表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
85/102

三人は、新しい旅路へ歩き出した。

──パリン。


巨大な黒い眼が、夜空の中で砕け散った。


黒い破片は、まるで灰みたいに風へ溶けていく。


静寂。


さっきまで世界を覆っていた圧迫感が、嘘みたいに消えていた。


川の流れる音だけが響く。


誰も、すぐには動けなかった。


リリィがぽかんと口を開ける。


「……勝ったですぅ?」


レオナが力なく座り込む。


「うそだろ……マジで……」


ミアも呆然としていた。


「深淵王の端末を……消し飛ばした……?」


ゼルヴァは静かに剣を収める。


「……奇跡だな」


だが。


春はその場へ膝をついた。


「っ……!」


限界だった。


魔力も、体力も、全部使い切った。


結衣が慌てて駆け寄る。


「春くん!!」


春は笑おうとする。


「へーき……」


全然平気じゃない。


結衣は半泣きだった。


「もう! 無茶しすぎ!!」


春は苦笑する。


「ごめんって……」


その時。


ふわり、と。


誰かの羽が、春へ触れた。


アリアだった。


黒銀の翼が、優しく春を包む。


アリアは少し俯きながら、小さく言った。


『……ありがとう』


春が顔を上げる。


アリアはまだ少し泣きそうだった。


『助けてくれて』


『信じてくれて』


春は笑う。


「仲間だろ」


アリアの瞳が揺れる。


その言葉。


ずっと欲しかった。


結衣も優しく笑った。


「これから、よろしくね」


アリアはしばらく黙っていた。


それから。


本当に小さく笑う。


壊れそうで。


でも、綺麗な笑顔だった。


『……うん』


その瞬間。


第二の鍵が、再び光り始めた。


──パァァ……


水色の光が空へ広がる。


すると。


空中へ、新しい紋章が現れた。


三つ目の鍵の位置。


遠い。


ずっと北。


雪と星の光が見える。


エリシアが静かに呟く。


「……星雪の国ルミナス」


ミアが地図を開く。


「かなり遠いよ」


「しかも、深淵六王の本拠地に近い」


空気が少し重くなる。


だが。


春は立ち上がった。


ふらつきながらも。


結衣が慌てて支える。


「だから無茶しないでってば!」


春は少し笑う。


「支えてくれるなら平気」


結衣の顔が真っ赤になる。


「そ、そういうの自然に言うのずるい!!」


レオナが爆笑する。


「もう付き合えぇぇ!!」


「違うって!!」


アリアはその光景を見て、少し目を丸くしていた。


こんなふうに笑い合う時間。


知らなかった。


ずっと。


戦うことしかなかったから。


リリィがアリアの手を引っ張る。


「アリアさんも来るですぅ!」


『え……』


「みんな仲間ですぅ!」


アリアは戸惑う。


でも。


結衣も笑って頷いた。


「一緒に行こう」


春も笑う。


「歓迎する」


その瞬間。


アリアの胸が、また熱くなった。


泣きそうになる。


でも。


今度の涙は、苦しくなかった。


夜空には、星が広がっていた。


深い闇の先。


それでも。


小さな光は、ちゃんと輝いている。


春は空を見上げる。


その隣へ、結衣が並ぶ。


さらに反対側へ、アリアも立った。


一人じゃない。


その暖かさを感じながら。


三人は、新しい旅路へ歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ