ルナが目を細める。 「修羅場の匂いがする」 「しないから!!」
その夜。
一行は、小さな山小屋で休むことになった。
外は雪。
しんしんと降り続いている。
暖炉の火だけが、静かに揺れていた。
リリィは毛布に包まっている。
「ぬくぬくですぅ……」
レオナはソファで爆睡。
ミアは地図を睨みながら難しい顔をしていた。
「星雪の国ルミナスまで、あと三日」
「でも、この先は深淵の影響が強い」
エリシアも静かに頷く。
「気を抜けません」
その少し離れた場所。
春は窓際に立って、雪を見ていた。
静かな夜。
でも。
どこか落ち着かなかった。
その時。
後ろから、小さな足音。
「……眠れないの?」
結衣だった。
白い毛布を抱えている。
春は少し笑う。
「まあ、ちょっと」
結衣は隣へ来た。
窓の外を見る。
白い世界。
綺麗だった。
しばらく沈黙。
でも。
不思議と気まずくない。
結衣は小さく呟く。
「アリアさん、少し元気なかったね」
春も頷く。
助かったとはいえ。
まだ心の傷は深い。
ずっと一人で戦ってきたんだ。
簡単には消えない。
春は静かに言う。
「焦らなくていいと思う」
結衣は春を見る。
春は雪景色を見ながら続けた。
「ゆっくりでいい」
「ちゃんと笑えるようになれば」
その言葉が、すごく春らしかった。
結衣は少し笑う。
「春くんってさ」
「ん?」
「ほんと、人のこと放っておけないよね」
春は苦笑する。
「放っておけないんだから仕方ない」
結衣が笑う。
その時。
部屋の奥で、ガタンと音がした。
二人が振り向く。
アリアだった。
どうやら水を飲みに来たらしい。
だが。
春と結衣が並んでるのを見て、少し固まる。
『……邪魔した』
くるっと戻ろうとする。
結衣が慌てる。
「ち、違うの!」
春も焦る。
「誤解されるようなこと何もないから!」
レオナが寝ぼけながら言った。
「いやもう付き合ってるだろ……」
「寝言で混ぜ返すなぁ!!」
リリィが起きる。
「恋の匂いですぅ?」
ルナだった。
いつの間にか暖炉の上にいる。
アリアが少し目を丸くする。
『……毎日こんな感じなの?』
ミアがため息をつく。
「うん」
アリアは少しだけ笑った。
本当に少しだけ。
でも。
その笑顔を見て、結衣は嬉しくなった。
ちゃんと笑えるようになってきてる。
その時だった。
アリアの黒銀の羽根が、ふわりと舞った。
結衣が気づく。
「あ」
羽根は、春の肩へ落ちる。
アリアが少し慌てた。
『ち、違う』
『今のは勝手に……』
ルナがニヤニヤしている。
「照れの羽根」
『違う!!』
春は羽根を拾う。
黒銀色。
でも。
触ると少し暖かかった。
春は笑う。
「綺麗だな」
アリアの顔が赤くなる。
『っ……!』
結衣はその反応を見て、少しだけ頬を膨らませた。
春が気づく。
「結衣?」
「……別に」
でも。
ちょっとだけモヤモヤした。
その瞬間。
ルナが目を細める。
「修羅場の匂いがする」
「しないから!!」




