巨大な光が、空を覆った。
虹色と金色の光が、空を貫いた。
──パァァァァァァァ!!!!
その瞬間。
世界が静止したみたいだった。
暴れていた川が止まる。
吹き荒れていた闇が揺らぐ。
空を覆っていた巨大な黒い眼ですら、一瞬だけ沈黙した。
春と結衣の手は、強く繋がっていた。
暖かい。
鼓動が伝わる。
怖いのに。
不思議と、前を向けた。
《感情共鳴率──完全同期》
《条件達成》
《真名解放》
結衣の魔導書が、今までにない光を放つ。
ページが高速でめくられる。
そして。
最後のページへ、文字が浮かび上がった。
《Eternal Bloom》
エリシアが息を呑む。
「まさか……」
ゼルヴァの目も見開かれる。
「伝承級術式……!」
春の世界樹剣が、虹色の粒子へ変わっていく。
結衣の杖も、金色の花へ姿を変えた。
二つの光が重なり合う。
その中心で。
春は結衣を見る。
結衣も春を見る。
言葉なんて、いらなかった。
一緒に行く。
その気持ちだけで十分だった。
春が笑う。
「行こう、結衣」
結衣も涙を拭いて笑う。
「うん!!」
その瞬間。
巨大な光の花が、世界へ咲いた。
──ズァァァァァァァ!!!
虹色の世界樹。
金色の星花。
二つが絡み合い、“一本の光”になる。
暖かい。
優しい。
でも。
圧倒的だった。
深淵王の黒い眼が初めて揺らぐ。
──『……何だ、その力は』
春が叫ぶ。
「誰かを想う力だ!!」
結衣も涙声で叫ぶ。
「一人じゃないって、信じる力!!」
光が、アリアを包み込む。
黒い鎖が砕ける。
──パリン!!
アリアが目を見開く。
『ぁ……』
深淵王が低く唸る。
──『やめろ』
だが。
二人は止まらない。
春は剣を振るう。
結衣は花を咲かせる。
光が、闇を押し返していく。
アリアの瞳から、涙がこぼれた。
『……あったかい』
忘れていた。
誰かが手を伸ばしてくれる感覚。
怖くても。
泣いても。
隣にいてくれる人がいること。
結衣はアリアへ手を伸ばす。
「こっちへ来て!」
アリアの瞳が揺れる。
怖い。
信じたら、また壊れるかもしれない。
でも。
春と結衣は、ちゃんと笑っていた。
傷つきながら。
怖がりながら。
それでも、手を離していない。
アリアは震える手を伸ばした。
その瞬間。
深淵王が怒号を響かせる。
──『許さぬ』
巨大な黒雷が、空から落ちる。
春が結衣を庇おうとする。
だが。
今度は違った。
アリアが、二人の前へ飛び出した。
『触れるなァァァ!!』
黒翼が広がる。
黒雷を弾き飛ばした。
全員が目を見開く。
アリア自身も驚いていた。
でも。
もう答えは出ていた。
守りたかった。
この暖かさを。
壊したくなかった。
深淵王の眼が歪む。
──『裏切るのか』
アリアは涙を流しながら叫ぶ。
『違う!!』
『私は、やっと……!!』
声が震える。
でも。
ちゃんと前を向いていた。
『一人じゃなくなりたかっただけ……!!』
その言葉が、夜空へ響いた。
結衣の目から涙がこぼれる。
春も胸が熱くなる。
アリアはずっと苦しかったんだ。
誰にも頼れず。
裏切られて。
孤独のまま、闇へ沈んでいった。
だから。
春は笑った。
「じゃあ、もう一人じゃない」
アリアの瞳が揺れる。
春は手を伸ばす。
「来い」
アリアは泣きながら、その手を掴んだ。
その瞬間。
巨大な光が、空を覆った。




