いた。
「わかる」
アリアが少し目を丸くする。
春は空を見る。
「雪の日って、世界が優しくなる感じする」
アリアの瞳が揺れる。
そんなふうに考えたこと、なかった。
でも。
少しだけ分かる気がした。
その時。
遠くの空から、黒い魔力が流れてきた。
ゼルヴァが即座に反応する。
「敵だ」
空気が変わる。
雪原の奥。
黒い影たちが現れる。
深淵獣。
しかも数が多い。
ミアが顔をしかめる。
「朝から最悪……!」
リリィが杖を構える。
「やるですぅ!!」
春は剣を抜いた。
虹色の粒子が舞う。
その瞬間。
結衣が小さく深呼吸する。
そして。
笑った。
「咲いて──Promise Bloom!」
金色の花が雪原へ広がる。
リリィが目を輝かせる。
「きたですぅぅ!!」
結衣の“お決まり”。
魔法の言葉。
敵の動きが止まる。
春が前へ出る。
剣を肩へ担ぎ。
ニッと笑う。
「一人じゃない」
その瞬間。
世界樹剣が輝いた。
レオナが笑う。
「春の決め台詞きたぁ!!」
春が飛び込む。
──ザァァン!!
深淵獣を一閃。
アリアも黒翼を広げた。
雪の中で、黒銀の羽根が舞う。
『……もう、怖くない』
その言葉と同時に。
黒羽が刃へ変わる。
深淵獣たちを貫いた。
結衣が少し嬉しそうに笑う。
アリアにも“決まり”ができ始めていた。
その時。
巨大な深淵獣が現れる。
雪を割って飛び出した。
レオナが叫ぶ。
「デカいぞ!!」
春が前へ出る。
だが。
深淵獣の咆哮で、雪崩が起きた。
──ゴゴゴゴゴ!!
大量の雪が迫る。
結衣が息を呑む。
「春くん!!」
春は振り返り、笑う。
「大丈夫」
そして。
手を差し出した。
「一緒に来るか?」
結衣は一瞬固まって。
それから笑った。
「うん!」
二人は同時に走り出す。
手を繋いだまま。
紋章が輝く。
虹色と金色。
吹雪の中。
まるで光そのものみたいだった。
ルナがニヤニヤする。
「青春の匂いがする」
アリアが小さく呟く。
『……ずるい』
結衣が振り返る。
「え?」
アリアは少しだけ頬を赤くした。
『なんでもない』
すると。
黒銀の羽根が、またふわっと舞った。
ルナが即答する。
「照れの羽根」
『違う!!』




